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転生異世界忍法帖。  作者: 熊田猫助
一章「転生と幼少期」
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19.夜襲と救出2

「落ち着いたか?」


暫く泣き続けていた女の子がようやく泣き止んだのを確認した儂は背中をポンポンと二度叩き、尋ねる。

女の子は儂の言葉に、コクリと頷き、儂から離れた。

儂は女の子の頭を優しく撫でた後、儂の腰に一緒に抱きついていた三人の子供らにも離れる様に促した。

渋々と言った様子で離れた子供達の頭も撫でてやり、少し優しい気持ちになった事にイカンイカンと頭を振る。

今は戦時の真最中である事を忘れる所であった。


「よし、取り敢えずここから出るぞ。皆、儂について来るんじゃぞ」


儂の言葉に四人が頷いたのを確認し、儂は微笑む。

外は更に騒がしくなったようで、至る所で悲鳴やら怒号やらが飛び交っているようだった。

儂はゆっくりとテントの入り口から外の様子を伺い、周りに人がいないのを確認した後、外へと出る。

四人の子供達も恐る恐る儂に続いた。

儂達が侵入した東の入り口へと警戒しながら進み、入り口にある程度近づけば、その付近は早い段階で制圧を進めていた為に、敵に見つかる事なく到着する事が出来た。


東の入り口からキャンプ地を出て少し進んだ所で負傷した兵を集めている場所へと辿り着く。

負傷兵の救護の任についているのは、衛生兵上がりで副団長を務めるイリサワ殿の右腕、ヨシノ・マツイ殿だった。

儂は周りを見回してみる。

それ程大事に至っている状況では無いが、思ったより負傷兵が多い様に見受けられる。

ざっと見回しただけではあるが、一〇数名といった所だろう。

儂が少し進んだ所で、ヨシノ殿の姿を見つけ、傍へと歩み寄る。

どうやら負傷兵の手当てをしている様で、負傷兵の傍でしゃがみ込み、包帯を巻いている所だった。

ヨシノ殿は儂の姿に気づき、手早く応急処置を終えた後、立ち上がった。


「アオイちゃん、お疲れ様。どうやら、捕虜の救出は成功したみたいね」


そう言ってヨシノ殿は儂の後ろに隠れている四人の子供達を覗き込み、ニコリと微笑む。


「うむ、身体には大きな怪我が無くて何よりじゃった。……しかし、少しこの子に打ち身があるようなのじゃが、後でみてやってもらえるじゃろうか」


「えぇ、構わないわよ。ようやく一段落ついた所だから」


儂は後ろに隠れていた一番年上と思しき女の子を指してそう言うと、ヨシノ殿はニコリと女の子に微笑みかけ、後ろに隠れている女の子の頭を撫でた。


「よろしく頼む。それと、どうも負傷兵が多いようじゃが戦況はどのようになっておるのじゃろうか?」


儂がそう尋ねると、先程まで微笑んでいたヨシノ殿の顔が少し険しくなる。


「うーん、まぁ私達が優勢なのは間違いないけど、思ったより敵の抵抗が激しいみたいね。どーも敵方に数人手練れが紛れてるみたいよ」


「ほう……、手練れとな……」


「えぇ、ミナトさんや、うちの団長が何人かは討ったらしいけど……」


その言葉を聞いた儂は少し考える。

捕虜の救出が存外早く終わった為、後の事を聞いていない。

向こうの手助けに行くか、ここに残るか、二つに一つ。

数秒考えた結果、最早自分の中で殆ど出ていた様な答えだが、手助けに行くことにする。

クロハの事も心配だ。


「ヨシノ殿、この子らを頼めるじゃろうか。儂はキャンプ地に戻る」


「え、えぇ、それは構わないけど……」


儂の言葉に頷くヨシノ殿に、礼を言い、踵を返した所で服を掴まれる。

振り向くと、四人の子供達がそれぞれ儂の服を掴んでいた。

儂はポリポリと頭をかき、四人の前にしゃがんだ。


「儂は戻らねばならん。すまぬが、このお姉さんと一緒に待っておれ」


「……」


儂の言葉に下を向き、無言で返す子供達。

どうした物かと考えていると、女の子が一人、口を開いた。


「……わかった」


ギュッと自分の服の裾を掴み、小声でそう言う女の子の頭を撫でる。

女の子に続いて頷きながらまた了承の意を唱える三人の子供達の頭も両手を使って撫でてやる。


「……さすが、お姉ちゃんじゃな。お主、名は何というんじゃ?」


そう言えば聞いていなかったなと思い立ち、女の子の名を尋ねる。

女の子は儂の顔を見て言った。


「……ツバキ」


「ほう……、ツバキか……」


真っ赤で綺麗な髪をした女の子。

儂は前世の世界に咲くツバキの花を思い浮かべ、口元に笑みを零す。


「良い名じゃ」


「……お姉ちゃんは?」


「おお、そう言えば儂の名も言っておらなんだな。儂は、アオイじゃ」


「アオイ、お姉ちゃん……」


確かめる様に儂の名を呟く女の子の頭を優しく撫でてやる。


「ツバキよ、儂がいない間、この子らをまた守ってやってくれ。頼めるか?」


「……うん!」


コクリと頷き、ようやく笑顔を見せてくれたツバキに儂の顔も自然と綻んだ。

儂は今度は少し強く、クシャクシャと頭を撫でる。

ワワッと驚きの声を上げるツバキに、スマンスマンと謝りつつまた踵を返した。

目指すは戦場。


「では、行ってくる!良い子で待っておれ!」


そう告げた儂は、元来た森の中を戦場に向かって駆け出すのだった。




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