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#16 決着は雨の中

「これは……ふん、またも雨か! またアメリカか?」

「いや、違うわこれは……森よ! 森の起こす現象だわ!」

「何? ……そうか、しまった!」


 シャドウとサンドは、ようやく私たちの――より厳密には利澤先輩のだけど――策略に気づいたわ!


 そう、この雨は。

 魔砲獣たちが作った森が引き起こす、超常現象よ!


 本来なら砂漠や荒野に森がちょっとできた程度じゃ起こらないはずの、こんな豪雨。


 これならあなたたちの力も、無力化されるって算段よ!


「そろそろあたしの作戦に気づいただろ……だがお生憎様! 既に台風の目は、あたしの目が捉えてんだよ!」

「!? く、サンド!」


 利澤先輩は、そう叫ぶや。


「クリティカルスキル、豪雷撃投射砲サンダリングカタパルト!」


 やはり自分の砲塔から光線を放ち、雨で砂嵐が晴れて来たことで見えて来た台風の目――もとい、砂嵐の発生源であるサンドの魔砲戦車めがけてそれを刀の如く振りかぶったわ!


 シャドウとは違ってサンドの魔砲戦車は、砂嵐だけが隠れ蓑だったから今それが無効化されて丸見えなのよ!


 さあ、これで――


「……クリティカルスキル、黒影魔忍(シャドウマギウス)!」

「ぐっ!? これは!」


 と、思ったらシャドウの奴!

 暗黒エネルギーの火線を利澤先輩の光線にぶつけてきたわ。


 利澤先輩の"光"線砲と、シャドウ――"影"のエネルギー砲。

 そう、お分かりかしら?


 シャドウは利澤先輩と属性が逆の自分の攻撃で、先輩の攻撃を無効化する算段よ!


「シャドウ……」

「さあサンド! これで今回の借りを返させてもらう! ついでに……あんたらにも借りを返すよ、上星学園の連中!」

「ぐっ……もう勝った気でいるとはまたまたむかつかせてくれるねえ!」


 シャドウの言葉に、利澤先輩も苛立ち。

 負けじと、光線砲の威力を強めているわ!


「神奈ちゃん、私も! クリティカルスキル、業火電磁砲カタストロフィーレールガン!」

「ま、待ちなさい火南……いえ、そうよやっちゃいなさい!」

「ぐああ!」

「おうや火南……随分と、また派手にあたしの出番食ってくれるじゃないかい!」


 いきなり自車の砲をぶっ放した火南香乃音に、私は声を上げかけるけど。


 すみません利澤先輩、でももうここまでやって下さっただけでも十分なんです!


「ぐっ……またお前か!」


 あらら、撃たれたシャドウは。

 また、火南香乃音への怒りを滾らせるわ!


「さあ、まだまだ行っくよー! クリティカルスキル、業火電磁砲カタストロフィーレールガン!」

「ぐっ!」

「くっ、シャドウ!」


 って、いや火南香乃音?

 も、もうそんなに撃ちまくらなくていいのよ!


「まだまだ、行、っく、よ……クリティカルスキル……」


 え?

 ひ、火南香乃音……?


 そうだわ!

 私は何となく、火南香乃音のユーザーインターフェイスを開いてみたわ。


 名前:火南香乃音

 年齢:15歳

 グレード:1

 ジョブ:魔砲使い(ウィッチ)

 スキル:火炎弾発射

 クリティカルスキル:業火電磁砲カタストロフィーレールガン


 装備

 零式三十七ミリ戦車砲

 新全零式魔砲戦車


 ザザザ!


 ……え?


 クリティカルスキル:|業■電磁□《カタ#ロフ-レー◯ガン》


 何と私が見ている間に、彼女のユーザーインターフェイスにはノイズが入り表示が揺らいで――


「……クリティカルスキル、竜豪炎電磁砲カタストロフィードラゴレールガン!」


 クリティカルスキル:竜豪炎電磁砲カタストロフィードラゴレールガン


 え? ええ!?


 な、何と火南香乃音は自車からまた砲撃を放ったけれど。


 それはまるで、生きているように唸り。

 やがてそれは、シャドウの所まで到達すると――


「きゃあ!」

「ぐうあ! な、何だこれは!?」


 何と、これまた生きているように。


 シャドウやサンドに向けて、そこから小さな火球の数々を吐き出して行くわ!


「な、何なんだいこれ?」

「ひ、火南さん?」

「火南?」

「クリティカル、スキル……」


 いや、ひ、火南香乃音も何か変だわ!

 まあ、いつも変といえば変なんだけど。


 まるでうわ言のように、尚もスキルの名前を唱え続ける。


「これはもしや、ワームと同じ……? だとしたらヤバい! サンド、ここは引くぞ!」

「え? ち、ちょっとシャドウ」

「クリティカルスキル、黒影魔忍(シャドウマギウス)!」


 あら、シャドウは!


 そんな火南香乃音に怖気付いたのか、暗黒エネルギーで自分自身やサンドを覆ったわ!


 ふん、今は昼間よ!

 そんなの無駄だわ!


 ……と、言いたいところだけれど。


 皮肉にも、さっきは私たちを助けてくれた豪雨がシャドウたちのいい隠れ蓑になってくれちゃっているわ!



「この決着はしばらくお預けだ……だがそのうちに! 首を洗って待ってるんだな!」


 まったく……そんな捨て台詞を!


「くっ、待ちなよ地下鉄道の奴ら! 雨よ、止め!」

「待ってろ、あたしが追いかける!」


 そんなシャドウたちを、先輩たちは追いかけようとするけど。


「……クリティカルスキル……」

「きゃあ!!」

「く……火南! あんた何やってんだい!」


 ひ、火南香乃音!

 あんた何やってんのよ、敵も味方もなく攻撃しまくって!


「……クリティカルスキル……きゃっ!」

「! こ、攻撃が止んだ?」


 と、思ったら。

 突然火南香乃音は攻撃を止めて――言い方が適切なのか分からないけど――正気に戻った、という感じになったわ。


「間に合ったようだな……火南君を私の車掌権限で持ってシステムから強制ログアウトさせた! すまないが利澤君たち、彼女を自分たちの魔砲戦車で牽引してやってくれ!」

「り、了解!!」


 か、風向井監視官!

 そうですか、火南香乃音を……


 ありがとうございます!

 ……だけど。


 クリティカルスキル:|業■電磁□《カタ#ロフ-レー◯ガン》


 私はさっきの火南香乃音のステータス表示を思い出し、首を捻ったわ。


 あれは、一体――


 ◆◇


「よかったっすね、アメリカが譲ってくれる形であの森の周辺が手に入って。」

「か、釜石君か……ああ、そうだな。」


 その少し後、私たちの母艦といえる列車魔砲・上星号の司令室では。


 釜石さんと監視官が、そう話しているわ。

 そう、なんだかんだで結局あの森周辺は私たちの領土になりました!


「しかし、今日は危なかった……警戒はしていたが予想以上に早かった、火南君の覚醒は。」

「ええ……」


 と、それを喜ぶ暇もなく。

 そう、火南香乃音のあの暴走。


 監視官、あれは一体……


「こちら利澤! 監視官、第一戦車隊は車体と搭乗員いずれも収容完了です!」

「ああ、ありがとう。……さあ、上星学園街へ帰還する!」


 だけど、そんな疑問は置き去りにしたまま。

 上星号は、街への帰路を急ぐのでした――

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