表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/12

十、六合庵の雪隠

 山師(鉱山技師)たちが言うには、爆薬をしかけるのは二か所、堀の南西側・侍地への入り口、北東側・町人地への入り口。

 万全を期して、人の往来に影響のすくない場所に、亥の刻(二十一~二十三時)ちょうどに爆発するよう、仕掛けるという話だった。




 これで一安心、自分の仕事は終わった。

 同心長屋にもどって一服つけているところ、玄関の障子をぱんぱん、ぱんぱんとたたく音がする。

障子をあけたら、小玄太だった。


 小玄太は泣きべそをかきながら、

「姫様が、姫様が」

と繰り返す。


 「お合どのがどうした、しゃっきり話せ」

問いただすと、

「姫様が、爆弾がしかけてある地下道にはいっていっちゃったんだ」

という。


 「はあ? なんでそんなことを」

そもそも本日、地下通路が爆破されることは部外秘のはず。

「奉行所に見慣れない人たちが来て、火薬のこととか話してたし。見てたら、期日も今日だっていうのがわかった」

袖口で涙や鼻水を拭く。


 「きたねえからそういうところで拭くな。

じゃあ、おまえがお合どのに話したんじゃないか」

小玄太はこっくりうなずく。

なんということだ。


 しかし、子どもと思って、小玄太を奉行所の共同風呂にまで入れたのは俺だ。

 そうして、亥の刻まであと半刻(一時間)しかない。

 小玄太にもがんどうをもたせ、いっさんに海蔵寺まで走る。




 「じゃあ、お前がいっしょうけんめい絵の仕事をたすけてくれたのは、もともとお合どのにいいふくめられてのことか。間諜か」

というと、俺の顔を見上げ、

「間諜ってなに?」

という。

 さすがに『間諜』なんて言葉はしらないか。


 「海蔵寺側の地下通路の出入り口はどこなんだ」

ときくと、

「六合庵の、庭のせっちん」

と答える。




 時の鐘が鳴り始めた。

 最初の鐘は捨て鐘。一打目はやや長く、二、三打目はしだいに間隔短く打たれる。

 気ばかり焦って、足が前に進まない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ