5 3歳になった
あれから数年経ち、3歳になった。
その間にも色々なことがあったが、
適切?にこなしてゆき、立派?に成長した。
1日の七割を睡眠に当て、残りをほぼ読書で暇を潰し、
護身用に魔法も少し覚えた。
独学だが、このハイスペックボディならきっと大丈夫だろう。
そして、俺は自分のさらなるスペックに驚いた。
鏡を見る機会がなかったので気が付かなかったが、
俺はどうやら相当な美形だったのだ。
艷やかな金髪が腰のあたりまでのび、
目鼻立ちはくっきりしている。
まつ毛も長く、目元は優しげに垂れていた。
肌も白雪のように白く、頬が薄ピンクに染まっている。
体型も軽く抱きしめただけで手折れそうなほど華奢だ。
…アイリスティアという名前からも想像できるようにどう見ても女の子の姿だった。
見たこともないような、儚さを体現したような美少女だった。
名は体を表すという言葉はどうやら本当らしい。
こんな子が外を歩いていたら、親でなくとも心配になるだろう。
さて、何故俺が普段は見ない鏡で自分の容姿を確認する羽目になったのかというと…
「はうっ!?
なんて、なんて可愛らしいの…最っ高。」
そう言って、母はギュッと抱きしめてくる。
礼服がシワになるから、やめてほしいのだが…。
「ねぇ、アイちゃん?やっぱり王都に行くのやめにしない?
私、あなたをあんなクズに会わせたくないし…。」
あんなクズイコール俺の父。
普段は優しい、笑顔を絶やさない母がその言葉を口にした瞬間、見たことがないほど壮絶な嫌悪の表情をしていた。
まあ、それはともかく、今回の遠出は父に会うためらしい。
最近知ったのだが、今の表情からもわかることだが、ソフトに言うと、どうやら母は父のことをあまり良く思っていないようだ。
その理由は至極真っ当。
もともとは正妻と母が付き合っていたところに、父が政略結婚で割り込んだ形らしいとは母の言葉。
そして、なぜか正妻と父は仲睦まじくなり、
いい夫婦になってしまったことがさらに不快、嫌悪を強く持つようになった要因だという。
ちなみに正妻である彼女のことは今も大好きなようだ。
ということで、父が出産に立ち会わないどころか、
この屋敷に近づきもしなかったのは、母が遠ざけていたからとのことだ。
俺は噛まないように回らない舌を頑張って動かして聞く。
「王さまにあわないとおこられない?」
貴族は3歳になった段階で、
体が弱く領地から出ることができないなどを除き、
このパーティーに参加することが義務付けられている。
「ううう…そう、そうなのよね…流石に王に迷惑を掛けるのはまずいし、
アイちゃんの将来のためにも必要なことだものね…。」
なぜかわからないが、
俺は少し罪悪感に駆られた。
それが表情にでたのか、
彼女は腹をくくったようだ。
「わかりました。お母さん、我慢します。
さっさとあのクズに顔を見せて王都観光といきましょう!」
どうやら無理矢理に納得し、
他のことに意識を持っていくことで少し機嫌は直ったようだ。
王都には色々なものがあるのよ〜とか、
お姉様に紹介するわね〜
なんて楽しそうにしている。
良かった。
なにせライラに初めてのおねだりをしたと知った母は俺が赤ん坊であるにも関わらず、
何日も頬を膨らませ、涙をにじませ、フンッといった様子で
俺もライラもいたたまれなかったのだから。
まあ頑張って、練習してママと呼んだら、
逆に喜び過ぎて、一月は離してくれなかったが…。
感情の振れ幅が大きい。
もしかしたら俺にも遺伝しているのかもしれない。
さて、そろそろ寝る時間だ。




