#1 炎と氷の魔砲少女
「すげー、そんなことできるんだ!」
「えへへ、すごいでしょ!」
あれはいつだったか、まだ小さかったころ。
私・向氷比巫里が自分の不思議な力で物を凍らせると、周りの友達は珍しがってくれた。
だけど。
「駄目よ、あの子と遊んじゃ!」
なぜか、その友達の親御さんたちからは白い目で見られた。
なぜか、分からなかった。
◆◇
「おい、何かやってみろよ!」
「やーいやーい、魔女が魔女が!」
「うっ、うっ……」
だけどもう少し、大人になって。
学校で周りの友達から差別されるようになると、そこでようやく分かった。
私は、みんなと悪い意味で違う子なんだってこと。
それで空気読んで、できる限り存在を消そうとしてみた。
それが私が世界に向けてできる、唯一のことだと思ったから。
でも。
「やーい、魔女が魔女が!」
「悔しかったら、何とか言ってみろよ!」
……なんでなの、皆。
私、必死に皆のためにいないふりしようとしてたのに、なんで逸る者として扱おうとするの?
「……うるさい! 皆消えちゃえ!」
「は? ……ぐあ!?」
「ひ、ひいい!」
「お、お前は魔女なんかじゃねえ……化け物だ!」
うるさいうるさい!
魔女? 化け物?
なら、そういう風にふるまってやろうじゃないの!
そうよ……化け物は化け物らしく!
◇◇
「……さあ、そろそろ着くぞ皆!」
「……はい!」
そうして、船の中。
私たち――私と同じく異能力者の少女たち。
俗に魔砲少女と呼ばれているけれど。
各国から集められた娘たちで、皆鎮痛な面持ちをしているわ。
「ふんふん、ふふふん♪」
……約一名、ウキウキしてる奴を除いて。
何で、こいつはこんなに明るいわけ?
なんかツインテールぶんぶん振り回して、うざったい!
「我々がこれから行くのは、新大陸ネオ・パンゲアだ! 諸君も知っての通り、そこは既に開拓団もいるとはいえほぼ未開の地が広がっている。さらには未知の生物もいる! 航空戦力がまったく効かない奴らだ!」
「うっ……」
だけどそんな中でも監視官はまず、私たちにリアルな惨状をお伝えいただいたわ!
「しかし! 奴らは空に適しすぎたのか、空対地の戦いは苦手としている。そこで、我々の出番だ!」
「はい!」
む、ええそうね……。
ここからが、私たちの出番よ!
「……しかし、そんな我々の力をもってしても相変わらず非常に危険な場所であることは改めて強調しておく!」
「……はい!」
「はーい、監視官さん! 質問いいですか?」
「……何だ、火南君?」
その一人だけ場違いに明るい奴―― 火南香乃音はまた場違いなことに、元気よく手なんか挙げちゃってる。
いや、本当によくやるもんね!
「はい! 学校はどんな科に分かれているんですか? 私たちは新大陸のどの辺に行くんですか? etc」
「あ、ああ分かった分かった! ひとまず、一つずつ質問してくれ!」
風向井中監視官はご丁寧にも、全部説明してくれたけど。
私たち、はっきり言ってげんなりよ。
もう、空気読みなさいよね――
◆◇
「防御用の魔砲陣形を組め!」
「了解!」
風向井教官の通信での号令と共に、私たちは乗っている一人乗り戦車・魔砲戦車を駆るわ。
新全二零式魔砲戦車。
この新大陸を制するために開発された、私たち魔砲少女向けの兵器よ。
たちまちキャタピラが唸り、魔砲戦車たちが円形の防御陣形を描く。
これは魔砲陣形――一種の魔法陣であり。
その防御陣形に、今魔法陣が重なって浮かび上がるわ。
近くにアメリカ西部開拓時代を思わせる街を望む、西部鉄道学校法人上星学園。
兵科はそれぞれ、
魔砲使い
多連装火箭使い
光線砲使い
対地空誘導弾使い
魔砲牽引車乗り
魔砲牽引二輪車乗り
に分かれているわ。
その中で私たちは、魔砲使い科なんだけど。
「よし、防御チームは準備万端だな……では攻撃チーム、攻撃してみろ!」
「はい!!」
今私たちは、防御陣形を組むチームと攻撃を浴びせるチームに分かれて模擬戦まがいのことをしているわ。
だけど。
「行くよ……クリティカルスキル、業火電磁砲!」
「!? きゃあ!」
「くっ……こら! 火南君!」
私たちの防御を、一撃で破っちゃったのはあの火南香乃音!
たちまち陣形は乱れ、私たちの魔砲戦車の中にはひっくり返ったものもあったわ。
「あ! ご、ごめんなさい……」
「まったく……君の力は特に強いんだ! 加減しろと何度言ったら分かるんだ!」
「は、はい……」
くっ、火南香乃音……
あんなにフワフワしてるのにこの威力なんて!
もう!
◆◇
「えっと……比巫里ちゃんだよね? よ、よろしく」
「ええ……まあ、精々よろしく。」
そうして、その夜。
私はこの時知ったけど、火南香乃音と同室なのね!
「……あと、ついでに言っときたいことがあるわ。」
「何♪ ……おっと!」
だけど、次には。
私は火南香乃音めがけて、壁ドンしたわ!
「どうしたの、比巫里ちゃん? 私、女の子に恋する趣味は」
「いいから聞きなさい! ……あんた、人一倍力が強いだか何だか知らないけど、調子に乗ってんじゃないわよ?」
私は火南香乃音に説教垂れた。
仕方ないでしょ、この娘には誰かが言ってやらないといけないんだから!
「え〜? 調子になんて」
「それを調子に乗ってるって言ってんの! まああんた一人がヘマして損害になるんだったらまだいいけど……あたしたちまで巻き込まないでよ! いいわね?」
「はあい♪」
はーあ、まったく……
まあ伝わってないようだけど、まあいいわ!