表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生異世界忍法帖。  作者: 熊田猫助
一章「転生と幼少期」
22/48

21.真夜中の決闘

今のこの状況を完璧に理解しているのは、恐らくこの場に数人しかいないだろう。

ひょっとすると、儂とクロハの二人しかいないと言っても過言ではないかもしれない。


敵味方が周りを囲み、円状に開けた中心で儂とグダンの二人は対峙していた。

周りの者達も、儂とグダンも、一言も発する事無く暫しの時が流れる。

ジリジリと、ひたすらにゆっくりと流れる時間の中で、儂とグダンはお互いを見据え、少しずつ、少しずつ、距離を詰める。


儂が素手なのに対し、相手は長大なバトルアクス。

リーチの差は言うまでもなく、相手が先に動くのは必然だった。


グダンはその長大なバトルアクスを振り上げ、構えを取る儂へ向けて思い切り振り下ろした。

儂はある程度予測していた攻撃に、余裕を持って半身になり躱す。

このまま振り下ろされ、儂と言う目標が無くなれば地面へと深々とめり込む。

それほどの勢いと速さがある攻撃だった。

そこに隙が出来ると簡単に考えたが、それは甘い考えであった。


先を読み過ぎた儂は躱すと同時に距離を一気に詰め、グダンがバトルアクス振り下ろし切るよりも早く前に出た。

しかし、グダンは攻撃を躱された瞬間儂の腰の辺りまで振り下ろされたバトルアクスを力で無理矢理ピタリと止め、そのまま横へと薙ぎ払った。

儂はなんとかそれに反応し、薙ぎ払われた柄を掴んで、勢いに逆らう事無く横へと吹き飛ばされる。

儂の軽い体は難なく宙に浮き、バク宙よろしくクルリと勢いを殺して着地した。


「ほっ、危ない危ない。想像以上の手練れじゃな、大将殿よ」


「……なんだその身のこなし。てめぇ普通じゃねぇな……」


そう言ってグダンの口元がニヤリと歪む。

釣られて儂も笑みを零し、次はこちらの番と言わんばかりに一気に距離を詰めた。

葵流の足技の極意を使った加速は一気に儂をトップスピードへと誘い、バトルアクスを構える暇も無く懐まで飛び込まれたグダンはこの距離でバトルアクスを振るう事は叶わず、苦し紛れにその拳を儂へと繰り出した。

儂はそれを躱し、グダンの体を目掛けて右拳を繰り出した。

グダンの弟を屠った技。


葵流「衝葉」


籠手の金属と、相手の鎧の金属がぶつかる音が響く。

鎧通しの技としても使えるこの技は、生身に使う程の効果は望めないまでも鎧を着る敵に対してもある程度はダメージが通る。

筈であった。

一瞬の静寂の後、グダンはまたその拳を儂へと向けて繰り出していた。

予想外の事に反応が遅れ、両腕を前に出してその拳をガードするに留まり、そのまま距離を取る。

ジーンとした痺れを腕をプラプラと振って逃がしながら儂は口を開いた。


「なんじゃその鎧は……、大将殿……、よくそんな物を着て普通に動ける物じゃ。化け物じゃのう」


「ふん、こいつは俺専用の特別製よ……その重さ、その分厚さ、全てにおいて規格外。てめぇがどんな妙な技を使おうが、その攻撃が俺に届くことはねぇ」


足元を見ると、グダンのその両の足は少し地面にめり込んでいる。

馬鹿みたいな重さと分厚さを誇るその黄金鎧は、儂の鎧通しの技を通さなかった。

先程のグダンの言葉を思い返す。

どうやらグダンは自分の鎧に絶対の自信と誇りを持っているのだろう。

面白い。


儂はもう一度距離を詰めるべく地面を蹴った。

さすがに二度は通用せず、いち早く反応したグダンはそのバトルアクスを距離を詰める儂へ目掛けて振り下ろしていた。

タイミング、距離、全てが完璧であったグダンの攻撃は、今度は止まる事は無かった。

必ず当たる。

そう確信していた攻撃は、トップスピードから一転、急激に減速した儂に当たることは無く、振り下ろされるバトルアクスは儂の目と鼻の先をかすめて地面へと吸い込まれた。

生まれた隙を儂は見逃さない。


拳はしっかりとは握りこまず、親指と人差し指は閉じ、小指側から中に空洞が出来るように緩く。

そして小指側から空洞が出来た部分が相手に当たる様に、腕を振りかぶり、振り下ろす様に繰り出されたその攻撃は、グダンのその心臓の位置する場所へ。

細い衝撃は分厚い鎧を突き破り、その体へ、そして体さえも突き破り、その心臓へと至る。


葵流「衝華」



「あぁ?……かっ……かふっ……」


疑問を口にしたグダンの口元から赤い鮮血が飛び散った。

儂はゆっくりと踵を返し、その場を離れる。


「あ、ありえねぇ……、拳なんかが、俺の鎧を破れるわけが……」


その言葉を背中越しに聞く。

次の瞬間、少しの地鳴りを伴いその巨躯は地に落ちる。


ざわつきが大きくなる中、ゆっくりとクロハの元まで歩み寄った儂にクロハはご苦労と一言告げ、ゆっくりと前へと歩み出る。


「勝負あった!!未だ抵抗の意思ある者は名乗り出よ!!無ければ即刻武器を捨て、投降しろ!!」


よく通る声が真夜中の森に響く。

ざわつきが止み、次々とその手に持っていた武器が音を立てて地面へと投げ捨てられる。


こうして、儂とクロハの初陣と言うべき夜襲は幕を閉じたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ