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第29話

 緞帳が上がるのと同時に、客席と舞台の間に並べられた椅子に、楽器を持った人たちがやってきた。

 生バンド付か!

 サックスみたいな笛? ギターのようなチェロのような弦楽器? 木琴……でも素手っぽい。

 ドラムのような大小さまざまな太鼓、横笛もいるな。

 遠くて詳しくは解らないけど、他にもいくつか楽器がありそうだし、どの楽器も二~三人ずついる。

 なかなかの楽団だよね。これの生演奏って豪華!


「あれがラヅです」

 

 ナダールがコソっと教えてくれて舞台へと視線を向けると、楽団を観察している間に緞帳はあがりきっていて、舞台の全貌が見えた。

 まだ薄暗い大きな舞台の中には、横幅いっぱいに階段上のセットが置かれていて、その後ろには風景ではなくキラキラと光が……スクリーンに映っている感じ?

 階段の中央に立ってピンスポットライトがあたっているラヅさんの衣装も、丈の長い白いスーツのような形ではあるけど、宝石でも付いているのかなって感じでキラキラ輝いている。

 なんだろう……なんか既視感がある。

 いや、でもそんな。


「さあ! 五本の剣よ、ここに集え!」


 静まり返った劇場内にラヅさんのセリフが響き渡った瞬間、照明が明るくなり、楽団が音楽を奏で始めた。

 曲調としてはちょっとハードなクラシック?

 ジャンル分けし難いけど……ヨーロッパっぽい異世界が舞台のダークファンタジー深夜アニメの主題歌でありそうな……RPGのボス戦で流れそうな……思ったよりハードだけど、意外と耳馴染みはいい。

 ふんふん。まずは歌から始まるんだ?

 ラヅさん、歌やダンスも上手いって出版社の社長さんが言っていたし、演劇よりはミュージカルなのかな……?

 あ、他の俳優さんも出てきた。

 おぉ、大きな剣。ファンタジーっぽいな。

 そういえば今回のストーリーは、ラヅさんのセリフやタイトルの通り、「伝説の剣を持っている五人の勇者を集めて、悪魔を倒す」という、この国の古典的物語を現代風にアレンジしたものらしい。

 元の世界で言う「桃太郎」とか「西遊記」に近いのかな……パンフレットのあらすじは文字だけだからなんとなくだけど。


「五の剣、ブラック」


 下手から出てきた、長い黒髪で長身のクール系イケメンが剣を構えて声を上げると、客席から「キャーァァァァァァ!」という歓声と拍手が上がった。

 横を見ると、ナダールたちも拍手をしているので私もそれに倣う。

 役者が出てきたら拍手をする感じ? この歓声とイケメン具合からいって、人気の俳優さんかな。

 ちなみに、イケメンの衣装はラヅさんと同じ形のキラキラした丈が長いスーツで、色は黒だ。


「四の剣、ブルー」


 また歓声と拍手がすごい。

 爽やかな笑顔の青い短髪のイケメン。服は同じく……青。


「三の剣、レッド」

「二の剣、イエロー」


 拍手のタイミング、もう覚えた。

 ややマッチョなイケメンと、可愛い感じのイケメン。

 服はそれぞれ赤と黄色。


「そして一の剣、ホワイト」


 ラヅさんが名乗りを上げた瞬間、ここまでで一番の大きな歓声が上がって、舞台全体が明るくなり、音楽が一層盛り上がる。

 そして全員でカッコイイキメポーズをとり、客席からはまた割れんばかりの拍手で……。

 

 なんか……

 なんだろう……

 ちょっとむずがゆいというか、なんか、若干ダサイと思わなくもないんだけど……

 でも、ダサイと感じるってことは見慣れているものであるってことで……そう、うん。これ……

 

 わかる。

 

 まだ、たったこれだけなのに。

 始まって三分くらいなのに。

 このノリ、この舞台の楽しみ方、わかった気がする。

 無理やりこの世界の物を元の世界のコンテンツに当てはめることも無いんだろうけど。

 これはアレ。

 

 配色が決まっているヒーローが戦う戦隊ショー!

 メンバーカラーが決まっているアイドルのコンサート!

 エンタメ寄りの2.5次元舞台!


 ……この三つを混ぜてキラキラを増量した感じ。


 あぁ、ほら、キャラ名みたいなのを名乗った後は、オープニングってことかな?

 激しいダンスと歌のパフォーマンス……の合間に客席へのキメポーズ! 指差し! 投げキッス! ウインク!


「僕の名前は!?」

「「「「「ホワイト~!」」」」」」」


 コールアンドレスポンス!

 役者名じゃなくて役の名前なんだな。

 なんとなく元の世界なら本名を叫びそうなところだけど……っ、二階席に向けてもウインクしてくる……遠いのに破壊力すごいよラヅさん!!!!

 うっ、他の人も……! あぁ、黒い人結構好み……いや、流し目っぽいその視線の、だめ、うっわ……。

 この人たち、やばい。これはヤバイ。

 好きな奴。

 好き。

 もう、これ、アイドルだよね……?

 私がアドバイスしなくても普通にアイドルだよ……。

 ほら、前の方の席だけだけど、紙みたいのを手に持った人たちがいるし。

 アレ、団扇みたいなものだよね?

 コールも手拍子も、客も慣れてる感じがする。

 会場に一体感がある。

 歌やダンスのレベルが高いだけじゃなくて、きちんと客席へ意識を向ける表情とか仕草とか……役者じゃない。アイドルだ。この人たち。自分のイケメンぶりを理解していて、それをどう見せたら客が喜ぶかきちんと理解しているプロ集団だ。ラヅさん以外も全員そうだ。


 そうと解れば


 思い切り楽しむしかない!!!!!!

 



読んで頂きありがとうございます!

続きは1週間程度で更新予定です。

読んで頂けると嬉しいです。


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ありがとうございます!!

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