#2 列車魔砲で行こう
「出撃せよ、繰り返す! 出撃せよ……」
急にそんな号令が入ったのは、深夜のこと。
私たちは急いで飛び起き。
今魔砲戦車を六台搭載している、列車魔砲なる列車に乗っているわ。
列車魔砲上星号。
そう、それはいわゆる装甲列車で。
上から搭載している魔砲戦車の砲塔を露出させて武装としているわ。
「……さあて! 新入りたち、あたしらの邪魔だけはすんじゃないよ!」
「は、はい!」
……そう今回、というか毎回こういうのは人手不足が常で。
今利澤神奈先輩が言った通り、上級生との合同作戦で。
下級生の私たちは、当然戦々恐々としながら利澤先輩に応えるわ。
……だけど。
「はーい♪」
「へえ……あんた、随分活きがいいじゃないの!」
はあ、まったく。
こんな所でも、場違いに明るい声を出しているのは火南香乃音!
もう、真面目にやりなさいよ!
「まあいいんじゃねえの? こりゃああたしと気が合いそうだわ! あたしと同じで、戦闘狂かもな!」
「! ふん……まあ、そうかもね!」
「? せんとうきょー?」
と、そこへ。
フォローを入れてくれたのは、同じく上級生の風間楓華先輩!
ま、当の火南香乃音は相変わらずおとぼけな感じだけどさておき。
「こちら風向井。当列車上空、12時の方向に敵影!」
「! 来たね……総員、戦闘準備!」
「! はい!」
と、そこで離れた本部にいる監視官から入電し。
それを合図に、私たちは各車両に搭載された自車という持ち場につく。
「では行かせてもらおうか……魔砲鉄道大戦、起動!」
「は、はい! 魔砲鉄道大戦、起動! ログイン。オンライナー、アクセス!」
そうして、同時に手元コンソールのアプリケーションを起動させた。
私たち10代の少女にも分かりやすいよう、ゲームのように調整された制御システムよ。
さて、自分のユーザーインターフェースを見ると。
名前:向氷比巫里
年齢:15歳
グレード:1
ジョブ:魔砲使い科
スキル:凍結弾発射
クリティカルスキル:凍結砲火
装備
零式三十七ミリ戦車砲
新全零式魔砲戦車
なるほど、これがそうなのね。
「よおっし! よーく見てなあ、新入りたち…… クリティカルスキル、豪雷撃投射砲!」
それで一番槍を放とうとばかり。
光線砲使い科たる、利澤先輩が自分の砲塔から光線を放つ。
たちまち、伸びた光線は迫り来る化け物たち――この大陸の現住生物たる魔砲獣という飛行生物の一団を捉え。
密集していた奴らは散開するけど、構わず利澤先輩は砲塔をぶん回し。
光線はさながら剣のように、魔砲獣たちを一閃していく。
その光線は、描く軌道上にも雷をばら撒き。
逃げ遅れた小型の魔砲獣たちが、お釈迦になっていくわ!
「さあて……次はあたしが出る番だな! 列車魔砲のスピードを緩めな、さあ!」
そうして、次には風間先輩が出る。
風間先輩は、魔砲牽引二輪車乗り科の人で。
魔砲牽引二輪車――いわゆる、ケッテンクラートが引く一門の自走砲の使い手。
「あいよ! さあ楓華、行っちゃいな!」
そうして走りを緩めた列車魔砲から、風間先輩とそのケッテンクラート牽引魔砲が分離して線路外を走り。
「さあ化け物たち……クリティカルスキル、大嵐弾幕!」
風間先輩は自車牽引魔砲の仰角を調整し、エネルギー弾を連射する!
それにより魔砲獣の注意は、風間先輩に向く。
「かかったなあんたら! さあ……鬼さんこちら、手の鳴る方へ!」
風間先輩はそのまま魔砲獣たちを、ケッテンクラートを高速で駆り引きつけるわ。
とはいえ。
「よし……火南君! この隙に、君が止めを刺すんだ!」
「はーい! よおっし!」
そう、これはいわゆる囮。
――作戦はこうだ。利澤君が奴らに先制攻撃を仕掛け、更に風間君が奴らの注意を列車魔砲から逸らす。
その隙に、火南香乃音があの強力な技で奴らを葬るって訳。
「さあてさて……目標、照準! それで……来なさい、来なさいよ魔砲獣たち!」
まったく、本当にお気楽なことに。
火南香乃音は、緊張感の欠片もなく風間先輩に引き寄せられる魔砲獣を狙っているわ!
「クリティカルスキル、業火電磁砲!」
そうして。
火南香乃音は列車魔砲の自分の砲塔から、渾身の一撃を見舞い――
◆◇
「くっ……やった、の!?」
私は砲塔の窓から確認しようとするけど。
「ぐ……たく、これが新入りの技かい! エネルギーの逆流が、激しいねえ!」
「えへへ、それほどでもお!」
「いや、褒めてないわよ!」
火南香乃音の技は、強すぎて。
車体にエネルギー逆流が起こり、他の砲塔にも多大な影響を与えているわ。
しかも爆煙に包まれた魔砲獣たちの群れは、どうなっているかまったく分からない。
と、その時。
キシャアアア!
甲高い鳴き声と共に。
「な……くっ、あのデカブツは残っていたか! おうら、クリティカルスキル、大嵐弾幕!」
爆煙から、生き残っていた大型魔砲獣一匹――ケツァルコアトル型が躍り出て来た!
咄嗟に風間先輩が弾幕打ち込んだけどケツァルコアトル型は巨体に似合わない敏捷性で、身を翻し。
そのまま再び上空に上がり始める。
「くっ、このままじゃ!」
「大丈夫、私がまた撃つ!」
「!? ひ、火南香乃音!?」
だけどそこで、あいつがまたとんでもないこと言い出した!
「何言ってんの! 今の状況分かってんの? あんたの砲塔はもう使えるか分かんないの! お気楽に舐めてかかっていつでも撃てると思ったら大間違いよ!」
私はたまりかねて、火南香乃音にそう返す。
だけど。
「もちろん、お気楽に……舐めてかかってうまくいくなんて思ってないよ! だけど今、私がやらずに誰がやれるの!」
「! 火南香乃音……」
意外にもあいつは、そう言い返してきた。
いつものフワフワした感じなんて、感じさせない口調で。
と、その時。
「! ほら比巫里ちゃん、あいつ戻って来る! やっぱり私が撃たないと!」
「あー、もう……クリティカルスキル、凍結砲華!」
「!? ひ、比巫里ちゃん?」
ケツァルコアトル型が引き返して来たのを見て、火南香乃音がまた構えたのを見て。
私は自分の砲塔から冷気を放って、エネルギー逆流で白熱してた車体を他砲身を冷却した。
「いいから! あんたはあの化け物に集中しなさい。私は敢えてあんたの足手纏いになって止めるから、余計な心配しない!」
「は、はい! ……よおっし!」
私が飛ばした檄に、火南香乃音は応え。
「クリティカルスキル、業火電磁砲!」
再び火南香乃音が、技を発動すると。
たちまち列車魔砲が唸り、砲門から激しい火線が飛び出し。
今まさに、射線上に捉えていてこちらに向かって来ていたケツァルコアトル型を切り裂くように撃ち。
ギャアア!
絶叫が木霊すると共に、大爆発を起こして消滅させたわ!
「や……やった! やったよ比巫里ちゃん!」
「ええ……まあ、あんたにしちゃやるじゃん?」
「くっ……あたしを差し置いて!」
「まあいいじゃん利澤、次で挽回すればさ?」
列車魔砲内外から聞こえて来る先輩たちの声に、私しまったと思ったわ。
私たち、先輩たちを差し置いてしまった!
◆◇
「よくやった……特に新入生の火南君に向氷君! 君たちなら、できるかもしれないな……世界に、ザマァすることも!」
本部からこの様子を見ていた風向井監視官は、そう呟いた。