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その1

今の状況を整理しよう。


ここは昔やっていた『トゥルー・ラブロマンス』の世界で、攻略対象は四人と、secretキャラが一人。


アクイラ・フォアロード、つまり皇太子ルート悪役令嬢である、リーラ公爵令嬢がガッツリヒーローに好かれていることは別に良い。一番平和的。


いや逆にガチ恋してる人いたらビビる。現実だったら問題ありすぎでしょう。


なぜなら、アクイラ皇太子、あーちゃんルートは色々ヤバいのだ。


リーラ公爵令嬢に毒殺されたり、暗殺されそうになったり、連れ去られたりと絶対体験したくない。


王様や宰相、身分の高いものを凄く巻き込んでいるのがあーちゃんルートである。


しかも、あーちゃん、恋の為に身分を捨てるのである。.......皇太子それで良いの?


リーラ公爵令嬢は、罪に問われることはない。が、冷たい目で見られるという結末。独身。


全く楽しそうでないあーちゃんルート。多分周回でプレイした人はいないのではないだろうか。


閑話休題。


兎に角、何故嫌われているのかを考えなけらばならない。


理由として考えられるのは、転生者が濃厚。


でも、そうだとしたら私の出世金稼ぎルートが積む。


出世すれば身分が上になる分、貴族の近くにいる転生者と近くなる。


相手の方が色々強そうだから、出世街道が潰される→金稼げない。


オワコンですか?


あの様子だと、リーラ公爵令嬢に近いその他の攻略者も同様の関係を取ってくるに違いない。


まだ隠し攻略者ならいけるかも、、、。


絶対攻略しないけど。


あーちゃん以外も鬼畜だし。


よくいるビジュアル枠のオルガー・ヴィモテ辺境伯は、義母に暗殺されそうになっているから機が熟すまでめっちゃ作業面倒くさいし。


エンディングの時には、義母が謎に許されていたが許せる気がしない。


「夫婦ともども、頑張っていこうな。」


そうにっこり言われたって多分数年後には離縁するって。


質実剛健だと思っていた、騎士様、ハミル・ウェルストン伯爵はただのドM。


主人公に踏んでくれと執拗に迫ってくるシーンなんか妙に生生しくって怖気が立った。


エンディングでも踏んでくれだの、蹴ってくれだの、罵倒してくれだの。


騎士になった理由が攻撃を受けたいとかもう終わってる。


可愛い小悪魔だと思っていたアダム・ライビ侯爵は、腹黒。


それだけならまだ萌えるけど、ヤンデレ。必死に交渉して無事ハッピーエンドになると、普通に監禁続行。主人公も嬉しそうに笑わないで欲しい。


絶対にお関わりになりたくない人物たちである。


隠し攻略キャラは、まだプレイしたことはないけれど自分の好きな声優さんだった。


そのために、あの糞ゲーを根気よくやっていたのである。


隠しキャラの身分は普通に平民らしい。やったね。


その人に賄賂を渡したら良いのかも。声をきくために。


でもそうしたら、やっぱり殺されるな。主にリーラ公爵令嬢に。


傍にあった鏡台に目を移す。亜麻色の髪に、群青色の眼。無造作にくくられているのにどこか洒落ているような髪。


可愛い系の顔はまさにヒロイン。


「これで、そこそこの身分捕まえて安泰に暮らせば一番良くないか、、、?」


私はこの世の真理を見つけました。


真実のラブロマンス何て、目指している場合じゃない。


両頬を叩くと、思い切り立ち上がった。


「わっはっはっはっは!」


令嬢らしからぬ声で笑った後、指を天に向ける。


「目指せ、天下一の金稼ぎ!」


高笑いしてハと気付く。攻略者全員が一番最初にそろう、大事なイベントの存在に。




新入生歓迎会

勿論全員強制参加である。




私は急いで大広間の前に駆けていったが、入場順は身分の高いものほど後になるというもの。大体今の時間帯だと、公爵級である。


私、平民レベルだからこの時点で入ると私の首が飛ぶ。


牛の肥やしにされるコキタナイシャーロットの姿を想像してしまった私は、大広間に直結している庭園へ行く。


頃合いを見計らって庭園から行こう作戦。


同じ境遇の人を探すが、全くいなさそうである。解せぬ。


そう思っていたころに、同じように庭園に作法など関係なしに入ってくる人がいる。


チラとみてみると、平々凡々な顔。制服のバッジの色は茶色。つまり平民。


真面目に相手を吟味できるほど、学院での試験は易しくないだろう。


「仲の良い関係を築くことを前提に、結婚してください。」


ガバッと目の前のキツネ顔に頭を下げる。


中肉中背というよりは出すぎてる腹。ニキビの顔。


でも、優しそうな顔だ。それに、平民で入ったなら優秀なのは間違いない。金を稼いでくれる。


私は稀代の“聖属性”なので断ることもない。というよりできない!


さぁ、了承の言葉を言うのだ。


彼は、ふっと口元を緩めていった。挑発的な顔立ちで。





「聖属性のお方ですか。学院で有名になってますね。


 畏まりました。私の名前はファントム。」


ファントム。幻影、幻。


この人もしかして、転生者?真逆そんな名前を親がつけるわけないだろうし。だって、世界一の怪盗で、亡霊とまでいわれたファントムの名前を、この世界の親がつけるわけないし。書類審査で落ちる名前。


親が商売をやっていて、そこで公爵令嬢たちと知り合った可能性もある。


私、運命を共にする予定の相手間違えたかもしれない。


サァーと頭の中で大反省会を開いている私をよそに、


「シャーロット伯爵令嬢、よろしくお願いしますね。」


どこか意地汚い笑みを見せた彼は、私の手に唇を落とす。


この声、どこかで聞いたことあるかも。


前世の自分の声すら思い出せない私が何を言っているんだ。


自分の考えを振り払うと、私も飛びきりの笑顔で


「えぇ。ファントム様。共に人生を歩みましょう。」


この人と絶対に婚約して、金持ちになってやる。


そう思い、私は嫣然と微笑むのであった。

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