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#19 迫る境界線と戦線

「さあて……どうなることやら。」


 上星号の機関車で、風向井教官はため息を吐かれているわ。

 外に見えるのは、中国の私鉄学園列車魔砲ですもの。


 そりゃ、そんな気分にもなるわよね……


「わーっははは! いやはや、これはきっと楽しい旅路になることでしょうなあ!」


 そして、こちらはその客席。


 メイド役の私たちは、既にこのVIP客のテンションについていけなくなっているわ。


「わーっははは!」


 約一名――火南香乃音を除いて。

 いや、何一緒にバカ笑いしてんのよ!


「ほうほう、これはこれは中々分かるお嬢さんだ! ははは!」

「わーっ、はははは!」


 まったく、お客様も……

 火に油注がれたような感じになっちゃったわよ!


 ◆◇


「はあ、やっと寝てくれました……」

「よし向氷ちゃん、ナイス!」


 まるで赤ちゃんを寝かしつけたような言い方だけど。


 まあ無理もないじゃない、でっかい赤ちゃんかって思えるほどに荒ぶるお方だったんだから!


「うん、楽しかった♪」


 ……あらあら、まったく知らぬは当人ばかりなりね!


 あんたまで悪ノリしたりするから、余計な仕事が増えたのよ火南香乃音!


「火南香乃音……あんたねえ」

「まあ待ちなよ、向氷ちゃん! 何はともあれ、火南はお客様を満足させてんだからさ。」


 り、利澤先輩……

 ま、まあそうですね……


「……しっかしよお、利澤に向氷ちゃんに火南。今外は何か静かだな。こりゃ、嵐の前兆じゃないといいんだが……」


 風間先輩……


「ああ、それはそうだな……また地下鉄道が襲って来ないとも限らないし。」

「! か、風向井監視官!」


 と、そこへ監視官が現れたわ。


「だいじょぶだよ! また私たちで戦えば!」


 はあ、火南香乃音……ほんと呑気なんだから!

 そもそも、あんた忘れてないでしょうね?


 ――クリティカルスキル:|業■電磁□《カタ#ロフ-レー◯ガン》


 ――……クリティカルスキル、竜豪炎電磁砲カタストロフィードラゴレールガン


 あの時あんた、暴走してんのよ?

 分かる? 暴走!


「ん? どうしたの比巫里ちゃん?」

「……何でもないわ、あんたは本当呑気でいいわよねって思っただけよ。」


 まあ、さすがにそれは言えずじまいではあったけど。

 私がそんな憮然とした思いが表に出てしまって、慌てて取り繕ったわ。


「そうです、監視官! あの時は取り逃しましたけど、次こそ私たちが地下鉄道を潰します!」

「ち、ちょっと鉱美!」


 あらら、石見姉妹もそんなこと。

 でも、私は願わくば。


 あんまり地下鉄道も魔砲獣も、もうごめんだわ――


 ◆◇


「繰り返す、二時の方向に魔砲獣の群体あり! ただちに第一魔砲戦車隊は持ち場につけ……」

「はい!!!!!」

「はーい♪」


 ……だけど、そんな私の気持ちも虚しく。

 その翌朝のことだったわ。


 まだそんなにフロンティアに近づかない内だというのに、上空から魔砲獣たちの攻撃が始まろうとしていたわ。


「よし、皆持ち場についたね! さあ行くよ…… 魔砲鉄道大戦(オンライナーゲーム)、起動!」

「は、はい! 魔砲鉄道大戦(オンライナーゲーム)、起動! ログイン。オンライナー、アクセス!」


 そうして、同時に手元コンソールのアプリケーションを起動させた。


 毎度……というほどいちいち説明してないけど。


 お馴染み私たち10代の少女にも分かりやすいよう、ゲームのように調整された制御システムよ。


「さあ行こうか……クリティカルスキル、豪雷撃投射砲サンダリングカタパルト!」

「クリティカルスキル、凍結砲華フローズンデトネーション!」

「クリティカルスキル、鋼鉄鋭弾(メタルエッジ)!」

「クリティカルスキル、投石投射(ロックショット)。」

「クリティカルスキル、凍結砲華フローズンデトネーション!」

「クリティカルスキル、業火電磁砲カタストロフィーレールガン!」


 そうして私たちは、思い思いに上空の魔砲獣の群体めがけて砲撃をしまくったわ!


 見たところ随伴している中国の列車魔砲はまだ動いていなかったから。


 ここで私たちが魔砲獣を殲滅すれば、あのお客様にアピールできるチャンスよ――


「……クリティカルスキル、黒影魔忍(シャドウマギウス)!」

「!? きゃあ!」

「な、何これ!?」


 と、その時だったわ。

 突然空からエネルギー弾が降って湧き、私たちの上星号に着弾したわ!


「く……列車魔砲被弾! 損害は軽微だが……じ、十一時の方向より魔砲獣が飛来したことを目視にて確認!」


 監視官も慌てられた様子で、私たちにお知らせしてくれたわ。

 で、でも目視で?


 レーダーはどうなっていたんですか?

 私たちもそう思い、目視で十一時の方向を確認すると。


 何とそこには、暗黒エネルギー――恐らくは地下鉄道のシャドウ――に覆われた魔砲獣と思われる影が!


 更にそれに加えて、魔砲獣は二手に分かれて私たちを襲った?


「こ、これって……魔砲獣たちが!?」

「作戦行動……いや、それだけじゃあないねえ!」


 魔砲獣たちはあのブレッシングレイン街の戦いでも作戦行動――とまではいかないけど、群れで役割分担しながら行動しいたわ!


 だから今更、彼らが連携プレーを取ったからといってそれ自体を問題にすべきじゃないのかもしれないけど。


 今エネルギー弾は、確実にあの魔砲獣――恐らくはシャドウの魔砲戦車を脚で抱えている――から放たれた。


 この状態はまるで、地下鉄道と連携プレーをしているようでさえあるわ!


 魔砲獣が、人と連携する?

 そんな、まさか……


 そんなこと、あり得るんですか?

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