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第14話


 本の出版が決定し、タイアップの服の販売が決まってからの日々は忙しかった。


「契約の前に開業届を役所に提出しないといけないので、この書類とこの書類とこの書類に記入を……」

「出版権の契約書です。読んでサインお願いしますね」

「うちの店の方も契約書です! 読んでサインお願いします!」


 最初はきちんとしていて好感が持てたはずの書類も、数が増えれば面倒でしかない。

 そして次は…


「装丁のデザイン案です。表紙の紙はこれで、タイトル用のインクは……」

「スカートの試作ができました! 監修お願いします!」

「解説ページの最終原稿のチェックをお願いします」

「スカートの獣人用の試作ができました! 監修お願いします!」

「新聞広告のラフができました! 確認お願いします」

「靴下の刺繍ができました! 監修お願いします!」

「書店用の紹介文のあらすじ、これでいいですか?」


 私が作者だから仕方がないけど、こういう「確認」作業、元の世界ならほとんど担当編集者さんがしてくれていたんだけどな……。

 この世界もそういう制度はあるみたいだけど、漫画の舞台である元の世界を知っているのは私だけだから、この作品に関しては私がチェックしないといけない。

 自分で描いたものなのに、何度も何度も見ているとゲシュタルト崩壊が起きるし、立体になると矛盾点というかつじつまが合わない部分もあって……いや、形になっていくのは楽しい。うん、楽しい。すごく楽しい……と自分に言い聞かせながら頑張った。


「店頭ポスター用の絵を……」

「新聞広告用の絵を……」

「紙袋用の絵を……」

「書店に貼るPOP用の絵を……」


 これはね、うん。仕方がないし絵を描くのは楽しい。これは大丈夫。

 でも、発売日がだんだん近づいてくると……


「情報雑誌に宣伝を兼ねたインタビュー記事を載せたいのでお話を聞かせてください!」

「街頭広告が出せることになったので大きめの絵をお願いします!」

「書店に売り込むためのサイン本を二〇……やっぱり三〇冊分お願いします!」

「契約金受け取りのために銀行口座を開設してください」

「新聞にも宣伝を兼ねたインタビュー記事を載せたいのでお話を……」

「役所の人から新規開業者が必ず受ける講習に参加して欲しいと連絡が」

「試作製本が出来上がったので最終チェックと……」


 はぁぁぁぁぁぁキャパオーバー一歩手前!!!

 絵を描くのは大丈夫って言ったけど、自分の身長以上の大きさのアナログ絵なんて、美大の油絵の課題で120号キャンバス埋めた経験が無かったら投げ出していたからね!? 普通の漫画家は多分しないからね!? しかも、それと並行しての苦手な事務作業! 更にコミュ力が試されるインタビュー!

 マジで無理。

 漫画で三日徹夜レベルの忙しさは頑張れるけど、こういう忙しさ、マジで無理。

 しかもここは異世界。社会の仕組みやルールがイマイチ解っていないこの世界での書類やインタビュー。全然頭が働かない。

 ……それでもまぁ、元の世界では一応自分で確定申告していたし、アニメ化の時には色々な会社とやり取りした。

 その経験が生きて何とかなった、かな。

 それに……


「ミヤコ様! 肩こりがひどいとのことなので、お風呂を筋肉が解れる薬湯にしました」

「ミヤコ様。契約書の要点だけまとめておきましたので、これだけ目を通してください」

「ミヤコ様! お米を炊いて握ったもの、作ってみました」

「ミヤコ様。インタビューは事前に質問を送ってもらうようにしました。回答に悩む用でしたらアドバイスいたします」

「ミヤコ様! お菓子ですよ! ほらもうひと頑張り!」

「ミヤコ様。こちらが口座開設に必要な書類です。記入が必要な個所に丸を付けておきました。通帳の使い方もここにまとめています」


 有能過ぎる……!

 メイドとして生活面のサポートや応援をしてくれるアーシャ。

 執事として事務的なことや人とのやりとりをサポートしてくれるナダール。

 メイドと執事っていうか嫁と親?

 やることが多い上にこの世界に慣れていないことで色々とキャパオーバーになりかけていた私が全部スムーズにこなせたのは二人のお陰だ。

 元の世界でもこの二人が居て欲しい。お給料はお城から出ているらしいけどいくらかな……専属でずっと雇いたい。

 そう思いながら忙しくしているうちに、とうとう漫画の発売日がやってきた。



読んで頂きありがとうございます!

続きは2~3日以内に更新予定です。

読んで頂けると嬉しいです!

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