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第31話

 話が長くなりそうな様子を察して、アーシャがお茶を淹れに席を立った。

 よく解っている。

 今、頭の中は疑問だらけだ。


「魔族の国の方が色々と発展しているとは聞いていたけど……舞台もそうなんだ?」

「はい。舞台装置や派手な演出、音楽の作り方やダンスなども、この国よりも発展しています。舞台演出に最新魔法を取り入れられるというのもありますし……」


 そうか。単純に技術的に使えるものが多いとそうなるよね。

 今日のラヅさんたちの舞台でも光の演出や音の演出、舞台が動いたり背景が変わったりって言うのは、現代の舞台なら見慣れているけど、この世界の技術のレベルで言うと……この国の生活の感じからは進んでいるように思った。


「技術面だけでなく、国……社会がエンターテイメントに向いているというのもあります」

「エンターテイメントに向いている? 国民がエンタメ好きってこと?」


 日本のクールジャパン的な?

 文化が根付いているというか……でも、この国も充分エンタメを楽しむ文化は根付いているよね。

 

「そうですね……エンターテイメントが好きともいえますが、その背景には魔族の国全体が魔力を上手く使った社会を形成しているので、単純作業はほとんど魔術化されています。そのお陰でエンターテイメントなどのクリエイティブ職に就く魔族が増えていますし発展もしています」

「えーっと……単純な作業は人手が足りているからってこと?」

「はい」


 ……AIとか機械が進化した国みたい。

 元の世界でもそういう心配されていた。「機械化が進んだら何年か後には仕事が減る! ●●という職業は無くなる!」って。

 魔族の国、そのレベルにいるってことか。

 これ……めちゃくちゃ進んでない?

 

「劇団の数も多いですし、この国ではしていないようなパフォーマンスも多いです。私も実際に観たことは少ないのですが」

「発展しているのに? 魔族の劇団ってこっちの国に公演に来ないの? それか、こっちの人が魔族の国に観に行くとか」

「それは……」


 ナダールが少し答え難そうにしていると、お茶のポットを乗せたトレイと共にアーシャがソファに戻ってきた。


「ちょっと感性が合わないんですよね~」

「感性? ……もしかして、見た目が合わない?」


 魔族の国の劇団と聞いて私が最初に感じたことを尋ねてみると、アーシャがお茶をカップに注ぎながら頷いた。


「そうです。ゴブリンとかオーガーって、ヒューマンからするとあまり見分けがつかないんですよ。どの人が美形の王子様ゴブリンでどの人が人相の悪い悪者ゴブリンか。直感的に分からないんですよね。あと……大変失礼ではあるんですが、ヒューマンの感性だとゴブリンさんはみんな、その……あまり美形には感じられなくて」

「あー……」

「あと、オーガーさんは全員強そうに見えるのに、『彼は華奢なか弱いオーガー』と言われると……舞台を無条件で楽しむのは難しいです」

「なるほどね」


 逆にゴブリンやオーガーからすれば人間の美醜が見分けられなさそうだし、全員ひょろひょろの頼りない外見に見えてそう。

 これはどうにもならないか。


「じゃあ、逆にラヅさんも苦労したんじゃないの? ヒューマンには美形って思われる外見だけど、向こうでは……?」

「いえ、ラヅは向こうでも人気だったようですよ」

「え? あ、そうなの?」


 あのレベルの美形は、種族の枠を超えて美形なのか……。


「はい。確かにこの国のように手放しで全員が美形と認めてくれるわけではないのですが……魔族の国は非常に多くの種族がいるので、技術があり、個性を活かせていればファンがつくようです」

「種族……確かに個性的にはなりそうだけど……」


 以前聴いた話では、私がパっと思いつくようなファンタジーの定番種族はほとんど存在しているって言っていた。

 羽が生えた種族から半分馬の種族、大柄、小柄……個性的という言葉でおさまらないくらい個性的だと思う。


「種族ごとの特長が幅広いので、個性を尊重する多様性社会なんです。そのため、舞台でも役者や役の個性を生かした演出が多くなったようです」


 個性に多様性……技術的な部分だけじゃなくて、精神的な部分でもなんとなく発展している気が……あれ? ゴブリンとかって私の乏しい知識では知能が低いんじゃ……? いや、ゴブリン以外もいるんだろうけど。

 だめだな……詳しくないつもりだけど、ファンタジー偏見みたいなのがかかってしまっている。


「魔族の国で個性を生かした演出を学んだので、本日観たような、役や役者の個性を引き出した舞台を作れるようになった……と、聞いています」

「そういうことか……」

「舞台装置の一部も魔族の国で作られたものを持ってきていますし、今回の舞台は音楽も魔族の作曲家に作ってもらっています」

「あ、知っています! 有名なトロールの方ですよね? 私の好きな劇団も最近あの方の曲を使う様になってパフォーマンスが華やかになったんです」


 トロール……聞き覚えあるけどなんだっけ? あの北欧の有名キャラもトロールだった? 違う?

 それにしても……


「アーシャも好きな劇団があるの?」


 ラヅさんたちにあまり食いついていなかったから、てっきり舞台に興味がないんだと思っていた。

 劇場に居たのも、アーシャよりもう少しだけ年上の人が多かったし。


「ありますよ~。私が好きなのは『美少女劇団6×6』……6×6と書いてロクロックと読みます」

「美少女……女の子ばかりの劇団ってこと?」

「はい! かわいい女の子六人組で、舞台や衣装がとにかくかわいくてメルヘンチックで……お芝居はちょっと下手なんですが……夢の国にいるような気分にさせてくれるんです」

「最近流行の劇団ですね。男性のファンが七割。女性ファンが三割ほどで、他の劇団に比べて観客の平均年齢が低い劇団です」


 まぁ、そうか。

 イケメンいっぱいの劇団があるなら、美少女いっぱいも劇団もあるよね?

 かわいいメルヘンチックな舞台か……それはそれで気になる!

 ……気になるけど、それよりも今は……。


「なるほどね、なんとなく解った。ありがとう」


 二人にお礼を言って、飲みかけのカップを片手に立ちあがり、書きかけのシナリオを置いたままの机へ向かった。


 この国を発展させないといけない立場としては、この国よりもあらゆる面で発展していると解った魔族の国はとても気になる。

 その魔族の国の技術やノウハウを取り入れた舞台は、かなり完成されたもので舞台は好きだけど素人の私が関わったからと言って、ものすごい発展があるとも思えない。


 でもね


「イケメンの個性を生かすのは私、得意なんだ」

「……ミヤコ様?」


 これでも少女漫画家でイケメン好き。

 イケメンキャラをどれだけ描いてきたか……イケメンアイドルや舞台をどれだけ観てきたか……。


「よし……! 私がこの世界の舞台を発展させる!」


 サルヴァトーレさんの情熱に比べればまだまだかもしれないけど、今日の舞台を観て解った。

 思い出したと言う方が正解かもしれない。

 私……


 やっぱりイケメンがめちゃくちゃ好きだ。



読んで頂きありがとうございます!

仕事が立て込んでいて、一時的に更新ペースが落ちるかもしれません。

折角読んで頂いているのにすみません。

なるべく週1更新キープできるように頑張ります!

続きも読んで頂けるととても嬉しいです!!

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