11.二人
処刑が終わり、帰路につこうとした所で呼び止められた儂は、少女と街を歩いていた。
「こんなに早くまた会えるとは思わなかったぞ」
そう言って前を歩く少女は儂の方へと振り返り、笑顔を向けてくる。
どうもえらく気に入られた事に少し戸惑い、儂は生返事をする。
そんな儂をじっと見つめる少女は、ずっと後ろ向きに歩いているのにも関わらず躓きもしなければ、道行く人にぶつかることも無い。
道に石ころが落ちていればそれを見もせずに跨ぐ様に避け、前から人が来ても意に介さず、後ろに目がついているかのように、前を向いて歩いているのと変わらない程器用に避ける。
自分がどこへ向かうのか、どうやってそこへ向かえばいいのか、そこに何が待ち受けているか、その全てを確信しているかのように歩く。
そんな事は勿論儂の唯の錯覚であろうが。
そんな少女を黙ったまま不思議そうに見る儂に少女は少し小首を傾げたかと思うと、道の交差点に入る直前で急に立ち止まった。
どうかしたのか聞こうとした所を、少女に手を上げて静止されるとほぼ同時に、どこかから馬の嘶きが聞こえてくる。
そしてダカダカという音が幾重にも重なって石畳の道に響き、それは少しの地鳴りを伴ってこちらへと近づいてくる。
そして誰かが叫んだ。
「誰か!誰か止めてくれー!!!」
次の瞬間には交差点を数頭の馬が群れを成し、凄い勢いで走り抜けていく。
儂はその様をポカンと眺めるしかなかった。
見ると少女は煩いと言わんばかりに両手で耳を塞いでいる。
そして群れが交差点を走り抜けた後、暫く遅れて一人の男が慌てて馬の群れを追いかけていった。
少女はこれに気づいたから止まったのだろうか。
未だ呆けている儂を余所に、少女は服についた誇りを払い、儂のほうを見て言う。
「すごい音だったな。全く……、そういえば、名を言っていなかったな。私はクロハ。クロハ・アマツキと言う。良かったらお前の名も教えてくれるか?」
「ん、あぁ、儂は、アオイじゃ。アオイ・ハヤセ」
「アオイ……、アオイか。私の事はクロハと呼んでくれ、私もお前をアオイと呼ぶ。いいだろ?」
「あぁ、別に構わんぞ。お主と儂では、そうそう会う事も無いだろうが……」
ポツリと呟く儂に、クロハは雷に撃たれたかのような顔を浮かべ、涙目になりながら儂に詰め寄ってくる。
「寂しい事を言うなっ!!友達になろうと言ってるのに!!」
必死の形相で詰め寄るクロハに儂はたじろぎ、目をシロクロさせる。
先程までのクロハを見ていると、少しの事では動じないような雰囲気だった為に驚きを隠せない。
唇を尖らさせ、未だ涙目のクロハを見ていると、歳相応の子供だという事を再認識させられる。
次の瞬間、儂は吹き出していた。
「ぷっ……、はははっ。不思議な奴じゃな、お主は。そうだな、儂も、クロハと友人になりたくなった」
「ぷはっ……、つばが飛んできたぞ!アオイ!」
「おぉ、すまんすまん」
そして、二人は顔を見合わせ、笑い合う。
この世界で気が付き、もうすぐ2年。
新しい友人が出来た事を単純に喜ぶ儂であった。




