#6 雷の魔砲少女
「こちら風向井。当列車上空、6時の方向に敵影!」
「! 来たね……総員、戦闘準備!」
「! はい!」
機関車にいる監視官から入電し。
それを合図に、私たちは各車両に搭載された自車という持ち場につく。
「では行かせてもらおうか……魔砲鉄道大戦、起動!」
「は、はい! 魔砲鉄道大戦、起動! ログイン。オンライナー、アクセス!」
そうして、同時に手元コンソールのアプリケーションを起動させた。
今、私たちや専用の魔砲戦車を搭載している列車魔砲は。
大移動を始めた魔砲獣たちの群れへと向かい、それを掃討せんとしているわ。
「さあさあ新入り共に風間あ……今度こそ、邪魔すんじゃないよ!?」
「は、はい!」
「へいへい。」
「はーい♪」
そうして、利澤先輩はそう凄み。
私たちは、それぞれに返事をするわ。
「さあ行くよお……クリティカルスキル、豪雷撃投射砲!」
そうして利澤先輩は、やはり自分の砲塔から光線を放つ。
たちまち、伸びた光線は迫り来る魔砲獣の一団を捉え。
そのまま利澤先輩は砲塔をぶん回し。
光線はさながら剣のように、魔砲獣たちを一閃していく――
シャアアア!
……と、思いきや。
「な……あ、あたしの砲撃が!?」
何と、空にひしめき合う魔砲獣の群れ外周部から幾重もの雷が落ち。
それは利澤先輩の光線を通さない、防壁を構築したわ!
「あれはサンダーバード型だ! ああやって群れで空を覆い体液を雨として降らせ……更に、雷で防御するんだ!」
監視官が、機関車からこの様を見てそう説明してくれたわ。
だけど、そんな。
それじゃあ。
「あ、あたしの砲撃は効かないってのかいい……肝心な時にい!」
「クリティカルスキル、大嵐弾幕!」
「クリティカルスキル、業火電磁砲!」
「!? あ、あんたたち!」
と、そんな時。
そんな利澤先輩をよそに、何と火南香乃音と風間先輩が各砲塔から攻撃したわ!
「邪魔すんなって言ったろ!」
「おいおい利澤、まったく攻撃効いてねえのにそれはないんじゃねえの?」
「むっ……くっ!」
「だけど……わ、私たちの攻撃も全然効いてなーい!」
とはいえ。
火南香乃音と風間先輩の砲撃も、サンダーバード型の雷に防がれ内部に届かない。
「そうだぞ、利澤君! そもそも……この戦いは戦車隊全員で挑むべきものだ! それを自分だけでやるものなどと」
「も、申し訳ございません監視官!」
あらあら……
ま、まあでもその通りですよ利澤先輩!
私たち、同じ戦車隊なんですから!
「……利澤先輩、監視官。私に、意見を言わせていただいてもよろしいですか?」
「! な……向氷!」
「向氷君……」
「ひ、比巫里ちゃん?」
「へえ?」
あらあら、何よ皆。
私だって戦車隊の一員なんだもの、発言ぐらいするわよ!
……まあ、火南香乃音のバカに影響されたことも否めないけど!
「……私が、あの魔砲獣めがけて砲撃します!」
「あ、ああ……しかし。一体どうするんだ?」
「……考えがあります。私にやらせてください!」
「うむ……」
私の言葉に、風向井監視官は。
渋々、といった雰囲気で応じてくださったわ!
◆◇
「さあ、群れに近づいて来たよ……大丈夫なんだろうねえ!?」
「はい! 僭越ながら見ていてください利澤先輩に監視官!」
そうして。
私が自分の砲塔を魔砲獣たちに向けている列車魔砲は、尚もその動きを止めず。
「……クリティカルスキル、凍結砲華! さあ今よ多連装火箭使い! ミサイルを発射して! 目標、魔砲獣群直前!」
「……はい。クリティカルスキル、投石投射。」
私は、列車魔砲に同乗している多連装火箭使い科の同級生が構える多連装弾頭を凍らせ。
氷塊となったミサイルを次々と生成し撃たせたわ!
たちまちミサイルは、一旦打ち上げたように直上を飛んだあと。
空を真っ直ぐ飛び、そこを黒々と覆い尚も雷を落とす魔砲獣たちに向かう。
キシャアア!
けたたましい叫び声と共に、魔砲獣たちはそれを雷で迎撃するけど。
その時だったわ。
キシャアア!
「ん!? な……あれは!」
「ど、どういうこと!?」
「へえ……やるじゃんか!」
魔砲獣が上げた声は先ほどの戦意たっぷりのものではない、恐れ故の悲鳴。
というのも、雷で迎撃された氷塊ミサイルはそのまま急速に溶解・蒸発し。
乱気流を生成して、空を覆う魔砲獣群を崩し始めたからよ!
「よし、作戦は失敗でもなさそうです! さあ監視官!」
「承知だ……上星学園戦車隊、全砲門開け! 今敵の防御網は崩れた、撃ちまくってやれ!」
「了解!!!」
「りょーかい!」
監視官は、その隙に皆に指示を出してくれたわ。
そうして。
「クリティカルスキル、大嵐弾幕!」
「クリティカルスキル、業火電磁砲!」
「クリティカルスキル、投石投射。」
列車魔砲上星号に搭載された各種魔砲戦車――もとい、砲塔たちから攻撃が撃ちまくられ。
それらは今尚体勢を立て直そうとする魔砲獣たちに、容赦のない攻撃として加えられていく。
「さあ……あたしの出番だねえ! クリティカルスキル、豪雷撃投射砲!」
そうして利澤先輩も、自分の砲塔から光線を伸ばし。
さらにそれをぶん回して、魔砲獣の群れを切り裂いて行く!
「ええ……ありがとうございます利澤先輩! じゃあ多連装火箭使い! 敵の体勢を尚も崩すために私とミサイルを発射して!」
「……はい。」
そうして私も。
例の多連装火箭使いと共闘し、尚も氷塊ミサイルを浴びせていくわ!
こうして。
かなりの激戦の末、魔砲獣たちは撤退し。
中途半端にできた拠点の森にも私たちは列車魔砲から魔砲戦車を分離して入っていったけど、魔砲獣は見当たらず。
こうして、今回の任務は無事完了したわ。
◆◇
「今回もよくやってくれた! 君たちのおかげだ。」
「はい!!! ありがとうございます監視官!」
「ありがとー!」
こうして上星学園街に戻って来た私たちは、監視官からお祝いの言葉をいただけたわ。
「……監視官。私から皆に言いたいことがあるんですが、よろしいでしょうか?」
「ん、利澤君! よし……さあ、言ってみなさい。」
「ありがとうございます。」
む、利澤先輩!
ま、まあ今回も私たち――いや、主に私が先輩を蔑ろにしちゃったんだけど。
さあ……何言われるか分かったもんじゃないわね!
「……今回はありがとう皆。そして今までごめん! あたし一人じゃ何もできなかった。」
「……へ?」
「は?」
「え?」
……と、思いきや。
そんな意外な言葉だったわ。
「……これからも、あたしを助けてほしい。」
「うん! いいよ神奈ちゃん!」
「こ、こら! またあんたは……は、はい利澤先輩!」
「何だよ利澤……いきなりしおらしくなって、こりゃ雨でも降るか? いや、もう降ってるか!」
「何だってえ、風間あ!」
そんな利澤先輩に、私たちはそれぞれの反応を返すわ。
「こ、こら君たち!」
見かねた風向井教官が、場を宥めようとするわ。
……だけど。
「(私も……混ざりたいなあ。)」
そう心の中で言っていたのは、あの多連装火箭使い。
そう、私たちはすっかり彼女のこと忘れてたわ!