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転生異世界忍法帖。  作者: 熊田猫助
一章「転生と幼少期」
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15.初仕事

暗闇が支配する夜。

アイシアの街の南東に位置する森の中、儂は木の上を枝から枝へ飛ぶように移動していた。

夜の風が露出した部分に冷たく吹き付ける。

露出した部分と言っても、クロハに頼んで特注で作ってもらった紺色の服、忍び装束に限りなく近い物を見に纏い、同じ色の布を顔にも巻いて目と鼻の上ぐらいしか露出した部分がない状態ではあるが。


初めてこれが完成し試着した時は年甲斐もなく少し心が踊った。

俗に言う忍者っぽい衣装と言うやつだ。

ミナト殿には存外好評だったのだが、クロハやユウキには変な格好だと不評であったのが少し心外であった。


閑話休題。


夜の闇が支配する中、忍び装束様様で闇に溶け込みながら木の上を移動する。

闇に紛れるならば黒の方がいいのではと言われたが、それは間違いだ。

夜に黒は像が浮いて見える為に適さない。

柿色か、もしくは紺色のほうが好ましい。


暫く進んだ所で目的としていた場所が目につく。

まだ少し遠いが、この暗い森の中にあれほど火を炊けばある程度遠くからでも目につくという物だ。

どうやら件のキャンプ地とされている場所を見つけたらしい。

儂はその場所が見える木の枝の上で一度止まる。


前世での87年と、この地でアオイとして生きてきた7年を足し、人生を思い返してみる。

87歳で一度人生を終え、5歳の少女として新しい人生を生きて早7年。

これが儂の忍者人生、初仕事である事は間違いなかった。

心が踊る。

儂は逸る気持ちを抑え、深呼吸した後、手持ちの装備を確認する。

まずは、ユウキがつい先日完成させた儂専用、特注の籠手。

素手での戦いを主とする儂には絶対に必要な物であった。

手の甲、腕とにわけて鉄板を丈夫な布地に縫い込んだ物で、布地、鉄板は其々紺色で染めて統一してある。

昔の日本鎧の籠手を想像して貰えば解りやすいだろう。

この世界での鎧は西洋鎧に似た物が主流であり、籠手と言えばミトンの様な物がほとんどだった。

あれは儂には扱いにくい。

手の甲まではいいが、指は自由に動かなければ困る。

儂は籠手を付けた両腕の駆動部をゆっくりと動かし、動きに阻害が無いかを確認する。

問題ない。

ユウキの仕事に感謝しつつ、次に、昔ユウキに作ってもらった棒手裏剣が計6本。

その他、自作の目潰し等、細々とした物を確認し、問題が無いことを確認した後、もう一度深呼吸する。

さて、行くかと心の中で唱え、更に近づくべく、移動を開始するのだった。


少し時は遡り、今日の午後。

儂はクロハに呼び出され、アイシア領主の屋敷に訪れていた。


着いて早々ミナト殿に連れられてクロハの部屋へと通され、部屋にある椅子へと腰掛けた。


「その雰囲気からすると、遊びの誘いでは無さそうじゃの」


儂が着いてから終始考えこむ様に目を瞑って黙ったままのクロハに、儂が声をかける。


「あぁ、急に呼び出してすまない。実はアオイに頼みたい仕事がある」


「ほう、どんな仕事じゃ?」


「アオイ、お前と初めて会った時の事を覚えているか?」


「む?……覚えておるが、それがどうかしたのか?」


「あの時の一件以来、表立ってではないが、裏で動いていた連中を知っているだろう?」


「あぁ、なんとかの右腕だか、左腕だかじゃったか?宗教団体という話じゃったかのう」


「あぁ……、天の右腕という宗教団体だ。奴らが、挙兵を目論んでいるという情報が入った」


「……ほう、挙兵とな……」


クロハの言葉に儂は少し考えるように天を仰ぎ、クロハは話を続ける。


「小規模な宗教団体であった奴らだが、年々少しずつ教徒を増やし、アイシアの街に住む住民も少人数ではあるが教徒がいる」


「ほう、して、儂の仕事は何じゃ?」


「……偵察だ。奴らの中には野盗や傭兵の連中も参加しているとの事だが規模が如何せんはっきりしない。……アイシアより南東の方角に位置する村が野盗に襲われたという情報がある。地図にも乗らない小さな村ではあるが……」


「ふむ、それで奴らはここアイシアの街の近くにおるのか?」


「昨日南東の森に入っていたアイシアの街人の情報だが、知らない男を見たと」


「成る程……、解った。奴らの規模と、キャンプの位置を調べてくれば良いのじゃな。……しかし、よく儂に仕事が回ってきたのう。アイシアの街にも駐屯する兵団が居るじゃろう」


「あぁ、昨日街の有力者を集めての会議があったのだが、無理を言って私がこの仕事を引き受けさせてもらった。私もそろそろ少しずつ動き出さないとな……」


「……良かろう。その仕事、儂が引き受けた」


「あぁ、それと……、少し気になる事がある」


「ほう、なんじゃ?」


少し神妙な面持ちでそう告げるクロハに儂は首を傾げる。


「アイシアの前領主の事だがアオイは知っているか?」


「いや、直接は会ったことが無いのう」


「……これは私のカンと言ってもいい程の事だが、彼がこの件に関与していると私は見ている」


「……ふむ、根拠はあるのか?」


「根拠、という程でもないが、昨日の会議の折、えらく天の右腕の肩を持っていたように思う。いや、私がそう感じただけかもしれないが……、まぁそこまで気に留める必要は無いかもしれん。頭の隅にでも置いておいてくれ」


「……了解じゃ。彼に繋がる様な物にも気を留めておこう」


「頼んだぞ。アオイ」


頼むと言うクロハの言葉に対し、儂は微笑みをその答えとして返し、クロハの部屋を後にした。


そして、冒頭へと戻り、儂は偵察という仕事を開始するのだった。

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