#10 鋼の魔砲少女/岩の魔砲少女
「あなた、確か……火南さん?」
「そ! さあ……一緒に片しちゃお!」
魔砲獣の襲撃によりできた森、周辺の一角で。
相変わらずというべきかしら火南香乃音は、馴れ馴れしく石見姉妹に協力を持ちかけるけど。
「ふん、何あなた? 私たちあなたの助けなんていらないのよ、ほらさっさとどこへなりと失せなさいよ!」
……あらあら、まあやっぱり。
いくら火南香乃音相手でも、それは言い過ぎじゃない?って言い方で石見姉妹――いえ、姉の鉱美がそう告げたわ。
「ち、ちょっと鉱美!」
「そんなの、間違ってるよ♪」
「……何ですって?」
そしてそして、またまたやっぱりというべきかしら。
火南香乃音は、鉱美に説教垂れ始めたわ!
「あんな沢山の魔砲獣、鉱美ちゃんたちだけで相手できる訳ないよ! 私や比巫里ちゃんや神奈ちゃん、楓華ちゃんの力もなくちゃ!」
「な……う、うるさいわね! そういうのが鬱陶しいってのよ!」
「鉱美、また来る! クリティカルスキル、投石投射。」
「! 美葉……」
そうやってる間にも。
さっきの砲撃で散開してた魔砲獣の群れは体勢を立て直して、こっちに向かって来るわ!
と、その時。
「クリティカルスキル、豪雷撃投射砲!」
「クリティカルスキル、大嵐弾幕!」
「クリティカルスキル、業火電磁砲!」
「!? な……?」
彼女たちから見れば知らない間に、集結していた私たちの各種魔砲戦車から攻撃が撃ちまくられ。
それらは今尚体勢を立て直そうとする魔砲獣たちに、容赦のない攻撃として加えられていく!
◆◇
「ったく……何、あんたたち?」
あらあら、尚も不遜なことに。
一応は助けに来てあげた私たちにも鉱美は、憮然とした顔で接するわ。
「いやあ、確かにあんたたちに一度は任せてあげたんだけどねえ! その口ぶりの割に、この体たらくじゃあねえ。口ほどにもないじゃあないかい?」
「ああ、まったくだな利澤! だからあたしたち先輩は、そりゃあ出来の悪い後輩が気がかりで、いても立ってもいられなくなるじゃねえかなあ!」
「くっ……」
口々に、鉱美に対しては嫌味が。
「……で、でも! いいんですか、こんな一箇所に纏まって! これじゃあ米の学園に抜かされて」
「おやおや、いつから全体の心配できるポジになったんだいあんたは! そういうのは、もっと撃退できるようになってから言うもんだよ?」
「むっ……」
車体越しに聞こえて来る先輩の声に、鉱美はいつも通りの口下手に戻るわ。
まあ、そういうことよ。
言っちゃ悪いかもしれないけど、口ほどにもないって奴ね!
「あ、また魔砲獣たちが来る! クリティカルスキル、業火電磁砲! ……神奈ちゃんも楓華ちゃんも、言い過ぎだよ!」
む、火南香乃音!
まあた、出しゃばって!
「おやおや……クリティカルスキル、豪雷撃投射砲! 何だい何だい、火南! まあ相変わらずなってない先輩への礼儀はともかくも、あたしらはこいつらに本当のこと言ってやってるだけなんだから言い過ぎとは心外だねえ!」
ええ、本当にすみません利澤先輩!
「ああ、そうさ火南! クリティカルスキル、大嵐弾幕! そいつらの体たらく、このくらい言われて当然だと思うが?」
はい、本当にその通りです風間先輩!
「はい、本当にその通りです風間先輩! クリティカルスキル、投石投射。」
「な……み、美葉! あんたまで」
「おや……姉と違って、聞き分けのいい妹じゃあないかい!」
あら、予想外に納得した様子の美葉の方が謝ってくるなんて。
「ええ、先輩の言う通りよ石見姉妹に火南香乃音! クリティカルスキル、凍結砲華! あんたたち、本当に礼儀なってないわ!」
「むう、比巫里ちゃん!」
「向氷さん……ふ、ふん!」
「鉱美……」
私も、先輩たちに倣って自分のクリティカルスキルで魔砲獣たちを迎撃しつつ石見姉妹たちに説教してやってるわ!
「クリティカルスキル、業火電磁砲! いや、そりゃあ私も鉱美ちゃんたちは間違ってると思うけど! 鉱美ちゃんたちはたまたま調子悪いだけで、強いのは間違ってないと思う!」
「! 火南さん……」
「あらあら……何だい火南い! 随分とこいつらの肩持つじゃあないかい!」
ほ、本当に……本当に申し訳ありません利澤先輩!
ま、また私のルームメイトが!
「うん、本当に鉱美ちゃんたちは強いと思ってるもん! だけど……そうだね神奈ちゃん。私たちと協力しないで、鉱美ちゃんたちだけで全部なんとかしようっていうのは間違ってると思う!」
「火南さん……」
「な……ひ、火南さん! あんたどっちの味方なの!?」
む、また火南香乃音はよくわからない言い方して……
こればっかりはあなたに同感よ鉱美!
「う、うん……こ、鉱美! わ、私、火南さんの言う通りだと思う! クリティカルスキル、投石投射。」
「な……美葉! またあんたまで裏切る気?」
あら、また。
美葉が、反旗翻し始めたわ。
「う、裏切りじゃないよ鉱美! だけど……私はただ、仲間と一緒にやった方がいいと思っているだけ!」
「ふん……甘いってのよ、どいつもこいつも! クリティカルスキル、鋼鉄鋭弾!」
美葉の言葉に、鉱美はならばと。
自車から誘導弾を放って、魔砲獣たちを更に葬っていくわ!
さすがに、それで観念したのか。
空中で魔砲獣たちは身を翻し、そのまま撤退していくわ。
「さ、さあ……どうですか! 私が止めを刺しました!」
鉱美は、ぜえぜえと息を切らしながらそう言うけど。
「ああ、確かにね……だけど! 今のは、あたしら全員での超協力プレーでもぎ取った勝利だろう?」
「! え……?」
利澤先輩の言葉に、鉱美は周りを見渡してはっとする。
……はっきり言って遅いわよ!
さっきから、皆で隊列組んで自車駆って攻撃順々に食らわせてたでしょうが!
「こ、鉱美……もう、認めようよ! 私たちだけじゃどうにもならなかった、先輩たちや向氷さんに火南さんにアメリカの皆さんの助けがなきゃできなかった!」
「む……ぐっ!」
ええ、あなたは分かってるわ美葉。
そ、もうアメリカも撃退できたみたいだし。
「わーい! これで、皆の大勝利だね!」
む、火南香乃音!
また調子いいんだから……
まあでも、今回ばかりはそういうことよ!
◆◇
「いやあ、よかったねえ皆! あのオアシスは守れたし、何より……今日は、普段見ない客が二人も来てくれたから!」
その日。
私たちはまた、あの酒場にいたわ。
ママさんの言う、普段見ない客っていうのは勿論。
「は、はじめまして!」
「わ、私たちは! こ、今回だけは来ただけです……その内、来なくなりますから!」
「あら、それは残念だねえ。」
石見姉妹よ。
だけど鉱美、あんたは素直じゃないわね〜!
「そーだよ! そんな寂しいこと言わずに、ね?」
「まあ大丈夫さママも火南も! 多分姉の方は次以降も虚勢はるばっかりで愚痴溜まりまくると思うからさ!」
「な……そ、そんなことありません! ぜ、絶対に次こそ! 一人でもできるって証明しますから!」
あらあら、ますます素直じゃない。
……まあ、それはともかく。
これから私たちには、いよいよ。
今日守っていた森を、米と争奪しないといけないのよね――




