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第26話


「誤解しないでくださいね? サルヴァトーレはちゃんとこの国の役に立ったんですよ? 女性だけじゃなくて、料理に対しても真剣に向き合う男だったので……」


 ラヅさんがフォローすればフォローするほど、うさん臭く感じるけど……最終的にはこの国の人の大半が感謝して元の世界に戻れたんだから、料理に関してはちゃんとしてたんだよね?


「順を追って説明したほうが解りやすいと思うので、少し長くなりますが俺とサルヴァトーレの出会いからお話していいですか?」

「もちろんです。お願いします」


 私が頷くと、ラヅさんはワインのようなお酒で喉を潤し、少し考えてからゆっくり口を開いた。


「俺がサルヴァトーレのことを知ったのは、他の国民と同じで新聞でした。久しぶりの救世主様が来られたと。ただその時は名前も年齢も性別も、どんな特技があるかも書かれていなくて、ただ『来られたんだ』としか思っていませんでした」

「ミヤコ様が来られた時も、似たような報道でしたね」

「へ~。そうだったんだ」


 ナダールの補足で初めて知った。

 まぁ、異世界から誰か来たらニュースになるよね。


「そういえば肖像画が……こちらです」


 ナダールが立ち上がってソファの方へ向かい、サイドボードに並んだ写真立てのような物を一つ手に取って戻ってきた。


「右が若い頃のラヅ、左がサルヴァトーレ様です」

「へ~……」


 肖像画と言うけど、元の世界の似顔絵に近いかな?

 肩を組んだ若い男性二人の自然な笑顔の写実的なモノクロペン画だ。

 ラヅさんは「若い頃」と言われても今とほとんど変わらない。でも、ラヅさんが目の前の姿と似ているから、かなり本物に近い似顔絵みたいだ。

 私ならもう少しうまく描くけど……いや、そこじゃない。

 本題であるサルヴァトーレさんの姿は……長めの髪をゆるく後ろに流して一つに結んでいて……


「あー……すごくイタリア人って感じがする」


 まつげが長く彫が深い、顔のパーツ一つ一つの主張が激しい、かっこいいけど私にはちょっとクドい、三〇代前半くらいの細いけどガッシリした印象の男性だった。

 少し格好つけた「ニヒル」という表現が似合う表情も、形を整えられた顎髭も、胸元が大きく開いたシャツも、私の頭の中にあるイタリア系の色男そのもの。

 女好きの中でも、チャラ男とかパリピって言うより、色気ムンムンの色男。

 これでラヅさんの話が色々と腑に落ちたと言うか、イメージがしっかり湧いた。

 それにしても……


「お話は聞いていましたが、すごく仲が良いんですね」


 肩を組んで似顔絵を描いてもらうって結構な距離感だよね?

 救世主とこの世界の人で、ここまで仲良しになれるんだ。

 私の周りの人はみんな良い人ばかりだけど、どこかよそよそしいと言うか……尊敬というか……目上の人への態度って感じでなかなか気安い関係は作れていないから、ちょっと羨ましい。


「救世主様と親友なんて言うと怒られてしまいそうですが……俺たちは世界の違いなんて関係なく仲のいい友達だったと思います。気も合ったし、当時の王都周辺はヒューマン以外の種族が少なくて、歳の取り方が俺たちだけ違うと言うのもありました」


 ラヅさんが似顔絵を眺める視線は懐かしそうで、少し寂しそうで……。

 そうか。エルフとヒューマンのハーフであるラヅさんは、周りの人は歳を取っていくのに、自分だけは若いままなんだよね。

 私もこれから経験するかも知れないと思うと、寂しさがよくわかる。


「俺、見た目がこんな風なのに魔力が少なくて、エルフのコミュニティーには入れなかったんです。最初は悩みましたよ。エルフみたいなのに魔法関係や知識関係の仕事に就く才能が無いなんて……」

「ラヅさん……」


 いつも穏やかでにこやかで、華やかな人生を歩んでいる人だと思ったけど……苦労している人なんだ。

 ……しかもハーフでコミュニティーに馴染めないとか、元の世界で大ファンだったアイドルのタクトくんに通じるものがあって……。


「でも、ありがたいことに子供のころから周りの人がずっと容姿を褒めてくれていたので、容姿を生かした仕事に就こうと思えたんです。それに、若くて体力のある期間が長いから、若い容姿のまま演技も歌もダンスも沢山練習して上達できる。……こんなことができる役者って俺だけですよね? 天職だと思いませんか?」


 くっ……!

 少し寂しそうな顔からの満面の笑顔とウインク、心臓にくる!

 逆境を乗り越えて自分の仕事に一生懸命なところ! 周りの人に喜んでもらおうという姿勢! めちゃくちゃ推しと同じ! 推せる!

 イケメンだからなんとなく芸能人やっています~っていうチャラチャラアイドルとは違う、真摯なところ、本当……だめ……好き……。


「それに、女の子にモテるし」


 ん?


「俺は容姿で、サルヴァトーレは料理で女の子に喜んでもらう。そして二人ともずっと若いまま……いいコンビだと思いませんか?」

「……もしかしてラヅさんも……?」


 あぁ、ちょっと照れた顔がかっこよくて可愛い。キュンとする。

 するけど……。


「実は俺も女の子が大好きで、サルヴァトーレとはナンパ仲間でした」


 あなたもか……!!

読んで頂きありがとうございます!

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続きは1週間程度で更新予定です。

読んで頂けると嬉しいです!!

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