私と友前くん
他のが煮詰まって出てきたお話。
おかしいところがあっても、スルーして、生暖かくしゃーないなという目で見てあげてください。
呼び出された。学校で一番男前と名高い男、友前彬に。確かにきれいな顔をしているとは思う。けれど、私こと、山本奈美子は正直興味ない。私のタイプはメガネがよく似合う、線の細い人。眼鏡かけてなかったら、男前であってもも興味ない。友達からは、好みが偏りすぎと言われてるけど仕方ないし。
そんな友前に呼び出された時、最初に思ったのは、何か気に障るようなことをしただろうかということである。告白だなんて思えない。だって、普通に考えてありえないし。一応、ジャ○プ腹にしこんでおこう。今日が月曜日でよかった。
呼びだれたところにすでに、友前くんはいた。周りには誰もいない。それがまた怖い。
「山本、俺と付き合って」
普通に考えた結果ありえないのに、ありえちゃったよ。
けど、なぜ命令口調。出直してこい。言えないけど。
そして、断わりたい、でも断わったら後が怖い。でも、了承しても、周りが怖い。なにこれ、詰んでんじゃん。
「勘違いしてるようだが、ただの虫除けだ」
虫除け??
ああ、あれですか、女の子避けですか、お前、ひどいな。
そんな割に合わないことなんてしたくないんですけど。
「ふっ、こっちはお前の弱点まで調査済みだ」
迷っている私に気づいたのか、そう言ってから懐から取り出したのは、眼鏡。すちゃっと装着する。どこでばれた?
もし、学年全体に出回っている周知のことだったら、羞恥で死ねる。死なないけども、それくらいってこと。
それにしても、人を馬鹿にしないでほしい。いくら眼鏡好きだからって、眼鏡ぐらいでわたしか揺らぐとでも思ったか。
と思っていたけど、思った以上に、眼鏡が似合う。どうしよう。一気に好みになってしまった。けど、線の細いという部分が好みと外れるので大丈夫、まだいける。
「確かに私は眼鏡が好きだけど、眼鏡だけで動く女だと思っているんなら、考えが甘いわー」
「俺を凝視しながら言われてもまったく説得力がないな」
どうした、私。私の好みは眼鏡をかけた線の細い人間だろう。こんな細マッチョには興味がなかったはずだ、目を覚ませ。顔よ、赤くなるな。この魔性の姿から目を離せ。
私が血迷うくらいには、イケメンの眼鏡姿は強力であった。眼鏡が恐ろしいくらい似合う。今まで見た中でも、三本の指に入るくらいには、私の心にヒットした。
「付き合っている間は、俺はずっと眼鏡をかけ続けてやるけど」
くっ、追い打ちか。私、よく考えろ。眼鏡イケメンが見放題なのはいいが、デメリットが大きすぎるだろ。たとえば、取り巻きの派手な女の子たち、どこに行っても目立ちそう、不相応だと噂されそう。よし、冷静になった。
「いいよ」
あれ?今私なんて言った?全然冷静になってない。
「うそうそ、間違えた。無理無理絶対無理」
「いいって言っただろう?よし、言質はとった。付き合うんだから、できるだけ一緒にいろよ」
「ちょ、ちょっと待って。無理だから」
「知るか」
「落ち着いて考えてみなよ。私がいたところで、女の子除けになるわけないじゃん」
こちらをは?という顔で見てくる。
「何言ってんだ?お前にそんなことを期待するわけないだろう」
くっそ、むかつく。鼻で嗤いやがった。それが、一応私は認めてないけど、強引に彼女にした人間にすることか。
「でも、女の子除けって言ったでしょ」
「お前、ひどい奴だな。自分の級友たちを虫扱いするとか」
その言葉はどこかからかうような響きを含んでいる。じゃあ、何が虫なんだろうか。
「じゃあ、何なのよ。虫って何?」
「虫っていうのは・・・。ちっ、なんでもない。気にすんな」
「じゃあ、いいよ。けど、付き合うのは、無理だから」
何やら事情があるみたいだが、私には関係ないし?わけもわからず、追従するほど愚かではないのだよ。
「わかったよ。その、あれだ。ぜってー信じないと思うけど、霊だよ。なぜかお前のそばにいると、霊障が収まるんだよ」
なんだそれ?と首をかしげると、ため息をつかれた。まじ、失礼。
「幽霊の霊だよ。昔っから、霊媒体質で困っていたんだけど、なぜかお前の近くにいると、霊がいなくなるんだよ」
「それは、本当の話?」
にわかには信じがたい。けど、こんなしょうもない嘘をつくような人間だとは思えない。いや、よく知らんけども、嘘つきな人間に対して女子が騒ぐはずはない。女子は意外と見てますから。
そして、この話を裏付けるような噂が友前くんにはある。友前くんと写真を撮ると、結構な確率で心霊写真がとれるという、よくわからないものではあるが。
「本当だよ。証明はできないけどな。お前の近くにいると、全然憑かれないからな。家が神社だとかそういうことが起こる心当たりはあるか?今まで、どんなお祓いとか祈祷行ってもダメだったのに、山本の近くだと、すぐに体が軽くなって夢見もいいし、金縛りもない」
席替えして、隣になってから、よく寝てるなーとは思っていたけど、そういうわけか。百パーセント信じたわけじゃないけど、わざわざクラスメイトに、こんな電波なことを言う必要性もないし、九割くらいで信じることにした。
「心当たりはないけど。普通のサラリーマン家庭だし。けど、そういう理由なら、別に付き合わなくてもよくない?友達で十分でしょ」
私のこの提案、友達なら周りの子もうるさく言わないだろうという考えもある。仲良くしずぎると睨まれる恐れはあるけど、それはその時考えよう。そこまで仲良くなるかもわかんないわけだし。
私の提案に対して、しばらくの間ぼーっとしていたけど、突然、目から鱗が落ちたかのようなはっとした表情を浮かべてる。
「そうか、友達という手もあったか。女と近づく方法なんて、付き合うくらいしか思いつかなかった」
ただれてんな、おい。確かに、そのきれいな顔だったら、近づいてくる女の子は、そういう目的の子ばっかだろうし、そうじゃない子も思わず惚れてしまいそうではあるからね。その点私ならば、眼鏡さえかけてなかったら、興味ないし。問題は友達づきあいできるかどうか。友達は気が合わないと無理だからね。そこは、まあおいおい仲良くなっていけばいいか。
「友達付き合いするなら、眼鏡は外しといてね。たまにかけてって頼むかもだけど」
ずっとかけていたら、間違って好きになっちゃうかもしれないし。結構揺らいでたから、危ないという自覚はある。でも、友前くんのこと好きになっても不毛そうだし、時々心が荒んだ時とかに目の保養としてかけてもらうくらいがちょうどいいだろう。
「それはいいけど。最初っから聞きたかったんだが、腹に何を仕込んでいる?」
こっちのお腹をちらりとみてくる。見下ろしてみると、確かに違和感があるくらいには、ジ○ンプの形に膨らんでいる。変な女だと思われてるだろーなー。
「ジャン○。さすがに女の子殴るとは思えないけど、念のためにね」
「男が呼び出したら、告白が定番だろ。どんな曲解をした?果たし状にでも見えたか?」
その、こっちの頭を疑うような視線はやめて。痛いから。あの時はいきなりで、それが最善に思えたんだよ。
「だって、あの友前くんが私に告白するとは思えなくてさ。じゃあ、何か気に障ることでもしたかなと思って」
「いや、だからって」
「もういいじゃん。よくわからないけど、長期休暇とか辛くなったら、呼び出していいよ。近くにいるだけでいいんでしょ?」
まだ何か言いつのろうとしていたので、強引にさえぎって話題を変える。
事実、もう七月に入ったから、夏休みは目前だ。一応、友達だし、助けになるなら、呼んでもらっても構わない。ついでに、宿題を教えてもらえるとなおうれしい。友前は顔だけでなく、頭もいいから、ぜひとも頼りたい。
そんな感じで友達になった私たちだけど、いつの間にか眼鏡かけてない友前に対してもドキドキするようになったり、彼に近づく女の子にやきもきしたり、最終的に付き合ったりするんだけど、それはまだまだ先の話ね。
男女間の友情は成立しないという人がいますけど、私的には成立すると思うんですがねー。
山本奈美子・・・実はいろいろと浄化している。本人は自覚なし。霊たちにとっては天敵?これを掘り下げると一気にファンタジーになっちゃうので、あまり気にしない方がいい。
友前彬・・・霊に悩まされ続けている。
実は、山本さんの一番の友達と、友前の友達は付き合っている設定。つまり、眼鏡好き情報は、山本さんの一番の友達が、彼氏に話し、そこから友前に流れただけ。
安心して、山本さん。学校に変な噂は流れてないよ!!