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#3 地下鉄道現る

「まったく……ちょっとは整備する側のことも考えろよなコラ!」

「ひいっ! ご、ごめんなさい!」


 その夜。

 私や火南香乃音は、こっぴどく怒られた。


 怒っているのは列車魔砲の機関士を務めてくれてる男性、釜石義澄(かまいしよしずみ)さん。


 年は私たちよりちょっとお兄さんぐらい――所謂おっつかっつって奴かしら。


 まあでも、列車魔砲の機関がおかしくなっただけで。

 魔砲戦車は、問題なく稼働できるみたい。


「ああ、まったくだよ! 監視官様もおとなしくあたしに止め刺させていればこんなことには」

「こら利澤! それ以上言っちゃあ」

「おっと……こりゃ、口が滑るところだったねえ。」


 仮にも監視官への悪口と受け取られかねず、利澤先輩は風間先輩に注意されてしまった。


「他人事みたいに言うが利澤、お前もちょっと前までは機関をオーバーヒートさせてたんだからな!」

「む!? ず、ズミさんそれはもう言わないお約束だろう?」

「え?」


 へ?

 だけど釜石さんの言葉に利澤先輩は、慌てている。


 あらあら、先輩もそうだったなんて。


「……まあ、この機関はやられそうなお前らの身代わりになったってことで。ならいいのかもな……」

「……あれえ? 何だいズミさん、あたしらのこと心配してくれてんのかい〜?」

「!? なっ!」


 と、その時。

 釜石さんがぼそっと呟いた言葉に、利澤先輩は食いつく。


 え、マジ?


「ば、馬鹿言え! た、ただお前らなんて俺が整備してやってる列車魔砲がなけりゃ無力な奴らだって言ってやっただけなんだからな!」


 釜石さんは、割と素直じゃない反応を返すと。

 そのままプイッと、奥に引き上げてしまった。


「ねえねえ比巫里ちゃん、あの人もしかしてツン」

「ば、馬鹿! それは言っちゃダメでしょ!」


 火南香乃音の言葉に、私はヒヤヒヤ。

 まったく、本当にこの娘は!


「ふう、まったくいつも通りだねえズミさん……さて。後輩たち、この後ちょっとツラ貸しな!」

「!? は、はい!」


 と、そこへ。

 利澤先輩がなんと、私たちにそう命じたわ!


「ええ〜? 何々、楽しみ〜!」


 まったく、また呑気にも。

 火南香乃音は、目を輝かせている。


 ◆◇


「はあい、ママ!」

「おや? 見ない顔だねえ神奈ちゃん。その子たちは新入りかい?」


 そうして、連れてこられたのは。

 西部劇ではお馴染み、酒場!


 ……酒場?

 いや、ちょっと待って!


「あ、あの利澤先輩失礼なんですけど……私たち」

「おいおい、何だい向氷ちゃん! まさか、未成年だからとか硬いこと言うんじゃないだろうね?」

「い、いいえそんな!」


 私の言葉はだけど、利澤先輩に睨まれるきっかけになっちゃった。


 そりゃ、私だってその場を乱すようなことは言いたくないけど……


 私も先輩たちも、未成年なのよ!?


「そーだよ比巫里ちゃん、硬いこと言わない!」

「……はあ、まったく!」


 そうしてどさくさに紛れて。

 火南香乃音まで利澤先輩の言葉に便乗して来た!


 まったく、これじゃ私がまともじゃないみたいな言い方じゃない!


「まあまあべっぴんさん方、ほうら!」

「おお、ありがとうママ!」

「ありがとう!」

「あ、ありがとうございます!」

「……ありがと。」


 そうして、酒場のママさん?が私たちに。

 何やら鮮やかな色合いのドリンク入りグラスを出してくれたので、私たちは席についたわ。


 ……だけど。


「何だいあんたたち!? あたしの酒が飲めないってかい?」

「い、いえいえそんな!」

「い、いただきまーす!」


 やはりというべきか、さすがに躊躇っていると利澤先輩がど突くとばかりの剣幕で。


 私たちは、慌てて飲んだ。

 ああ、私大人になるわ――


「……ん? こ、これは!?」


 ……と、思いきや。


「ははは、アルコールなんかあんたたちみたいな娘さんたちには出しやしないよ! あたしが監視官に怒られちゃうからねえ。」

「ははは! あー、ケッサク!」


 ……な!

 の、ノンアルコール!?


「うーん、おいしい♡」

「まったく……利澤! いいかげんこういうの止めない?」

「おいおい風間! あたしの数少ない楽しみ奪う気い?」


 ……なるほど、どうやら利澤先輩の悪い癖みたいね。

 申し訳ないですが先輩、あまりよろしくないご趣味です!


「!? 皆、伏せな!」

「へ?」

「え? ……きゃっ!」

「くっ!」


 と、その時。

 何と、この酒場に。


 突如として、弾丸が撃ち込まれた!?


 ◆◇


「な、何これは……これじゃあまるで」

「ああ、西部劇みたいだねえ!」

「す、すごーい!」

「こりゃあ、血が騒ぎそうだな!」


 い、いや皆!

 床に伏せてる割には、何て呑気な!


「仕方ないねえ……魔砲鉄道大戦(オンライナーゲーム)、起動!」

「は、はい! 魔砲鉄道大戦(オンライナーゲーム)、起動! ログイン。オンライナー、アクセス!」


 だけど私たちは、手元のスマートフォンから魔砲戦車制御システムにアクセスし、魔砲戦車を呼んだ。


 そう、外からは走行音も聞こえるし地も揺れているの。

 これは明らかに、魔砲戦車による攻撃ね!


「だけど、何故魔砲戦車が? 線路の見張りは」

「あれは……地下鉄道だな!」

「え? ち、地下鉄道ですか!?」


 私がぼそりと、尚も床に伏せながら言う言葉に風間先輩は応えてくれた。


 この街は周りを線路に囲まれていて列車魔砲の見張りも常にあるはずだけど、そうね。


 あの地下鉄道なら――


「ちかてつどー? 比巫里ちゃん、何それ?」


 ……もう、またあんたなの火南香乃音!


「まったくもう……最近国を問わず、街を襲ってる魔砲戦車の集団がいるの! そいつらは砂嵐と共に現れて砂嵐と共に去っていく……一部じゃ、逃亡した魔砲少女の地下組織じゃないかって言われててだから地下鉄道! 分かった?」

「は、はいありがとー!」


 ……はあ、まったく!


「お嬢ちゃんたち、あんたたちの魔砲戦車が裏手に来たよ! さあ、早く!」

「ああ、サンキューママ!」

「ありがとうございます!」


 そうして、ママさんが。

 私たちに、そう告げてくれたわ!

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