表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/11

P4

「えっと、じゃあ……」観念したのか、エナガと呼ばれた女の人は少し間を開けてから「夏休み中に体重が三キロ増えましたっ」と恥ずかしそうに言った。


 それだけ? わたしが呆気に取られていると、隣のキイロさんも同じように思ったのか「なにそれ?」と呆れたように漏らした。


「まあまあ、女の体重は最重要機密ですから。充分、他人に話せない秘密ですよ」

「なら私は体重が五キロ減りましたー」

「ちょっと、それは自慢じゃない? というか、わたしへの当てつけ?」

「女の体重は最重要機密。ですよねーセンカさん?」

「あはは……まあ、ですねー」


 楽しそうな三人。キイロさんとエナガさんの隣にいるもう一人の女の人は、あまり話に加わろうとしない。人見知りなのかも。知り合いが知らない人と仲良くしていて話しかけられない、なんて経験はわたしにもある。


「それでは、次の人行ってみましょうか―」


 センカさんが先に進めようとする。エナガさんの隣の女の人が話すのかと思いきや、何故か「僕はですね……」とその隣の人が話し始めた。


 暗くて見えなかった? いや、それでも、キイロさんかエナガさんが指摘するだろうし、本人も何か言うだろう。なんだか薄ら寒いものを感じたけど、この場の誰も何も言わないので、わたしも口を噤んだ。


 男の人は「最近、筋トレを始めたけどまだ全然効果が出ないから誰にも話してない」と言い、センカさんが「継続は力ですよー。きっとすぐに見た目が変わりますー」と軽いフォローを入れた。


 その後の人も、同じような内容が続く。わたしは他人に話せない秘密、なんていうからどんな重い告白が出てくるのかと思いきや、他人に隠す必要のなさそうな冗談みたいなものばかりで拍子抜けした。


「お姉ちゃんも秘密ってあるの?」


 飽きてきたのか、女の子が声をかけてきた。


「まあ、そりゃあ、あるよ」


 わたしは軽く答える。


 誰にだって、他人に話せない秘密の一つや二つ持っているものだろう。それが、さっきみたいに他人に明かせるような冗談みたいなものか、それこそ墓場まで持っていかなくちゃいけないような重いものかは分からないけど。


「そっか」

「あなたも?」

「まあね」


 言って、女の子は顔を地面に向けた。


 小さい子の秘密。わたしが小学校の頃はどうだったか。思い出そうとしたけど、暗いものが出てきそうだったので、顔を背けて考えないようにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ