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転生異世界忍法帖。  作者: 熊田猫助
一章「転生と幼少期」
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13.三人の夢

夜の暗闇が支配する道を、三つの影が並んで歩いている。

儂が少し前を歩き、後をクロハとユウキの二人が歩いている形だ。


この時間ともなれば辺りは暗く、民家同士も離れている為に民家から漏れ出る明かりも期待は出来ない。

そこで役立つのが、儂が設計図を書き、その通りにユウキが作り上げた龕灯(がんどう)と呼ばれる儂が手に持つ道具だ。


足元を照らす明かりと、儂が手に持つ筒状の木で出来た龕灯を交互に見たクロハが、不思議そうに首を傾げる。


「それにしても、すごいなこれは。どういう仕組みなんだ?そろそろ教えてくれてもいいだろう」


「うーむ、まぁ儂は最初から勿体ぶるつもりはなかったのじゃが、儂との秘密じゃとコヤツが聞かなかったのでな……。どこぞの狸型ロボットじゃあるまいし、秘密道具などと、そんな大それた物ではない。簡単な仕組みじゃ」


「たぬ?ロボ?何?」


「あぁ、いや、何でもない。仕組みじゃったな」


「しょうがないなぁ。じゃぁ僕とアオイとクロハの秘密だね!」


「ふっ、原理は簡単じゃ。この筒の中にロウソクが入っておるのはもう解っておるじゃろう。それを内側にある二本の鉄輪に固定しておる。この二本の鉄の輪が仕組みの肝じゃ」


「ほぅ……」


「二本の鉄輪は中で自由に回転するように出来ておる。故に、この様に、こう、どちらに向けてもロウソクは常に垂直、上を向いておるから火が消える事はない。と、言う訳じゃ。簡単じゃろう」


そう言いつつ、あらゆる方向へと龕灯を振り回して見せる儂に、クロハは終始関心した様子で眺めている。


「僕は苦労したけど……」


「ははっ、そうじゃったな。すまんすまん。全く、ユウキは器用な奴よ」


ユウキのポツリとした呟きに謝りつつ、また龕灯に照らされた道をゆっくりと三人で歩き出す。

暫く当り障りのない話をしていた所で、クロハが急に黙りこくる。

不思議に思った儂が、どうかしたか尋ねると、クロハは少し考えこみ、口を開いた。


「なぁ、アオイとユウキには夢はあるか?」


「夢か……」


クロハの言葉に儂が少し思案していると、ユウキが隣で元気に手を上げて答える。


「はいはい!僕はあるよ!僕はねー、父ちゃんを超える鍛冶屋になる事!そんでアオイちゃんの武器を作る事!」


「ははっ、そうか。精進するんじゃぞユウキよ。楽しみにしておるぞ」


「うん!」


ニコヤカに笑うユウキ。

それを見て儂も笑っていると、クロハが儂に詰め寄って来た。


「アオイは、アオイはあるのか?お前は何を、どんな夢を追っているんだ?」


えらく必死なクロハに、儂は少したじろぐ。


「わ、儂か。儂の夢か……、そうじゃな」


「なんだ?!」


「そう急かすな。そうじゃな、儂の夢は、いや、願望、欲望にも似た思いではあるが、儂はいつの日か、儂の持てる力全てを、余す所無く振るえる日を願っておる」


「それが、アオイの夢なのか?」


「うむ、まぁ平たく言えばそんな所かのう」


儂がそう告げると、クロハは考えこむように腕を組む。

そんなクロハに今度は儂が聞く。


「どうしたのじゃ、急に。クロハよ、お主にも夢があるのか?」


「あぁ、私にも夢がある」


「ほう、聞かせてくれるか?」


「私は、いずれこの国の皇帝になる」


「……えらく、大きく出たのう」


「無謀だと、馬鹿な夢だと、笑うか?」


「それが、お主が望む道で、それが夢なのじゃろう?」


「あぁ、それが私の夢だ」


「なら、笑わぬさ」


「……私の皇位継承権は第一三位だ。その現状から言うと、私が生きている内に皇位が回ってくる可能性はゼロに等しい。しかしゼロじゃない。私はいずれ皇都に戻り、そして戦に出る。他の者が及びもしない武功を立てて皇位を押し上げる。それしか道は無い」


「険しいのう。少女が夢見るには、些か血に濡れておる夢よ」


「そう、だな。私は酷く血塗られた夢を見ているんだろう。それでも、私は……」


クロハは何かを思い出す様に苦悶の表情を浮かべ、天を見上げる。

恐らく、少女にここまで言わせる程の何かがあったのだろう。


「夢を追う為に……私には、信用に足る私兵がいる。アオイ、私はお前が欲しい」


「ほう……、儂が欲しいか」


「あぁ、欲しい」


「ははっ、えらく男前な勧誘じゃな」


儂が欲しいと強く言い放つクロハに、その直球な物言いに笑いが零れる。


「恐らくこれから先の人生で、私がここまで求めるのはアオイだけだ。……力を振るうのがアオイの望みなんだろう?なら私の傍で力を振るってくれ」


「そうじゃのう……、確かに力を振るうが儂の望みではあるが、唯力を振るえればいいという物でもない。クロハよ、お主に大義はあるのか?」


「大義……。ある……しかし、今は言いたくない……」


「ほう……。まぁ、いい。……そうじゃな、その時が来れば、クロハよ、お主に力を貸そう」


「ほんとうか!?」


「うむ」


「ありがとう!!アオイ!」


お礼を言いながら儂に抱きついてくるクロハを、龕灯を落とさぬ様に受け止める。

そして何故か背中から抱きついているユウキを見やる。


「なぜお主まで抱きついておるんじゃ……?」


「仲間外れはイヤダ……」


「馬鹿を申すな……、儂が力を振るうにはお主の作る武器が必要じゃ。クロハに儂が必要であるなら、儂にはユウキ、お主が必要じゃ。拗ねるな」


「うん……」


「なんだとっ!?アオイには私は必要ないのかっ!!?」


「そうは言っておらん!あー全くっ、面倒くさい奴らじゃのう!!」


儂は面倒くさいと言いながらも、顔は笑っているのを自覚するのだった。


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