プロローグ
目の前に立ちはだかる冷蔵庫。俺はそいつをぶっ壊すべく、喪失の異能を纏った剣で下の冷凍室の辺りをぶった切る。しかし、奴はこの程度じゃ壊れない。
奴は下の扉が半壊した状態で逃げようと後退する。だが、残念。そっちには俺のパートナーがいるのだ。
「可望! そっちに冷蔵庫が行ったぞ!」
「了解! 任せて!」
物陰から姿を現した可望が、虚空に向かって手を広げた。
「いっけー! かのんバツーカー!」
可望が手を広げた先から、彼女の能力、創造で作り出した巨大な爆弾を奴に向かって落とした。
「馬鹿っ! デカすぎるんだよ! 麗華!」
このままだと俺達全員巻き込まれかねない。だから俺はもう一人のチームメートに命運を任せた。俺は出来るだけ麗華達の近くに行けるように走る。
「分かってるわよ! 第三級結界発動!」
そして、三人が揃ったとき、薄い膜状の不思議物質が俺達を囲う。途端に周りが何も感じ取れなくなるほどの爆音と光。俺は目と耳を塞いでそれが無くなるのを待った。
「終わったか?」
目を少し開けて終わった事を確認すると、可望の頭にチョップをかました。
「あぅ、あれは不可抗力なんだよぅ」
涙目になって頭を抑える可望に少しだけ呆れた。
「何が不可抗力よ。あんなの造っちゃって。後から学長達から何て言われるか分かったものじゃないわ」
両手を揺らして呆れたポーズを取る麗華。全くもって同意見だ。
「ったく、どうすんだよ、これ」
俺は周りの惨状を見てそう呟くしか出来なかった。
「はぁ、もうなんだかなぁ」
麗華に叱られてショボンとなっている幼馴染を見て、今日も生きてる事に歓喜する。
もう、このチームでいるのも三年目か。
何故こんなふうになってしまったんだろう。
いや、全てはあの空飛ぶ掃除機から始まったんだ。