その2
ファントム視点
魔術学院には、魔術の叡智と言われる書物やらなんやらがたくさんある。別に興味を持っている訳ではないが、依頼主の命令だから潜入した。
そのはずだったのに、、、。
貴族社会で話題になっている人、シャーロット。
平民だというのに磨けば輝く容姿、天才的な才覚、なにより稀代の“聖属性”ときた。
恐ろしいほどの才能を持っている彼女が、何で俺に求婚しているのだ???
今の俺の容姿は美形には程遠い。
もしかして、そういう性癖だったのか?
しかし、美形の者に頬を赤らませている様子を見るとそういうわけでもなさそうだ。
俺は、ふと気がついた。
もしかして、この聖属性は俺の正体に気が付いているのかもしれない。
何てったって、俺は稀代の“闇属性”だ。一応、水属性として登録しているがこのことがばれたとすれば、一族ともどもおわりである。
とりあえず、忌避されるべき名前を言って、避けてもらうか。
「聖属性のお方ですか。学院で有名になっていますね。
畏まりました。私の名前はファントム。」
大げさに礼をすると、彼女の顔はサーッと青ざめていた。あと一押しで諦めてくれるだろう。
「シャーロット伯爵令嬢、よろしくお願いしますね。」
わざと伯爵令嬢を強調する。ただ属性が素晴らしかったからつけられた爵位を強調して。
彼女は俺に意地汚い笑みを見せてきた。
おまえのいうとおりにはしない。
まるで、獲物を前にした肉食獣のようであった。
「えぇ。ファントム様。ともに人生を歩みましょう。」
輝くばかりに笑った彼女は、泥の上でも美しい蓮の花のようだった。