22.初陣のその後
ブックマークしてくださった方、読んでくださった方に感謝をorz
もうすぐ一章も終わり、新章へと入っていく予定で御座います。
拙く粗い文章ではございますが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
戦が終わって、アイシアの街へと戻り、ようやく休めるという頃には最早夜は明け、早朝とも言える時間になっていた。
儂は今日助けた子供達と共に一室をクロハの屋敷内に用意され、巨大と言っても過言ではないベットの二つの内の一つに腰を降ろし、もう一つのベットには三人の子供を寝かせ、儂の両膝を枕にカエデとツバキが陣取り、儂は休むに休めないと言った状況に陥っている。
儂はこの状況に、まぁ仕方がないかと天井を見上げつつ、今日の戦を思い返していた。
自分の動き等を目を瞑り、浮かべる。
まだまだ、修行が足りないの一言だ。
もっともっと精進せねばと考えた所で、不意に控えめなノックの音が部屋に響いた。
儂が入室を促し、部屋へそっと入ってきたのはクロハだった。
「まだ休んでいなかったのか」
「うむ、こんな状態なのでな。存外に懐かれてしもうた」
クロハの言葉に儂は両膝を枕にして寝息を立てている二人を指さして微笑む。
その様子を見てクロハも微笑ましそうに笑顔を浮かべた後、続けて少し困った様な顔を浮かべる。
不思議に思いどうかしたのかと尋ねると、クロハは部屋の椅子に腰掛けて口を開いた。
「なぁ、アオイはその子らをどうするつもりなんだ?」
「どう、とは……、うーむ、どうすればいいんじゃ?」
クロハの問いに対する答えは儂の中には無かった。
助けた物のどうすればいいのか、さっぱり検討もつかない。
問いを問いで返す儂に、クロハは案の定と言った様に溜息をつく。
「正直な所を話してもいいか?」
「なんじゃ?」
「私は、というか、私以外の誰が指揮を取ったとしてもそうしたと思うんだが、……もしアオイがいなければ私は恐らくその子らを見捨てていた」
「……」
そう告げるクロハに、儂は言葉を出す事なくクロハをジッと見据える。
暫くの沈黙の後、もう一度クロハは重い溜息を吐き、言葉を続ける。
「……勿論、保護はしただろうが、わざわざ兵を裂いて救出はしなかっただろうな。事後処理の一環に入る事柄だ」
「……受け入れ先が、無いのか?」
「無いとは言わない。我が国の孤児の受け入れは「教会」が担っている」
その言葉にほっと息を吐く儂に、それを見たクロハが続ける。
「この国に神はいないぞ、アオイ。隣国のアリス教国には信仰があり、国がそれを補助しているらしいが、我が国の「教会」は慈善事業じゃない。そこにいる孤児達は皇族やら貴族やらの奴隷予備軍だ。そこに安らぎは無いし、野盗にでも落ちぶれた方がまだマシといえる様な環境だ。人としての扱いなど無い。家畜と一緒だ」
「……随分詳しいのう」
「ん?……あぁ、ミナトが孤児で「教会」の出身だからな。……色々と、聞いた」
成る程と言い、しばし考えこむ儂をクロハは黙って見ている。
儂がどんな答えを出すのか、気になっている様だ。
「……儂が思うに」
「ん?」
「クロハは儂がおらんでも、この子らを助けたじゃろうな」
「……はっ、はははっ、買いかぶりすぎだ」
儂の言葉に吹き出したクロハと目があい、どちらからとも無くまた笑う。
暫し笑った所で、儂は考えを纏め、告げる。
「この子らは、儂が引き取る」
「……正気か?」
「正気を疑うとは酷いのう。……儂は至って正気じゃよ」
その言葉にクロハは頭を抱えている。
「こんな事がある度に引き取るつもりか?はっ、数年後には大家族だな」
「……そう悪態をついてくれるな。勿論そんなつもりは無い。偽善が無いとは言わん、情が移ってないとも言えん。しかしもう決めた。この子らは儂の子として育てる。……そしていずれ、儂の手足となって働いてもらう」
「……お前もまだ子供だろ」
「ふっ、そろそろ自立しようと思っておった。……それについ先日に正式に儂はお主の使用人として抱えられたじゃろう。まさか、給金が出んとは聞いておらぬぞ」
「馬鹿な、十分な額は払うさ……、今回の働きの褒賞金もそれなりには出すが……」
「なら問題ないじゃろう。……クロハ、友として見守ってくれ」
「……あぁ!もう!勝手にしろ!」
クロハはそう言って荒々しく椅子から立ち上がり、ドアの方へと歩いて行く。
儂はその後姿を黙って見送る。
ドアの手前まで歩いた所で急にクロハはピタリと立ち止まり、沈黙が流れる。
無言の儂に痺れを切らした様にバッと振り返ったクロハの顔は子供みたいにほっぺたを膨らませていた。
「頑固な奴め!解ったよ!困ったら私に言え……と、友達だしな。……その代わり、今まで以上に私の為に働いてもらうからな!!」
「あぁ、ありがとう、クロハ。……この子らにとって、これが幸せなのかどうか、……いや、恐らく幸せにはしてやれないじゃろうが……、まぁ、取り敢えずこの子らが目を覚ましたら意思を確認してみる。断られればそれまでの話しじゃしのう」
「……そうだな。……私なら二つ返事でアオイの子になるけどな」
「はははっ」
クロハの言に笑いが零れた所で、両膝で寝ていた筈の二人がムクリと体を起こした。
目をこする二人に、起こしてしまったかと謝ると、どうやら眠くて目を擦っているのではないらしいことが解った。
二人の目から、一つ、また一つと雫が落ちる。
儂は両隣で涙を流す二人の頭を撫でなながら聞いた。
「……何を泣く?話を聞いておったのか?」
「……うん。ごめんなさい」
謝りながら涙を拭うツバキ。
儂はなぜ泣いているのか解らず、戸惑うばかりであった。
困る儂に、鼻を啜りながらカエデが申し訳なさそうに口を開いた。
「すんっ……、ご、ごめんなさい。お、お母さんもお父さんもいなくて、これからどうなるのか、こ、怖くて……」
「少しずつでよい。落ち着いて話せ、の?」
そう言って儂は涙を手で拭ってやり、カエデを抱きしめてポンポンと背中を優しく叩く。
それを見ていたツバキも後ろから背中に抱きついてくる。
前に後ろから挟まれ、身動き取れなくなった儂が困り果ててクロハの方を見ると、クロハは肩をすくめて微笑んだ後、部屋を後にした。
助けてはくれぬのかと薄情な友達に内心悪態を付きつつ、暫しの間サンドイッチ状態で二人が落ち着くのを待った。
どれほど時がたったか定かではないが、ようやく落ち着いてきた二人に、儂はそのままの状態で口を開いた。
「……のう、二人共。先程のクロハと儂の話は聞いておったのじゃろう?」
儂の言葉に、背中と胸に顔を埋めたままコクリと頷く二人に儂は言葉を続ける。
「嫌なら嫌と断ってくれてもいいんじゃが、……儂の所に来ぬか?……以前と同じように生活は出来んじゃろう。苦労もするじゃろう。それでも良いなら……」
「……うん、お姉ちゃんと一緒にいたい」
「……私も、お姉ちゃんと一緒にいる」
「いずれ、儂の仕事を手伝ってもらう事になるぞ?それでも良いのか?」
「うん、お手伝いするよ」
「私もお手伝いする。あの子達も私達が面倒見るから」
そう言う二人に、どのような事を手伝わせるかを告げない儂は卑怯な人間だろうか。
今ここで口で説明したとして、理解が及ぶかどうかは定かではないが、ある程度は解る年頃ではあるだろう。
しかし、今ここで説明する事の必然性は無いと自分に言い聞かせる。
偽善が無いとは言わないし、情が移ってないとも言えないのが儂の今の心境だ。
儂は背中に抱きつくツバキに少し離れる様に促し、前に抱きついていたカエデも離す。
そして、今度は二人共を前に、きつく抱きしめた。
背中に回る二人の手にもぎゅぅと力がこもる。
「ならば、今日から儂らは家族じゃ。よろしく頼むぞ」
「「うん!」」
儂の言葉に二人の返事が重なった。
儂はこれから来たる戦に向け、この新しく出来た我が子らを、立派なシノビに育て上げてみせよう。




