12 暗殺者との戦闘1
ランカが斬撃を弾き飛ばすも、
黒ずくめの男は距離をとりつつ、
ナイフを放り投げてくる。
このままではジリ貧になる。
すぐさまその判断をくだしたランカは
追撃を避け、
いくつかのナイフを受けることを受け入れ、距離を詰めた。
暗殺者の急所を狙う攻撃のみをすべて避け、特に行動の制限がかからない程度の傷で済んだ。
そして、レイピアの間合いでの攻撃をし始める。
ナイフが相手ということで、懐に入られること、また距離を取られることが敗因に繋がると、戦闘センスで理解したランカは小さく、そして早く小回りを重視した攻撃を始めた。
手打ちにならないよう、しっかりと脚を動かし、連撃を繰り返す。
すると、暗殺者は攻め手を欠き始め、次第にランカの方が圧倒するようになっていった。
流石は百年に一人の天才と言われるだけのことはある。
わずか10歳にしてプロの暗殺者に実質勝利するとは。
息遣いすらなかった暗殺者の息が乱れ、身体中に切り傷が刻まれていた。
しかし彼女は子供だった。
圧倒的に実践の経験が足りていなかった。
…暗殺者は一人ではなかったのだから。
凶刃がランカの背を引き裂く。
「っはっ?!」
少女はとっさに武器を落とし、
痛みを抑えるべく体をかき抱く。
すると、女暗殺者はすかさず追撃せんとした。
「ラストーっ!!」
その声に「っ!?」と女暗殺者がその手を止め、なんのつもりだと男を睨みつけた。
「俺がやる。」
その言葉にやれやれと溜め息を吐くと、女暗殺者は引き下がり、内心でかなり怒りの感情を覚えていたのだろう男にそれを譲る。
男は笑いながらトドメを刺すべく、ランカに向かって突っ込んできた。
ランカも応戦するべくレイピアを構え直すが、力が入らず落としてしまう。
おそらくラストと呼ばれる女暗殺者の刃には、痺れ薬が塗られていたのだろう。
ランカは死を覚悟し、目を閉じる。
しかし、
その感覚はやってこなかった。
代わりに何かが衝突するような鈍い音が聞こえた。
祈るように目を見開くと、
男はドサリと崩れ落ちた。
誰がやったのかと思い、ゆっくりと目を動かすと、
眠っていた天使がこちらに向けて手をかざしていた。
―
アイリスティアは大混乱だった。
ソファで寝ていたら、
赤い髪の女の子が背中から大量の血を流し、
黒ずくめの暗殺者二人に襲いかかられていたのである。
男が女の子に向かって、突っ込んだ。
その瞬間、
とっさに防御魔術を展開する。
見えない壁が女の子と男を隔てて出来上がる。
程なくして男はそれに追突し、ノックアウト。
おそらく強化魔術を使っていたのだろう、
腕の形は原形をとどめていなかった。
呆然としていた女の子が声を上げた。
「後ろっ!」
とっさに魔術を展開する。
防壁が一枚破られる。
振り向くと、後ろには女暗殺者ラストがいた。




