山口
掲載日:2025/11/29
山を登る、月明かりが獣道を照らし木々の間から微かに地面を写す、其れを頼りに山を登る
ーーー地面が唸りを上げ、揺れ始めた
地震か?否これは地震ではない
今まで山だと思っていた物は山ではなく、巨大な生物であったのだ。
暫く木にしがみつき、耐えていると海に辿り着いた。
月明かりを反射し海面を輝かせる幻想的な風景とは裏腹に水面は大口を開けた化物を映し出していた。
化物が動きを止め、海面を覗き込む其処には小さくしかし確かに人影が写り込んでいる。其れが誰で有るかは明白であった。
心臓が今までにない程高鳴る、冷や汗が背筋を伝い最悪の想像が頭の中を木霊する。
それの想像は容易く現実へと姿を変えた。
化物が大口を開け、此方を振り向くと口の端から涎が滝のように降り注ぎ身体を濡らす。
目の前が生臭い液体に覆われ其れを払おうとする内に何とも言えない浮遊感が全身を襲う、数瞬の後には生暖かい何かに叩きつけられた様な衝撃を味わう。
其処に至って初めて自分の身に何が起こったのかを理解する、食われたので有る。そして自分を受け止めた生暖かい物の正体は脈動する化け物の臓器であった




