3 冷静になって
「あう。(誠に申し訳ございませんでした。)」
自然と謝罪の言葉がでる。
俺の意識が戻ったのは夕暮れ時だった。
最初はあの時は昼少し過ぎくらいだったから、
二、三時間も泣いていたのか、迷惑かけちゃったな。
でも赤ん坊は泣くのも仕事の内だから、
くらいに思っていたんだけど、
抱っこしてくれている人の顔を見て愕然とした。
朝見たときと違い、母には目の下に大きなクマがあった。
彼女の笑顔はどこか無理をしたものだった。
「っ!?」
「あはは…アイちゃん、もう…こわくないからね…(バタン)」
一瞬母が死んだかと思ったが、吐息が聞こえてきて安心する。
「だう?」
すると、俺は後ろから抱きかかえられた。
そのまま別室に連れて行かれる。
そこには異様な光景があった。
すれ違う人の殆どが目の下に大きなクマを作っていた。
どこからともなく聞こえてきた声によると、
俺はあれからまる二日泣き続けていたようだ。
そんなことは物理的に不可能だろうと思ったが、
先程の異様な光景と、
先日の魔法からあながち不可能ではないと思い直す。
類推するに、前者は桁違いの体力と仙人のような力によるものだろう。
体力の方は内臓やのどに痛みなどがないことから。
仙人のような力はおそらくそれは厳密には違うだろうが、
霞を食べるような力。
魔力やれが食事の代わりになったのだろう。
でなければ、今お腹が空いていないことや、
涙の水分なんか、
さらに消費したエネルギーの説明がつかない。
また、後者の部屋を吹き飛ばした力。
これは圧倒的な魔力。
どちらも明らかに人知を超えた力だ。
そして俺は思い出す。
そういえば、ラノベの主人公達は多くの場合、
チートを持っていてそれのせいで波瀾万丈な人生を送っていたなと。
「あう…だうだう。(間違っても人に知られてはいけない)」
それにおそらくだが、これで終わりではない。
そんな気がする。
「あうだうあう。(とりあえず寝よう)」
アイリスティアは連れて来られたベッドの上で丸くなるのだった。