2 転生前含めて過去一でテンションが上がった
…数時間後、結局ミルクを飲むことになった。
恥ずかしさから、目元から涙が流れた。
しかし赤ん坊の空腹がこれほどつらいものだとは思わなかった。
高校生の時分は腹が減っても一日二日どうにかなったが、
まさか数時間でダウンとは…。
厄介な体になったものだ。
俺はここに食事の時は無心になることを誓う。
さて、本題に入ろう。
数日の情報収集からわかったのだが、
ここはどうやら異世界らしい。
なんとなくそんな気はしていたが、
メイドやれ、先の金髪美女である母やれの会話なんかから、
推定した。
ここはアルファ王国というらしい。
ここは公爵家で俺は側室である母から生まれた三男。
二人の兄と二人の姉がいて、彼らは正妻と父とともに王都にいるらしい。
父に対し、身重だった母を放って何をしているんだと思いもしたが、どうやらガンマ帝国という国と国交が上手く行っていないと聞き、仕方のないことかと思い直す。
俺は日本は表は比較的平和なのでそういう機微には疎い。
厄介なことはさっさと片付いてくれるとありがたい。
悲観的なことはこれくらいにして、
楽観的とまでは行かないが、嬉しいことがあった。
期待していたものがあったのだ。
魔法。
どうやらそれがこの世界にはあるらしい。
全くもって嬉しいことだ。
異世界といえばこれ!
最高だ。
過去一でテンションが上がった。
ということで、
早速試してみたいと思う。
果たして、友人にすすめられたラノベは役に立つのか、
いざ!
まずは丹田…確かへそのあたりで何かを感じとるだったかな?
う〜ん?
う〜ん…う〜ん?
二十分ほどそうやって見たが何も感じない。
あれ?
…気を取り直して血液の中になにかないか感じとってみる
…っ!?
あっさり見つかった。
はやっ!
一分も経っていない。
さて、これをつかって魔法を…ってそういえば呪文?とか術式?とか、知らなかった。
…まあ、とりあえずあの棚のよくわからないものを持ち上げてみようかな?
えい!
すると難なくそれは持ち上がった。
おおっ!すごいすごい!
そう自画自賛していると、なにやら外から視線を感じた。
するとそこには如何にも盗っ人ですよ、
もしくは暗殺者ですよといった人影がいた。
「あう?ああぅっ?!」
俺は瞬間、血液内の全魔力を使い、そいつをふっ飛ばす。
周りのガラスだけでなく、壁まで吹き飛んでいた。
その威力に目を見開くも、
飛んできたガラスの破片が頬に掠り、痛みからか驚きからか、
自然と涙がこぼれてきた。
ダメだ…
ああこれは…。
俺はこの世界に生まれて初めて感情の制御を手放した。
アイリスティアの泣き声が屋敷中に木霊した。
―
「は?なによあれっ!
私じゃなかったら、死んでたわよっ!」
ちょっと大きな魔力の反応がするなと、
覗いて見たら、魔力が爆発してふっ飛ばされたんですけどっ!?
公爵家はあんなにヤバい防衛機構使ってんの。
やべぇ、ちょ〜、やべ〜。
…でも、一応上に報告しておこう。
あ〜…たぶん、私、また行かなきゃなんだろうな…
我が女神アリスのために。