2・勇者
2・勇者
あたしは人間たちにかけよった。
床の上にしかれた布の上に(天涯つきベッドのふとんとシーツっぽい)二人の女性が寝かされていて、隣にそれぞれ男性が座り手をにぎっている。
服装からいって、組み合わせは『僧侶』+『勇者』(こっちが女性)『戦士』+『魔法使い』(女性)っぽい。
はっきりいって、男どもは戦力外。何の役にもたたないというか、たっていない。手をにぎってなんになる。
根性でどうにかなるような、簡単な事態じゃないんだよ!と、いうか計画もたてなかったのか!(家族計画……)
☆☆☆
あたしだって(長年生きてきた)女、なのだから知識は…ある。
が、しかし。伊達に生きてきてしまった、だけでもある。
あたしは(基本的に)役にたたない。(こういう時でも、普段でも)たてない。出産なんて未知のことすぎる。
ただでさえ普段から何にも出来ないし、しても中途半端すぎる!無力なあたし故に、皆沢山の特注魔道具を渡してくれていた。
いくら困っても迷子ぐらいで使うのはどうかと思っていたけど、コレはどうにもならない。
あたしは躊躇なくソレを使った。ソレは手のひらに乗るぐらいの大きさの石で、地に叩きつけると『四天王』の誰かが、直ぐに来てくれる便利グッズだ。
だが今回は来てくれる人物を『北の』以外(『西の』もはずしたい所だけど、能力的には適任では…あるような……)にさせてもらった。
はたして来てくれたのは『南の』だった。『南の』は女性で、露出の激しすぎる衣装を好むけど、『四天王』の中でも(言い替えるなら『魔王城』の中では)常識がある。おまけに既婚者だから(現在進行形で)こういう事態に、役にたってくれると……信じたい。
祈る気分ですがりつく寸前のあたし(正に気分はの○太である)に、呼び出された『南の』は開口一番言った。
「何したの?迷子?珍しくもないでしょ。それとも『宰相サマ』に叱られるのを庇ってほしいの?」
そんな理由で呼んだ事ないのにと言いたい所だけど(呼んだ所で庇ってくれないし、そもそもいつも『東の』が翔んでくるから意味がない。今日は『魔王』の間に缶詰だから来れなかったんだろう)状況が許さない。
あたしは『南の』の袖を引き、注意をひきつけ『それ』を指した。『南の』は『それ』を見て、一瞬ぽかんとした。
そしてあたしを、まじまじと見つめた。
「斬新ねぇー。アレ『勇者』でしょ?それも『召喚勇者』よね?」