冒険家
まさかさぁ、いるとはさぁ、思わなかったさぁ✨あははは!
私はお化け以外なら怖いもの知らずの冒険家の和雄だ。今年で24歳。嫁さん募集中。好きなタイプの女性は近所にある喫茶店の看板娘の可愛い、あつこちゃん。
「た、隊長! 大変どぇす!」
「そんなに慌ててどうしたの?」部下の田山他五介が血相を変えて飛んで来た。
「隊長、現れたんどぇすよ!」
「何がさ?」
「未確認飛行物体どぇす」
「どわっ、どわっ、どわっはははは。そんなもん、いるわけないじゃろ」
「疑ってます?」
「かなりね」
「じゃあ、隊長、上を見てみそ」
「植?」
「いや、上です。見てみそ」
隊長である私は凛々しく勇ましくカッコよく上を見てみた。
ざっくり言うとだ、本当に馬鹿デカイUFOが「ぷぉ~ん、ぷぉ~ん」と湯豆腐みたいな美味しそうな音を響かせて停滞していた。大きさは30メートルはある灰皿型の胡散臭い作りに似た本物のUFOだった。
「隊長、どうします?」
「何でこんな真上に止まってんの?」
「隊長、危険すぎるので退避しますか?」
「うん、退避だ」
「どうやって退避しますか?」
「ダッシュだ。あそこに森があるだろう? 森までダッシュ」
「隊長、距離にして100メートルはありますよ。逃げ切ることが可能でしょうか?」
「『我が世の辞書に不可能な事はあるけど、やってみろってよ。諦めたらダメ。口だけもダメ。行動あるのみだよん』という言葉を思い出せ」
「隊長、それは誰の言葉でしたか?」
「家の爺ちゃんの言葉だ」
「なるほどな」
「不可能な事はあるけどさ、頑張って立ち向かえという願いを込めた言葉だそうだ」
「ふ~ん。なるへそ」
「森までダッシュだぞ」
「隊長、わかりました」
隊長である私はダッシュした。森までダッシュした。部下は必死に着いてきた。
相変わらず湯豆腐みたいな音を響かせてUFOは着いてきた。頭にきたので隊長である私は部下を先に退避させてから仁王立ちで空を見上げた。
「コラ! あっち行け! シッ、シッ。UFOだからってなぁ、威張るなよな」と隊長である私はUFOに怒鳴った。
「あぉ~ん、あぉ~ん」とUFOは悲しそうな音をして少しずつ遠退いていった。
「何が目的か知らんけど、人間をナメたらダメだよ~う!」と隊長である私は去り行くUFOに警告をした。
「ワカリマシタゴメンナサイ」とUFOのスピーカーらしいものから宇宙人らしい声が聞こえてきた。更には「ワレワレハウチュウジンデアル」という本物の自己紹介の宇宙人ボイスも続けて聞こえてきた。
隊長である私と部下は感激していた。まさか「ワレワレハウチュウジンデアル」を生で聞けるなんてさ。幼い頃から真似ていたフレーズだから感無量だ。
「おい、もう一度、言ってよ」と隊長である私はUFOにお願いしてみた。
「ワレワレハウチュウジンデアル。コワガラセテゴメンネ。ナカヨクシテヨ。ヨロシクネ」とUFOの窓から銀色の肌にやたらとデカイ真っ黒な瞳の宇宙人が手を振って挨拶をしてくれた。友好的な関係を結べそうな予感がした。
「こちらこそ、ヨロシクね」と隊長である私と部下はUFOに向かって手を振り続けた。
宇宙人と友達になれたら嬉しいなぁ。
「あのさ、UFOに乗せてよ」と私は言ってみた。
「メンキョショウハアルノカイ?」と宇宙人が窓を開けて身を乗り出して言った。
「中免とブルドーザーの免許ならあるよ。只今、車の免許を習得中です」と私は免許証を見せた。
「UFOノメンキョショウジャナイトダメナンダワ。ノセテアゲタイケド。ゴメンネ」と宇宙人は両手を合わせて詫びた。
「隊長、僕はUFOの免許証を持っています」と部下の田山他五介が衝撃的なことを言った。
「え~っ!? 何で持っているの?」
「頑張って取りました」
「何処で取ったの?」
「大変でした」と田山他五介は言った。
「どうやって取ったの?」
「いやぁ、本当に大変でしたよ」と田山他五介ははぐらかすばかり。
「他五介よ、どうやってUFOの免許証を取ったのかだけ、教えてくれよ。何処の教習所なの?」
「いやぁ、結構、通うのが大変なんっすよ。お母さんの運転する車の送り迎えがなければ無理でした」と部下の田山他五介は勿体ぶって、ケチケチな切り返し。
「メンキョショウガアルナラノッテイイヨ。タイチョウモノッテイイヨ。イマカラネ、UFOノシタカラ、センコウ(閃光)ヲダスカラ、センコウマデ、イドウシテヨ。チキュウノブンメイ(文明)デイエバ、エレベーターミタイナカンジダカラ。ジンタイニエイキョウハナイカラ、アンシンシテヨ」と宇宙人はOKを出してくれたので私と部下はUFOの真下に行った。
閃光を身体中に浴びるとゆっくりと地面から足が離れた。体が持ち上げられている間、私は自慢げに見せびらかす他五介のUFOの免許証が羨ましくて羨ましくて仕方なかった。
おしまい
アディオス!
(´ゝ∀・`)ノシ