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第二章

ユキのお腹には大きな傷がある。

それも見るからに無残に、大きなムカデが6匹張り付いているような、生々しく盛り上がった傷跡だ。

生まれつき腸に大きな疾患があって、3歳までに4度以上の手術をし、腸の一部を切除してきた。

もともとケロイド体質なので、その傷跡が今でも大きく醜く残っている。

母親の勝枝は、ユキが物心つくと同時に、まるで暗示にかけるように、繰り返し繰り返し、ユキに言い聞かせてきた。

「お前は絶対普通に結婚は出来ないよ。もしどうしてもするって言うんなら、お見合いして、仲人ぐちで騙スシカナインダカラネ!万が一、男とセックスするはめになったら、いいね!絶対、明るいとこはダメ!間違ってもお腹を見せてはダメよ!わかったね!」

だからユキは、自分のお腹をみるのが嫌いだった。

お腹の傷のことは自分の中ではないことにしてずっと暮らしてきた。

父親似のどちらかといえば男性的な、くっきりした目鼻だちを、自分では(外国の女優みたい)と思い気に入っていたので、顔ばかりみて過ごしてきた。

幸い18歳の今日までに、同性と風呂に入ることもなんとか避け、どうしても一緒に入ることになった時には、できるだけ女の子らしく、恥ずかしそうにして下半身をタオルで隠したりして、他人に気付かれない方法もすっかり上手くなっている。

きっと異性と付き合ってもバレずにすむだろうと、ユキは自分に都合よく考えていた。


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