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#8 一応の共闘

「ふう……さあて、またまた見えて来たよ者共! あたしたちの領土に、なるかもしれない森がね!」

「はい!」

「ああ! こりゃ、腕が鳴るな……」

「楽しみー♪」

「……」

「……」


 列車魔砲上星号が線路上を行く、この先には。


 かつての戦いで主人たる魔砲獣を駆逐され、成長途上のまま取り残されていたその拠点となる森があるわ。


 それは見渡す限りの荒野における、所謂オアシスと呼んで差し支えないものだけど。


「そのオアシスを私たちと、アメリカの私鉄学園とで交代で守るか……」


 以前利澤先輩が言っていた、アメリカの私鉄学園との戦いっていうのは。


 そこを新たな領土として、争奪するやり方よ。

 まあ、その前にどちらかが抜け駆けして実効支配なんてされても困るからと。


 一緒に守るという名目で、そんなことをしないか牽制し合う目的なの。


「……とはいえ、いいか皆! これはまだ領土戦ではない、あくまで共同戦線だ。ここで協調性を欠けばあちらから抗議を受けかねない、心してかかれ!」

「はい!!!」

「はーい♪」

「は、はい!」

「……はい。」


 私たちはその風向井監視官の言葉に、揃って頷く。


 ◆◇


「……総員、散開! 森を取り囲むよ!」

「了解!!!」


 かくして。

 私たちの魔砲戦車は上星号から分離し、荒野を駆け始める。


「さあ……アメリカさんがお待ちかねだよ!」

「……はい。」


 そして、反対側から走って来たのは。

 アメリカの私鉄学園、スナイプダム学園が擁している魔砲戦車連隊。


「Hi、日本の学園の皆さん初めまして!」

「ええ、よろしく。」


 そうして。


 各魔砲戦車から降りて、私たち上星学園とスナイプダム学園の面々は直接対峙する。


 今、スナイプダム学園代表として同じく上星学園代表の利澤先輩と握手をしているのは隊長のクリスティーナ・サンダース。


 ロングブロンドに青眼、この照り返しの強い荒野に似つかわしくない白い肌。


 ……典型的な、美形白人ね。


「Oops! 雨が降って来たわ。」

「あら……本当。」


 と、その時。

 魔砲獣の元拠点である森に、雨が降ったわ!


 魔砲獣っていうのは、つくづく不可思議ね。


 普通だったら荒野に森がちょっとできた程度だと、こんな気候が変わるようなものじゃないんだけど。


 それが、こんなことになるなんて。

 やっぱり魔砲獣たちには、何らかの超自然的な力があるのかしら――


「Oh……これはすごいわ。この森が水源地になれば、近くに街を作れる! そうすれば、この大陸の領域はもっと広がるわ。」

「ああ……そうだねえ。」


 嬉しそうにそう言うクリスティーナに、私たちは少しカチンと来たわ。


 この娘、もうアメリカがこの一帯を手に入れた気でいるわ。

 まったく――


「そうそう! そうすれば、上星学園の街ももっと広がっていくよね!」

「!? w、What!?」


 と、思ったら。

 なんとなんと、火南香乃音がそんなことを言い出した!


「お、おいおい火南! 駄目じゃないかいそんなこと。」

「そ、そうだぜ! まだうちの街になるって決まっている訳じゃないんだからさあ。」


 利澤先輩と風間先輩が、表向き必死に宥めているけど。


 その口調はどこか演技めいていて、また目は笑っていたわ。

 ……そう、今回ばかりはよく言ってくれたわ火南香乃音!


「Damn……」

「ま、まあすまないねえアメリカさん! こ、ここはまあ今回は同じ魔砲獣から街になる予定の場所を守る立場なんだし! 協力しようよ、ねえ?」

「……Yes!」


 利澤先輩が尚もとりなすと、クリスティーナは少し膨れっ面ながらも。


 作った感じだけど、笑顔を向けてくれた。


 ◆◇


「さあて……上星学園戦車隊、改めて! 森の周りに防御陣形を組むよ!」

「はい!!!」

「はーい♪」

「は、はい!」

「……はい。」


 そんなことがありながらも私たちは、再び自分たちの車両に乗り。


 森を防衛するべく、陣形を組み始めるわ。


「! 二時の方向より飛来する物体群あり!」

「あ、あれは!?」


 と、その時。

 空に浮かんだ、複数の影。


 それは言うまでもなく、魔砲獣の群れよ。

 まあ、規模はそんなに大きくなく。


 とりあえずは攻撃しに来たって感じね。


「魔砲陣形、展開! 防御陣形で迎え撃つよ!」

「了解!!」

「りょーかい♪」


 私たちは、自車を駆り。

 そのまま、陣形を組もうとするわ。


 ……だけど、その時だった。


「クリティカルスキル、鋼鉄鋭弾(メタルエッジ)。」

「え!? な……ちょ、石見姉!」

「こ、鉱美!?」


 突如、その命令を無視して。

 石見姉――石見鉱美が自車から対戦車誘導弾を放ったわ!


「……一番槍を入れたのは、対戦車誘導弾使い(ランサー)科であるこの私です。先ほどのアメリカとの交渉を見ていて、やはりあなたたちにはこの戦いは任せられないと感じました!」

「な!? あ、あんた!」

「鉱美……」


 妹の美葉も戸惑う中、普段の無口ぶりはどこへやら鉱美は意気揚々とそう告げた――

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