機械仕掛けの前奏曲
序章 異常への序曲
何故こうなったのだろう? 僕の思考は、携帯の画面内で踊る可憐な少女を見ながら少し前を振り返る。
高校生である僕、天城奏夜は、昼休みになったので昼食のパンを買う為、友人の野宮大機と共に購買部へ向かっていた。
「なぁ、奏夜これを見てくれ」
そう言って大機が取り出したのは幾つかボタンが付いている掌サイズの機械、見ただけでは何に使う機械なのかまったく見当が付かなかった。
「これは機械の声を聞き取る機械だ!」
この変態はまた胡散臭い物を出してきたよ、大機は機械オタクで、時たま訳の分からない機械を入手したり自作したりして持ってくるのだけど、大概が碌な物じゃない。
そう考えると今回の物はまだまともな物なのかな?
大機の影響で僕も少し機械系に興味を持っている為、言われるままに僕の携帯電話に機械を使ってみる事になった。
「何も起きないね……」
機械を起動させても携帯はうんともすんとも言わない、まぁ元々胡散臭い機械だし上手く行かなくてもしょうがない。
「あ~上手く行くと思ったんだけどなぁ、また作り直しか~」
この胡散臭い機械大機が作ったようだ、まったく、しょうもないことをする奴だ。
『メールだよ~ お兄~ちゃん』
…………何だ今のは?マナーモードに設定した携帯が震える代わりに音を発した。その音は僕の設定している着信音とは全く違う物で、大機の機械が上手く働いたことを意味していた。
「可愛い着信音ね~」
今の音を聞かれた! いつの間にか購買まで辿り着いていた僕達に1人の女子生徒が話しかけてきた。僕は慌てて携帯から機械を外し声の主を確認する。
「なんだ、静音か」
彼女は僕等の幼馴染の女の子で、こんな場面でも特に取り繕う必要は無い位には親しい間柄だ。
「静音はどうしてここに? 確かいつもお弁当持って来てたよね?」
「今日は寝坊して用意できなかったのよ、だから購買に買いに来たんだけど……」
この混雑に尻込みしていたってことか、例に漏れず昼時の購買はお腹を空かせた生徒達の戦場と化している、のんびりした性格の静音には荷が重いだろう。
「仕方ない、静音、僕が買って来るから待ってて」
「あ~俺カツサンドとコロッケパンな~」
大機の分は買って来るとは言って無いよ! そのことは戻って来てから言うことにして、今は僕と静音の昼食を調達する為に、戦場へ向かおう。
「へ~、やっぱり可愛いね~」
パン、戦利品を手に戻って来ると大気と静音が僕の携帯とあの機械を手に話をしていた。
あれ? 僕の携帯? 自身を探ってみるけど携帯が無い、そう言えば片付けた記憶が無いなぁ……
「大機! 余り恥ずかしい事しないでよ!」
携帯を取り戻し確認すると、僕の携帯から声を出させる為にやったのであろう大機の着信履歴が溜まっていっていた。全削除と……
「ほら、静音これでいいよね?」
買って来た物の中からハムサンドを静音に渡す、まぁ他は碌な物が買えなかったと言うのもあるけど、当然大機には何も無い。
「だぁ! もうまともなパン残ってないじゃないか!」
大機は叫びながら購買に突進して行った。
「先に戻ってるぞ~」
大機を残して僕は教室に戻る、静音とは教室の入り口で分かれたけど、僕の携帯の方を見ながら何か考えていたのが不安だ、変なことを話さなければいいけど……
本日の授業が終わり、部活にも所属していない僕は早々に家へと帰った。携帯を充電器に置き着替えを済ませ今日出た課題を片付ける、そうしている内に1時間ほど経過していた。
『お腹いっぱ~い、もう食べられないよ~』
…………はい?
今の声は聞き覚えがある、大機の機械で僕の携帯が話した時の声だ、携帯を確認するけど、当然大機の機械は付いていない、付いていていればもっと早く気付く筈だ。
どうなているんだろう? 携帯を開いてみると……
携帯の画面内で可憐な少女がクルクルと踊っていた。
『こんにちは、お兄~ちゃん!』
多分大機のせいなんだろうなぁ、こうして僕の日常は異常への一歩を踏み出した。
一章 日常になった異常
携帯画面に謎の少女が現れた翌日、僕はその少女の声で目を覚ました。
『お兄~ちゃん、朝だよ! 起きて起きて!』
不思議な事に、この少女とは意思の疎通が可能だった。大機は一体どんな技術を使ってこれを完成させたのだろう? 疑問は尽きないけど直接大機に聞いたほうが早い、兎に角学校へ向かうとしよう。
僕は少女に起床を告げ、支度を済ませ学校へ向かった。
「で? これは一体どういうことなんだ?」
教室で登校して来た大機を捕まえ、携帯片手に問い詰める。
「は? 何を言って……」
大機は訳が分からない、と言った顔で不思議そうにしていたけど、僕の携帯の画面を見て目を輝かせる。
「おいおい、何だよこれ? 奏夜、お前こんな趣味があったのか?」
「馬鹿言ってないで何とかしてよ、昨日の機械で何かやったんでしょ?」
「いや、あの機械はただの冗談で、着信を感知したら声が流れるように設定してあるだけで、こんな事は出来ないんだが……って、これは奏夜がやったんじゃないのか?」
「僕が好き好んでこんな恥ずかしい真似する訳無いだろ、昨日帰ったらこの状態になってたんだ!」
今の僕の携帯の画面には少女がクルクル楽しそうに踊っている、昨晩色々試してみたけど、この少女、何をやっても消えないのだ。
画面を切り替える、発信、着信、ブラウザ、アプリ、どんな画面でも一番前に出て来るんだ。一度電源を切ってみたけど…… 電源の落ちた携帯から『お兄ちゃん、暗いよ~、怖いよ~』って声が聞こえてくるんだ、もう呪いの域に達しているんじゃないかって、その時は思っていた。
「だとしたらどうなってるんだ? あの機械にこんな機能はねぇぞ」
どうやら本当に大機の仕業じゃないみたいだ、だとしたら一体これは何なのだろうか?
「おはよう、奏夜君、大機君、どうかしたの?」
僕達が顔を付き合わせ、ああでも無いこうでも無いと話し合っていると、それに気付いた静音が近付いて来た。昨日の反応から静音にこの少女を見られるのは非常に厄介な事になりそうな気がする。
「おお、静音~ちょっとこれ見てみろよ」
「あ! ちょっと、大機!」
僕の心配などお構い無しに大機が静音に僕の携帯をみせてしまった。
「――――可愛いです~、昨日は声だけだったのに! どうしたの?」
『? お姉~ちゃんは?』
「あぁ!? 反応したよ! 凄い凄い! お姉ちゃんはね、静音、相馬静音って言うの」
『相馬静音、はい! 電話帳の大切な人グループに登録されてますね! よろしくお願いします!』
「ちょっと! 何さらっと暴露してるの!?」
「そうなの? なんか嬉しいなぁ、そうだあなたのお名前は?」
秘密を漏らされ悶える僕を置いて2人? 静音と携帯の少女は楽しそうに会話を続ける。
「奏夜、お前やっぱりそうだったんだな……」
大機! 不味い奴に知られた! こいつなら面白がって色々ちょっかいかけて来る筈だ!
「いやいや! 大機、お前だって大切な人グループに……」
『入って無いですよ、野宮大機さんは親友グループです』
ちょ! また余計な事を!
「いや! 君ね、人が誤魔化そうとしてるのに余計な事を!!」
『美鈴です!』
「はい?」
携帯の少女は画面内で怒ってみせる、急にどうしたんだろう? 怒りたいのはこっちなんだけどな。
『君じゃなくて美鈴です。今、静お姉~ちゃんが付けてくれました!』
何時の間にか携帯の少女に名前が付いていた。
「なんか収拾つかなくなってきたな、とりあえずもう直ぐ先生来るから一旦解散だ、解散」
大機の言葉に従い一旦解散する、静音が美鈴と離れたがらなかったので、無闇にいじらない事を条件に、静音に携帯を預けてこの場は収めることに成功した。
その後の授業も問題なく進み、何事も無く終わってくれるかと油断している4限目にそれはやって来た。
『お兄~ちゃん、メールが来たよ~』
間違い無い、これは美鈴の声だ。僕の携帯は画面に美鈴が現れてから通常の音が鳴らなくなった。だから着信を報せてくれるのは良いのだけど、マナーモードの時は止めてもらわないとなぁ……
「誰だ~授業中は電源切っとけ~」
この時間担当の先生が厳しい人じゃなくて助かった、少し注意を受けただけで済んだ、今僕の手元に携帯が有るなら怒られるのは僕なので構わないんだけど、今僕の携帯を持っているのは静音なんだよね。
静音はこっそりと携帯の電源を切る…………あれ? 電源切った時って確か……
『や~! また暗くなった~! お兄ちゃん、暗いよ~、怖いよ~』
美鈴が泣き出すんだった! 僕は慌てて立ち上がり静音の手を引き教室を出る。
「あ! おい! 野宮!」
「頭痛がするので保健室に行きます!」
止める先生を無視して僕達は教室を抜け出した。
「で? あの後どうなったんだ?」
昼食時ニヤニヤとムカつく笑みを浮かべた大機が2人分のパンを手にやって来た。ここは人の余り寄り付かない中庭の一角、昼食の穴場スポットだ。
確認した所、さっきのメールは大機から届いていた、しかも空メールだ、完全に面白がっている。
余計な騒動を起こした代償に昼食を買いにパシらせたのだけど、この笑み、全く反省していないな。
「どうもこうも、マナーモード中は余程の事が無い限り着信の報せはしなくて良いって言い聞かせたよ」
「それで、美鈴は不機嫌そうなのか?」
そう、美鈴は頬を膨らませて怒っている、まぁ容姿のせいか、全く怒っているようには見えないのだが、むしろ頬を膨らませる姿が可愛く、静音も何も言わず見守っている。
「んじゃ、美鈴にはこれだ」
そう言って大機が取り出したのは携帯用の充電器、大機いつも持ち歩いているのか?
「俺らだけ飯食って、美鈴は見てるだけってのも可哀相だろ?」
携帯に充電器を挿すと画面に大量のお菓子が現れた。本当にどういう仕組みになっているんだろう?
『!』
美鈴はお菓子を見ると途端に笑顔になり飛びついていった。
「で、これからどうする?」
静音と美鈴が仲良く昼食をとっているのを眺め、僕達もパンをかじりながら話し合う
「どうにも出来ないんじゃないかな? 携帯ショップに持って行っても直りそうも無いし」
「まぁ、害が有る訳でも無いしな」
さっきみたいに、何らかの被害は有るかもしれないけどね。
「出来ることと言ったら、昨日の機械を調べるくらいじゃねぇか?」
「ま、そうだね。でも……別に、このままでも良いんじゃないかって思えるよ」
仲良く昼食をとる静音と美鈴、本当に楽しそうにしている2人を見ていると美鈴を消すと言う考えは僕の中から無くなっていた。
二章 始まりと終わり……
美鈴が僕の携帯の画面に現れてからずいぶん経った。
静音が楽しそうにしているおかげだろうか? 僕の中で美鈴の存在が異常では無く日常の一部になるのにそう時間は掛からなかった。そんなある日……
「雨か……しまったな、傘持って来て無いや」
バケツをひっくり返したような凄い雨、おまけに横殴りの風が吹いている、台風でも近付いているのか? 朝の天気予報を見逃したのが悔やまれる、をこれだったら傘持ってても大して変わらないんじゃない気がするな。
『お兄~ちゃん、わたし防水じゃないよ~』
「分かってるよ、ちゃんと濡れないようにしておくから心配しないで」
周囲に人が居ないことを確認して返事を返す、初日の授業中出来事で変な行動を取っていても余り気にされなくなったのは、良い事なのか悪い事なのか? まぁ、余計な波風は立てないにこしたことは無い。
「仕方ない、走って帰るか」
鞄などに出来るだけの防水処置を行い僕は駆け出した。
川が氾濫しかけていないか? やっぱり台風なんだろうか?
この橋まで来れば家まではあと少し、ここまで来るのに僕の服は既にびしょ濡れで、濡れていない場所が見当たらない状態だ。
「ん?」
雨の音に混じって何か聞こえた。美鈴が何か言っているのかと思い鞄に耳を近づけ集中してみるけど、どうやら美鈴じゃないみたいだ。代わりに僕の耳に苦しそうな子犬の鳴き声が届いた。
「いったい何処から?」
こういう時は大抵橋の下の捨て犬ってところだろうけど……橋の下には何も無い、だったら……
僕は氾濫しそうな川に目を向ける、水位と勢いを増し危険な状態になった川の上流から、沈んだり浮かんだりしながら黒い子犬が流されて来ていた。
「これは、無理だろ……」
普段の穏やかな川なら僕も子犬を助ける事が出来るだろうけど、今子犬を助けに行くのは自殺行為以外の何ものでもない。
可哀相だけど諦めて帰ろうとした僕の目に静音の姿が映った。川辺で何を……!! 静音の視線の先にはさっきの子犬の姿が、まさか助けに行く気なのか!?
「無理だって!!」
僕は静音を止める為、慌てて駆け出した。
不思議な光景、僕が静音の元に辿り着いた時それは起こった。
傘を投げ出し、ずぶ濡れになりながら真剣な表情で川を、子犬を見つめる、静音が子犬に向かい手を翳し何か小さく呟いた。
雨雲に覆われた薄暗い状態だから分かるのだろう薄い光に包まれると、子犬は水面から浮かび上がり、そのまま空中をゆっくりと移動して静音の腕の中に納まる。
僕は投げ出された傘を拾い既にずぶ濡れになっている静音に近付いて行き差し出す。
「え? 奏夜君!」
あぁ、なんだろう、静音の驚く顔なんて久しぶりに見る気がする。
「お疲れ、とりあえず帰ろう、このままじゃ皆、風邪ひくからね」
不思議な光景を目にしたのに妙に落ち着いている、美鈴で慣れちゃったのかな?
子犬を抱えて手の空いていない静音の代わりに、僕が傘を差し2人で帰路に付いていたのだけど、お互いず濡れで傘は殆んど意味が無い。
「えっと、私が魔法使いだって言ったら信じてくれる?」
しばらくお互い無言だったんだけど、不意に静音が話しだした。
「まぁ、美鈴みたいな例も有るし、さっきのを見ちゃったからね」
魔法、又は超能力、そういったものでもなければ、さっきの光景は説明が出来なかった。
「信じてくれるなら、明日……ちゃんと話すね」
その日は静音を家まで送り、それ以上話す事無く帰宅した。
朝、僕は遅刻ギリギリの時間に目を覚ました。
「あれ? 美鈴?」
携帯のアラームはセットしている筈だ鳴っていたなら美鈴が報せてくれる筈なんだけど……
携帯を開いてみる、普通の待ち受け画面に日時が表示されている、それが普通なんだけど……
「美鈴……」
目が覚めると美鈴が僕の携帯から姿を消していた。居ない事が普通の筈なのに、僕は暫く呆然として動けなかった。
結局僕は遅刻した。まぁ、そんな事はどうでもいい……
「どうした奏夜、遅刻してくるし、調子悪いのか?」
「いや、そういう訳じゃ無いよ、昼休みにでも話すから……」
どうやら僕は思った以上に落ち込んでいるみたいだ、美鈴はいつの間にか僕の大切な者に入っていたみたいだ。
「じゃぁ、私の話しも昼に……」
「うん」
昨日秘密を知られた静音まで気を使ってくれている、昼までには元の僕に戻っておかないとな……
「美鈴が消えたのか!?」
「…………」
昼休み、昼食を摂りながら朝のことを話す。大機は驚いているみたいだけど、静音は何も言わない、美鈴と仲良かった静音にしては変な反応だな。
「それ、多分私のせいだ……昨日見たでしょ? 私の魔法」
「は? 魔法? 何言ってるんだ?」
「大機、信じられないかもしれないけど、とりあえず今は黙って聞いてて」
大機を黙らせ静音に先を促す。
「うん、世間には知られない様にしているけど私って魔法使いの家系なのよ、私も魔法使いの見習い、でもまだまだ未熟で完全に魔力を制御できていないの、そのせいか私の周りでは不思議な事が起き易いんだけど……」
「美鈴もその不思議な事の1つって訳か?」
さすが大機、最初は訝しげに聞いていたけど、馴染むのが早い、静音が真剣に話しているって言うのも有るけど、あっさりと魔法の存在を信じたようだ、基本的に頭の柔らかい奴だしなぁ。
「うん、多分私が最初にあの機械から発せられた声を聞いた時に、可愛い可愛いって反応してたのが原因だと思う」
「なら美鈴が生まれたのは半分は大機のせいだな」
「いや、俺だってこれは予想できねぇよ……っと、そうか、あの機械を調べても何も分からない訳だ、魔法なんて未知の物が原因じゃ調べようがねぇな」
「その不思議な出来事も私が近くで魔法を使えば消えちゃう程度の物なんだけど……」
「今回はそれが裏目に出たって事か……」
「うん、私が魔法を使ったあの時、奏夜君少し離れた場所に居たから大丈夫かと思ってたけど……」
「家に帰った後、濡れてないか確認した時はまだ大丈夫だったんだけどね」
少し離れていたから消えるまでに時間が掛かったって事かな?
「偶然が重なった結果美鈴が生まれた、ということはもう美鈴は……」
「一度消えてしまえばもう戻っては来ないわね、私も奏夜君の近くで魔法を使わないように注意はしてたんだけどね」
もう一度同じ事が起こったとしてもあの美鈴にはならないってことだ。
「本当に美鈴とはお別れなんだね」
本当に突然すぎる別れだ。お別れも何も言えなかった。
今日、僕は事の始まりの原因を知り、突然の終わりを迎えた。期間にしたら短い間だったけど、美鈴と過ごした日々は本当に楽しかった。それは、大機や静音も一緒のようで、3人して美鈴の消失を残念に思った。
「楽しかった、こんな日々を過ごさせてくれた美鈴に感謝して、これからあいつの分も楽しく過ごしていこうぜ」
ま、居なくなった事に落ち込んで過ごすよりは、大機の言うとおりにした方が美鈴も喜ぶだろう。
こうして僕たちの異常な日常は終わりを迎えた。
終章 未来への序曲
あれから僕らは悔いの無い高校生活を過ごし、卒業し大学生になった。大機に振り回されたり、静音の起こす魔法関係の不思議な出来事に巻き込まれたりと、慌しく過ごす中で、受験勉強に励み僕は工学系の知識を学べる大学に見事合格した。
今日は同じ大学に合格した大機と共に入学式へと参加していた。
「あ、居た居た! もう、探したよ~」
入学式を終え、サークルの見学にでも行こうかと話していると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「あれ? 静音? どうしてここに?」
「もう、私もこの大学受けるって言ってたでしょ~」
そうだったかな? よく覚えていないけど……大機が隣で笑っているところを見ると、大機は知っていたようだ。
「そっか、静音も一緒なんだね」
「うん、機械の事とかは余りよく分からないけど、少しでも手伝える事があればって思ってね~」
「あれ? 静音には俺等の夢の事話したっけ?」
確か言ったことは無い筈だけど……
「なんとなく、2人を見てたら分かるよ、美鈴みたいな子を創りたいんでしょ~?」
やっぱり気付いていたみたいだね、今はまだ美鈴のように完全に自分の意思を持った機械は存在しない。僕達はあの美鈴と過ごしたような日々をまた過ごせたらって思っている。
「だから、微力ながらお手伝いするよ~」
「ありがとう静音、これからもずっと一緒だよ」
「え!そんな、急に言われても、でも……うん、いいよ、ずっと一緒だよ!」
あれ? 静音の反応、なんだかおかしくない?
「最後の方、奏夜が告白して、静音がOKしたように聞こえたからな」
あれ? 今のでそうなるの? そんなつもりで言った訳じゃなかったんだけど……
ま、いいか。
新たな季節、新たな場所で、僕達は未来へ向け新たな一歩を歩み出した。
拙い文に最後までお付き合いいただき有難うございます。
無理矢理詰めて短くしたような短編となってしまっているかと思います。
感想やアドバイス等、戴けると有り難いです。