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転生異世界忍法帖。  作者: 熊田猫助
一章「転生と幼少期」
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17.報告

夜の森を疾走し、街中を疾走し、ようやくクロハの居る領主の屋敷につく。

人を背負っている事と、途中、少しカエデが取り乱し、暴れた事が原因で、結局行きと比べて倍近くの時間を要してしまった事に少し焦りを感じながら屋敷のドアを開けると、すぐそこにはミナト殿の姿があった。

ひょっとしてずっと待っていたのかと思い聞いてみる。


「いえいえ、まさかまさかですよ。アオイ殿を差し置いて申し訳ないのですが休ませて頂いておりました。しかし、そろそろアオイ殿がお帰りになる頃だろうと思いましてね、お待ちしておりました。後ろの方をお預かりしましょう」


「……すまぬ。よろしく頼む」


ミナト殿の言が本当かどうかは解らないが、有能である事は間違いなかった。

ありがたい。

儂は眠りについているカエデを起こさない様にそっと背中から降ろし、ミナト殿に預けた。

そして、クロハの待つ部屋へと向かう。

クロハの部屋に入ると、どうやらクロハも起きていた様で、椅子に腰掛け、部屋にある大きな窓から月を眺めていた。

儂が部屋の中へと歩を進めると、クロハは儂のほうを見る。


「まずは、すまん」


「大丈夫だ。気にするな」


儂の謝罪をいともたやすく許すクロハに、儂はポリポリと頭を掻く。

罰の悪そうに口ごもる儂に、クロハは微笑む。


「お前のやる事だけは私は全部認めるさ。私の私兵ではあるが、私とアオイは友達だろう」


「……友人ではあるが、あまり儂を信用しすぎるな。儂はお主が思うよりどうしようもない奴じゃぞ。何を謝っているかぐらい聞け」


クロハの言葉に半分呆れながらも、口は笑っているのを自覚する。

未だ全てを見透かした様に微笑むクロハに、儂は小さく溜息をつき、言葉を続ける。


「取り敢えず報告じゃ。まず敵のキャンプ地は正確に解った。事前の情報通り、南東の森の中、岩山が連なる場所の近くじゃ」


「ふむ、成る程」


「規模は、恐らく中隊と言った所じゃろう」


儂のその言葉に暫し考えた後、クロハは口を開いた。


「中隊か……、それは確かか?」


「うむ、キャンプ地のテントの数等からして恐らく間違いない。別働隊がいないとも限らぬが……」


「ふむ、中隊となると、案外多いな……」


「うむ……、それで、どのような者が居るかある程度見てきたのじゃが……」


「ほう、で、どうだった?精錬されていたか?それとも、噂通りのならず者の集まりか?」


「間違いなく、後者のほうじゃろう。どこぞの国の兵とはとても思えん」


儂の言葉に少し笑みを零す。


「……大凡は思った通りか。助かった、偵察ご苦労。……それで、何を謝る事がある?」


「うむ……、いや、実はな……、奴等の幹部を一人、殺した。奴等が襲った村から攫った子供がおってな……、男に襲われそうになった所を堪らず助けてしもうたのじゃ。偵察としては軽率な行動じゃったかもしれんが、見捨てる事はどうにも……。人目につかぬ所に隠しはしたが、朝になれば時間の問題じゃ……」


儂の言葉を黙って聞いていたクロハだったが、空に浮かぶ月を見た後、急に何かを思いついたようにポンと手を叩いた。


「うん、よし。あー、アオイよ。子供を助けたんだ、誇りこそすれ、謝る事などないさ。幹部を殺したのならそれは手柄だ、気にするな。それよりも、もう一仕事頼みたいんだが……」


「む?別に構わぬが、何じゃ?」


儂の言葉に、クロハは屈託のない笑顔を浮かべながらこう言った。


「バレる前に片付ければいいのさ。今から、夜襲だ!」


「……何じゃと?」


「ミナト!!ミナトは居るか!!」


呆気に取られる儂を余所に、椅子から立ち上がったクロハは部屋のドアを開け放ち、ミナト殿を呼ぶ。

数秒と待たずに、既に、元からそこに居たかのようにミナト殿が姿を現した。


「ここに。何用でしょうか?クロハ様」


「うむ、兵を直ぐに集めてくれ。非番の者を起こして集めている間は無い。集まるだけでいい」


「解りました。お任せを」


ミナト殿は疑問の言葉も無く了解し、その場を後にした。

まさかこうなるとは思いもしなかったが、我が主ながら中々面白い。


「して、儂は何をすればよいのじゃ?我が主よ」


「ふふふ……、アオイは道案内を頼む。あーそれと、その場に到着したら別行動だ。アオイは村の攫われた者達を助けろ。その子供だけが攫われていたとは到底思えん」


「うむ、了解した……。実は、他に攫われた者が居る事は知っておる。助けた子供が帰りの道中で、残してきた者が居るからやはり戻ると聞かなくてな……」


「……助けたとしても、それがその子らの幸せとは限らんがな……」


「……それはどういう意味じゃ?」


「いや、何でもない。……急いで準備だ。時間との勝負だからな」


「うむ」


そして、夜襲を行うべく、儂らは準備に取り掛かるのだった。

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