7.未知との遭遇 未知への興味
かなり間が空いてしまいましたorz
また頑張って進めていきたいと思いますので平にご容赦をorz
読んでくださっている方、ブックマークしてくださっている方、に感謝を。
少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
自軍本拠地の砦を出て森を抜け、少し進むと谷へ降りる道と、谷上の道との別れ道に差し掛かる。
谷上の道とは言っても、それは切り立った岩郡に、所々に点在する木々、それを超えれば木々生い茂る道無き道が続き、そこを抜けるとまた切り立った岩肌が顔を出すという、おおよそ道と呼べる物では無い。
そして現在、夜明けとほぼ同時に儂とユーリの二人は砦を出発し、この道無き道に足を踏み入れて暫く。
ようやく足場にも苦労をするような道を抜け、木々が生い茂る場所へと差し掛かっていた。
儂は後ろを振り返り、後に続くユーリを見る。
少し息は切れているが、さほど疲れは無さそうだ。
儂は近くに並んだ木を交互に蹴り、上へ上へと登り、中腹程度の場所にある枝で足を止めた。
儂の後に続いて木を登ったユーリも同じ枝で足を止め、儂の隣で一息をついた。
儂はそこから前を見る。
木々が生い茂る道なき道を。
木々が生い茂ると聞くと、それは単純に森のような場所を想像するだろう。
しかし、目の前に広がる光景はそんな単純な場所ではなかった。
まずその木々の密集度が異常だ。
今まで見てきた森を想像すると、当然木と木の間はある程度の間隔が必要になる。
しかし目の前の木々達にその間隔はほぼ無い。
木の上に登る為に使った二本の木は辛うじて隙間があった物を使えたが、その他の殆どが隙間なく木々が並び広がっている。
まるで下手糞な絵を書いた様な、それは最早木で出来た塊に等しい様だった。
どうも、異世界らしくなってきたと儂は心の中で新しい物を見た事による好奇心がふつふつと沸くのを感じた。
どういう物を養分にして育っているのか詳しくは解らないが、どうもここに生息する木々達に光はさほど重要ではないらしい。
まぁしかし、地面に隙間は無くとも、上に行く程細くなるのは通常通り。
ある程度上へ登れば枝から枝へ渡って移動するのは容易そうだ。
そして、スタート地点として選んだ枝から目前に広がる木々の塊の中へと足を踏み入れる。
暫く枝から枝へと飛び移って移動し、目的地とする場所が目前へと迫った時の事だった。
耳に違和感を覚えた儂は手を小さく上げて後ろに続くユーリへと静止の合図を送る。
耳に集中し、聞こえてくるのは……歌声?
急に静止の合図を送った儂に素直に従ったユーリであったが、その顔には疑問が浮かんでいる。
目に見える異常が無いのは明らかで、常人より数段は良いであろう儂の耳だけがその異常を察知している。
しかし、キョロキョロと辺りを伺うが、その異常の正体は全く掴めない。
半ば幻聴か、耳が疲れているのか、そのどちらかの線で自分を納得させようとしていた。
しかし、今だに響く小さな歌声が儂を呼んでいるような錯覚を振り払う事が出来ない。
そして儂は見た。
森の奥深くにユラユラと浮かぶ青い光を。
それは不規則にユラユラと木々の間をすり抜けている。
まるで踊っている様だった。
深い深い森に浮かぶ青い光は段々と増えていく。
儂はその光景から目を離せない。
冷や汗が背中を伝うのを感じた。
ジ○リの世界じゃあるまいし、これはいよいよ目も疲れているのか。
いまだ儂の後ろでキョロキョロと辺りを見回しているユーリをチラリと見る。
その視線に気づいたユーリに、儂が視線を送っていた方向へと無言で視線を促す。
その光景を見たユーリは唖然とした表情を浮かべている。
「アオイお姉ちゃん……、何……、あれ」
「儂にも解らん。物の怪の類か……?」
そう言葉を発した後、不意に一つの青い光がその動きを止めた。
その光に目を凝らすと、光の中に小さな人影がある事が解った。
次第に光は収まり、段々とはっきりするその姿。
白目の存在しない血を一滴落としたかの様な赤に染まる双眼。
一糸纏わぬ裸体は小人のように小さく、背中にはためくは二対の虫羽。
あまりおとぎ話やらに詳しくはないが、儂でも知っている。
あれは、妖精と呼ばれる類の物の怪ではないのか?
視線を送る儂に気付いた一匹の妖精は儂を指さす様なそぶりを見せ、周りを飛んでいた光も一斉にその動きを止めた。
そのすべての光に睨まれている様な感覚が儂を襲う。
ある程度の距離は離れている為、唯でさえその小さい体躯から、その顔色を窺う事は出来ないが、お互いに視線が合っている事は感覚で解る。
理解の及ばない出来事に震えるユーリを余所に、儂は何故か好奇心の様な物にその身を包まれていた。
その好奇心に後押しされ、手を伸ばし、声をかけようとした所で、不意にどこからともなく怒号のような叫び声が辺りに響いた。
数百、数千といった規模の声を凝縮し、ぶちまけたかの様な音が響いてくる。
その声に儂はハッと我に変えり、これから向かう予定である戦場がある方へと視線を送る。
「もう始まってしもうたか……」
「アオイお姉ちゃん!」
「解っておる」
急かすような声を上げるユーリに返事をした後、儂は今一度視線を外してしまった件の者達がいる方へと向き直る。
しかし、そこにはもう青い光に包まれた者達の姿は無かった。
キツネにでもつままれたような気分になりながら頭を振り、戦場の方角へと向き直ろうとしたとき、視線が儂を刺した。
殺気とも取れるその視線に、バッと振り返ると先ほどの最初に儂に気付いた個体がほど近い場所の宙でユラユラと浮かんでいた。
抑えられず漏れるのはニィッとした笑み。
儂の笑みにつられたのか、目の前の妖精も笑みを零す。
「フフフ……、アハハハハッ」
その見た目通りの可愛らく妖しい笑い声を残し、その小さな物の怪はまた森の奥へと飛び去って行く。
その光景をしばし笑みを浮かべたまま睨んでいた儂の袖を、ユーリが引く。
「アオイお姉ちゃん!!アオイお姉ちゃんってば!!」
「ん?おぉ、すまんすまん。年甲斐もなく心が躍ってしもうた……」
「年甲斐いもなくって……、アオイお姉ちゃんまだ成人の儀も終わってないよね……?」
「あ~……、そうじゃな、……まぁ気にするな!」
ユーリの突っ込みを受け流しつつ、人外の者、物の怪へと思いを馳せる。
あんなものが実際に存在するとは、受け入れがたい気持ちもあるにはあるが、実際に見てしまった以上、それは栓無き事。
否、そんな存在するしない等最早どうでもいい。
先祖様の武勇伝にそんな人外の者との戦があったか?
あろうはずがない。
心が湧き立つのが解る。
先祖様も体験していないような未知の戦。
戦いたい、手合わせしたい、死闘がしたい。
未だ見ぬ未知なる領域へ足を踏み入れた気分だ。
もし希望が通るならば、あのような小さい者ではなく、鬼とやらと手合わせしたい物だ。
「……ちゃんっ!アオイお姉ちゃんってば!!!」
「お、おぉ……すまん、暫し呆けておったか……」
「一体どうしたの?あんな化け物を見たっていうのにすごい嬉しそうに……」
暫しまだ見ぬ強敵へと思いを馳せていた所を、耳元に響くユーリの声で現実へと引き戻される。
「いや、なに……、あの者達と是非手合わせしたいと思うてな」
「……」
おや、ユーリの視線が儂を突き刺すぞ。
そんなうつけ者を見るような顔で儂を見るでない!
これは……さては反抗期じゃな?
「っと……、いかんいかん!クロハが待っておる!先を急ぐぞ、ユーリ!」
そして、ハッと我に返った儂は、目前へと迫る怒号飛び交う戦場へと駆け出すのだった。




