1.目が覚めて
少しずつ進めていきたいと思います。
不定期になるかもですが、生暖かい目で見守って下されば幸いですorz
ゆっくりと目を開ける。
はっきりとしない頭で辺りを見渡すと、そこは見覚えがないのに見覚えがある木造の部屋。
あぁ、ここは自分の部屋で今自分のベットで寝ていたのかと考えるが、同時にそんな馬鹿なと言う思いも募る。
儂が寝ていた部屋とは似ても似つかない。
畳に敷布団。
これが儂の寝床であったはずだ。
しかし、今横になっているのは、木造のベットに真っ白なシーツとはこれいかに。
ゆっくりと体を起こし、板張りの床へと足を降ろした。
ひんやりとした感触が心地いい。
床というのも悪くはないではないか、とどうでもいい事を考える。
ベットの脇に置いてあった水の溜められた木桶を覗き込む。
そこには見覚えのない顔がユラユラと浮かぶ。
頬をつねってみる。
痛いのは言うまでもない。
鏡写しに頬を摘むその姿は、頭に包帯を巻かれた長い黒髪の少女だった。
一体何が起こっているのか理解が及ばないが、どうやら儂は今、少女の姿でここにいる。
小さく息を吐き、溜められた水で顔を洗う。
そしてゆっくりと部屋の窓へと歩を進めた。
外を見ると庭には大きな木が一本。
木で作られた柵の向こうは、緑豊かな土地と畑が広がっている。
所々に見受けられるのは木造建築や、石造りと思しき家屋。
見たこともない景色だったが、見覚えがある。
デジャヴともまた違う奇妙な感覚にも少し慣れてきた。
顔を洗ったことで少し落ち着き、自分の事を考える。
今ココで生きている自分の事。
アオイ・ハヤセという名前でもうすぐ5つになる。
ココに来る前、息を引き取ったはずの自分の事。
歳は87であったか、葵流と言う忍者の家系に生まれ落ち、平和に過ごした人生。
その両方の記憶が見事に自分の中で同居している事に気づく。
空白であるはずが空白ではない、アオイ・ハヤセとして過ごした5年間。
ゆっくりと包帯を巻いた頭を擦る。
未だに触ると鈍い痛みが走る。
頭を酷く打ち付けたらしい事が解る。
今の現状で考えうる事は、どうやら儂はこの少女として生まれ変わったという事か。
そして、覚えている筈のない前世での記憶が、頭をしこたま打ち付けた事により蘇った。
その考えに至るが、そんな馬鹿なと笑いが零れる。
しかし、考えても答えは出そうにない。
ゆっくりと深呼吸をした後、大きく伸びをする。
「まぁ、よいか!生まれたのならば、またワシとして生きるのみよ!」
幼い少女の声に、耳に違和感を覚えながら、儂は取り敢えず、笑い飛ばす事にした。