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第3話



「コッココちゃんーん、ご飯ですよー」

『コケッ』『コケコッ』『コケケッ』


 我ら三体は、ご主人様であるナインフォードお嬢様の呼びかけに、そう答える。


 勇者への復讐を決意した我らだが、たかがコッココがそのままの身で旅に出て強くなるのは限界があった。


 客観的に我らの立場をこの世界の中で見れば、人に飼われる家畜生物であり、この世界にいる魔王や雑魚魔物にすら勝てない貧弱な雑魚だ。


 我らは我らの生と生き様に誇りを持っているが、客観的な視線も持ち合わせている。

 トキワ村よりもはるかに広大であろう世界から見て、我らの力がひどくちっぽけな物であろう事ぐらいは、その時点で理解していたのであった。


 こんな有様で、無策で外の世界に飛び出して行っても、どこぞで野垂れ死ぬのがオチだ。


 なので、我らが知恵を絞って策を考えた、テイマーの人間にテイムされ、そのテイマーの守護獣となるという方法を導き出した。


 守護獣になればその獣の持つ色々な能力が強化され、潜在能力が開花しやすくなるので、元のままで努力するよりかなり成長しやすいのだ。


 幸いにも、アントワーヌ家には冒険者なるという夢を持つ娘がいたので、我らはそぐに彼女を利用させてもらう事にした。


 娘の名前は、ナインフォード・アントワーヌ。

 家族のように共に育ってきた娘だ。


 ナインフォードお嬢様はトキワ村という小さな地域に収まるには、少々場違いなほどの才能を持っていた。


 お嬢様は、優れたテイマーの資質を秘めていた為、それが若手からは冒険者になるべく努力を重ね、トキワ村の周囲に出る動物達をテイムして腕を磨いていた。


 周囲の人間ははそんなお嬢様の夢を知って、微笑ましく想い、どうせ幼いがゆえに考えたひと時の叶わぬ夢だと思い、そっと見守る事にしていたのだが、我らだけは違った。


 血肉と知恵の限りをつくして、お嬢様が現実を見て考えを改めないように、ありとあらゆる手を使って励ましたり、元気づけたり、応援したり、共に研鑽を積んでみせたのだ。


 一時期、村にやってきた強大な野獣に立ち向かい、敗れた事で才能がない事で悩んだりもしたナインフォードお嬢様だが、数年も経てば我らと共にそんな困難も乗り越えてみせ、無事に成長なされた。


 そして、我らコッコが理不尽に虐げられたあの惨劇の日から十年が経った頃。


 それからも数々の壁を乗り越えられたお嬢様は、父親や周囲の人間全てを説得し、とうとう初心者冒険者として旅に出る事になったのだった。


 当然我らも、そんなナインフォードお嬢様にテイムされ、守護獣として旅のお供をする事になった。


「コッココちゃーん、今日も一緒にがんばろうね」

『コケッ!』『コケコッ!』『コケッケ!』


 子供の頃の様にちゃん付けされて呼ばれるのは、少々恰好がつかないが。




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