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転生異世界忍法帖。  作者: 熊田猫助
二章「戦乱と血塗れた夢」
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2.二年越しの戦火

「ついに、か」


「うむ、尻尾をつかんだ」


月明かりのみを明かりとした一室。

領主邸、クロハ自室にて、儂は椅子に腰掛け、クロハはベットに腰掛け、対面している。


「しかし、やはり時間が掛かり過ぎた感は否めぬな」


「……いや、事前に解っただけでも御の字だ。準備万端とは行かずとも、心の準備は出来る」


ポツリポツリと今の状況を語る儂らの声は、お互いに明るいとは、とても言えなかった。

現在の状況を簡単に説明させてもらうと、今現在、アイシアの街へと向けて、前領主、ビゼン・カミハラが兵を率いて侵攻中という状況だ。

先の挙兵騒動の裏で糸を引いていたという事が解ったと同時に、否、此方が事の真相をしるより前にカミハラは、姿を眩ませた。

儂が突き止めた内通者からの情報を始め、カミハラの行方を追うにあたって噂から噂へと渡り歩いた結果、先の騒動は先兵が先走り過ぎた為の失敗だった言う線が有力であった。


儂らが住むアイシアの街は、国境から遠く離れ、ヴェイリース皇国首都ヴェルリンの丁度真後ろに位置している。

後ろは長大な鉱山が聳え、東は深い森に覆われており、そこを抜ければその先には大中小さまざまな街や村がある。

そして西の森を抜けて更に進めば前世でいう所の海と言っていいほどの広大な川が流れている。

要するに、ヴェイリース皇国に置いて、最奥と言っていいほどの位置に我らのアイシアの街は位置していた。

勿論、東の最奥の街もあるが、そこは国境にほど近く、殆ど街や村としてではなく、砦として機能している現状であるらしいが、それはさておき。


相手の狙いはここまでくれば大凡の検討がついてしまうと言う物で、ここアイシアの街を万が一取られたとなると、下の国境を超えた先の敵国、アリス教国とアイシアの街に挟まれてしまう位置に首都ヴェルリンがあるという事は恐らくそういう事なのだろう。

ビゼン・カミハラ前領主の後ろには、十中八九、アリス教国がついている。

アリス教国の表立っての動きは勿論ない為、失敗したらそれまで、知らぬ存ぜぬを押し通すことの出来る一手である事は間違い無いだろうが、それが解らないカミハラでもあるまい。

それを飲み込んで尚、余りある程の報酬、見返りがあるのだろうか。

まぁ、両間でどのような折り合いがついているのかは知る由もないが。


「しかし、よくもまぁこれだけの兵を集めたものだ……」


「うむ、どうやら此方のへ進行途中の小さな村や、中規模程度の街等、そこかしこから兵が続々合流しておるらしい。今まで尻尾を掴ませる事なくここまで手を広げておるとは……」


「……このまま行けば、連隊クラスまで膨れるか?」


「そう、じゃのう。そのぐらいの線が妥当かの。恐らく三千から五千といった規模じゃろうか」


「……そのままの進路で行けば、奴等の進軍が一度止まるのはアイシアから一番近いウールの街、か。猶予は?」


「……一週間、といった所かの」


「ギリギリだな」


そう言ってクロハは顔を伏せ、暫し考えこむ。

儂が報告の為に領主邸へついて直後、クロハは即座に首都ヴェルリンへミナト殿を向かわせた。

目的は勿論、援軍要請の為だ。

儂が今現在報告を行っている内容を完結に纏めた書状をミナト殿には渡してある為、事態の把握はスムーズに行く筈である。


アイシアの街から首都ヴェルリンまでは、早馬で三日という距離だ。

直ぐに援軍を送ってくれるとして、連隊以上の規模の進軍となると、倍とは言わないまでも五日はかかるかもしれない。


「駐屯兵団を増やすよう進言していたが、結局通らなかったのが痛いな……」


「まぁ、仕方あるまいよ。幸い敵が攻めるにもアイシアは攻めやすい位置にあるとは言い難い。いざという時には儂が全力でお主を逃がして見せるさ」


「ふっ、そうだな、今回も頼りにしているぞ、アオイ」


そして、一週間がたち、予想通りに連隊規模、四千五百まで膨れたカミハラ率いる敵兵は、ウールの街を占拠し、対する儂らはアイシアの街の駐屯兵団に、自警団を含む約五百人という大隊程度の兵力をアイシアの東の森を抜けた所に位置する小さな砦に置いていた。


儂の希望的観測も含めての一週間という猶予はなんとか経過され、我がヴェイリース皇国の援軍部隊がようやく砦へと到着した。


援軍要請を首都ヴェルリンへと届け、直ぐ様とんぼ返りしたミナト殿と先日合流した時、到着予想と規模、そして、この戦の指揮を務める人物の報告を受けていた。

その報告を受けたクロハの顔があからさまに歪んだのを覚えている。


そして、現在、到着の出迎えをする儂とクロハとミナト殿の前に、白馬に乗った一人の男が地面へと足を降ろした。

貼り付けたような笑顔を浮かべる鼻梁の整ったその男性は、黒い鎧を身に纏い、腰には二本のショートソードを帯びている。

煌めく金色の長髪をかきあげ、儂らの直ぐ傍へと歩み寄った男は言った。


「久しぶりだね。可愛い末の妹よ」


「ご無沙汰しております。カオル兄様」


そして、男に対して儂とミナト殿が跪き、クロハは仰々しく頭を下げる。


これが、ヴェイリース皇国、皇位継承権第七位、カオル・アマナギ皇子、金色の戦鬼と呼ばれる男との初対面であった。



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