22 館の客
「ありがとうございました。これで、娘も安心して外を出歩くことが出来ます。本当にありがとうございました」
そう何度も何度も頭を下げて、シェラルージェが創った創術品を胸に抱きしめて、お客様は帰っていった。
(ふう、これで娘さんが安心して外に出られるといいなあ)
少し前からシェラルージェと同じくらいの年の娘さんがならず者や暴漢に襲われるということが起きているらしい。
らしいというのは、ここ最近館にやってくるお客様が同じような理由で同じような内容の創術品を求めてきていたからだ。
でも、公ではまだそのような話は聞いたことがなかった。
外聞が悪いから届け出ていないのか、それとも何か思惑があって情報が操作されているのか分からないけれど、そろそろお父様やお兄様に相談した方がいいように思えた。
今日の予約は先ほどのお客様で最後だったので早めに家に帰る支度をすることにした。
***
「お父様、お兄様、お話ししたいことがあります。お時間ございますか?」
シェラルージェが家に着いて程なくしてお父様とお兄様がお帰りになったので、早めに相談しようと声をかけた。
「いいよ、おいで」
「ありがとうございます」
お父様が許可を下さったので、お父様の後に着いていく。
書斎に入ってお父様と向かい合わせに座ると、シェラルージェは一呼吸した。
「お時間をいただきましてありがとうございます」
「いいよ、それよりもどうしたんだい? 何か困ったことでも起きたのかな?」
お父様の推察にシェラルージェは感心した。
「何か、とは言い切れないのですが、館に来るお客様が最近同じような理由で創術品を求めにいらっしゃるのが少し気になりまして、お父様とお兄様にお伝えしようと思いました」
「そう、詳しく聞かせてもらえるかな?」
「はい、始めはふた月前くらいですね。1人のお父様くらいの男性が訪ねていらして、娘が馬車で移動中に何度か事故に巻き込まれるようになったので予防のためにと創術品をお求めになりました」
「ああ、あの方ね」
お兄様がシェラルージェの話を聞いて、書類を取り出すとシェラルージェが言った人物に該当する人がどの方かわかったようだ。
それから、シェラルージェが話していくと、お兄様が手元の書類と照合していった。
「そして、本日創術品をお渡しした方が7人目の方で、私と同じくらいの年の娘さんがならず者に襲われて、その時の恐怖で外出出来なくなったそうです。その為、身を護る防御の付与を付けた創術品をお渡ししました」
「なるほど」
お父様は私の話を聞き終わると、お兄様が抜き出した書類を見ながら考え込んだ。
シェラルージェは気になったことは全て話せたので、後はお父様の指示を待つために前のめりになっていた身体を元に戻し椅子に座り直した。
お兄様もお父様の隣で考え込んでいたけれど、顔を上げるとシェラルージェに提案を持ちかけてきた。
「シェラ、今の話を勉強会の時間にユリウスやカミルにも話してもらえるかな? そして、情報がないか聞いて欲しいんだ。兄様が動くとちょっと目立ってしまうからね」
「分かりました。次に行くときに、ちょうどユリウス兄様達もいらっしゃると言っていたので聞いてみます」
お兄様に返事を返していると、お父様もお兄様の意見に同意してきた。
「そうだね。シェラ、王太子殿下達に聞いてみてもらえるかい。私の方でも調べてみるが、王太子殿下達がどのくらいの情報を得ているのか知りたい」
「分かりました。聞いた内容をまたご報告します」
「頼むよ」
「はい」
お父様とお兄様の態度が今回の事態の深刻さを表しているようで、シェラルージェは不穏な空気を感じていた。




