第七章 春音の思い
「ふぅぅぅ・・・・」
わたし―山ノ井春音は、自分の部屋に戻ると、軍服を第三種に着替えてベッドに倒れこんだ。東亜がわたしの体に上ろうとしてくる。
その頭をよしよししながら、わたしはまた、ため息をついた。
(なんかわたし、最近変だな。)
最近、ヤスといっしょにいるだけで心臓がどきどきしてくる。模擬空戦で敵と向かい合った時も動悸が早くなるけど、それとはちょっと違う感覚。
気取られないように気合で押し込めてきたけど、そろそろ限界かも。
最近では、ヤスの顔を見るだけで顔が赤くなったりしてしまう。もうまともに目も合わせられない。
(もしかしてこれって、ヤスのことが好き・・・・・・いやいや、そんなわけないじゃん!友だちみたいなものだし!そんなに親しくないし!)
でも、ヤスを見ると普通じゃなくなるのは事実で・・・・・・
今は幸い飛行中にこんなふうになることはないけど、もしも飛行中にこんなふうになっちゃったら、隊から落伍してしまう。
(認めたくないけど、本当に好きなのかな・・・)
「ハル~、ちょっと入るよ~。」
ドアを開けて、この空母「翔鶴」の艦魂、翔鶴が入ってきた。
「どうしたの~?浮かない顔して。」
「あ、翔鶴。ちょっと聞いてもらえる?なんか最近わたし、変なの。」
「どんなふうに?」
「なんかね。ヤスのことを見ると胸がドキドキしたり、顔が赤くなったりするの。」
翔鶴がうなずく。
「ほぉほぉ、それで?」
「あと、みやびっていう高校生整備士がこのフネに乗り組んでるじゃない。」
「ああ~、奥谷一整曹ね。」
「みやびはヤスの機体の担当なんだけど、あの二人が話しているのを見るたびにね。なんか心が変な感じになるの。」
翔鶴は黙ってわたしの話を聞くと、口を開いた。
「ハル・・・・・・・・・・」
「何?どうかした。」
「・・・・・・それって!恋っていうやつだよ!」
「え!?な、なに言ってんの翔鶴!」
「だーかーらー、ハルはヤスのことが好き。っていうこと。違う?」
翔鶴がにっこりとほほ笑む。
「いや~、翔鶴うれしいよ。ハルにそんな人ができたなんてね。」
「ウソウソウソ!わたしがヤスになんて絶対あり得ない!」
翔鶴が、にやにや笑いながら言う。
「でも、お似合いの二人だと思うよ。わたしは。」
仕方がない。もういっそ認めちゃおう。
「わたしは、ヤスのことが好きだ・・・・」
口に出すと、一気に楽になった。けど、このままで済むとは思えない。
(このきもち、ヤスに伝えたい。。)
「よし!じゃあこの翔鶴さんが、ヤスの気持ちを確かめてきてあげよう!」
翔鶴は、わたしの手をつかむと、ヤスの部屋に引っ張っていった。
ヤスの部屋の前。
翔鶴がヤスの部屋に入ってく。
「ねぇ!ヤスって、ハルのこと好き?」
(ちょっ、直球すぎるよ!)
「うん、好きだよ。」
(え!?)
「それはLikeのほう?それともLoveのほう?」
翔鶴が声を上げる。
「うーん、どっちもだね。」
(え!?)
「それは、ハルのことを恋愛対象としてみてるってことぉ?」
「おい!いくら階級が大佐で、僕が大尉だからって、そこまで言うか!?普通。」
ヤスが大声を出す。けど、すぐに声を低めた。
「正直言うと、そうなのかな?」
「おほー!」
翔鶴がよくわからない声を出す。
「ありがとね。この会話は録音させてもらったから。後でハルにデータを送っとくよ。」
「ちょ!待て!そんなの送られたら俺の中隊長としての威厳が・・・・・・・」
「じゃあね~!」
翔鶴が部屋から出てきた。そのままわたしの手を握る。
「えいっ!」
きらきらとした何かがわたしたちの周りを包む。そして、それが晴れた時、そこはわたしの部屋だった。
「艦魂の能力『瞬間移動』だよ。使える範囲は限られてるけどね。」
それより・・・と翔鶴は言葉を紡いだ。
「よかったじゃん!ハル!ヤスの気持ちは確かめたからね。後はハルの心次第だよ!」
「わ、わかった。ありがとね、翔鶴。」
「ばいば~い!」
翔鶴が瞬間移動で消える。
(よし!決めた!)
わたしは手元のスマホをつけると、LINEアプリを開いた。
舞鶴に停泊中の空母翔鶴の飛行甲板。下には、青い海が見えている。そこでわたしは、ヤスのことを待っていた。
艦橋根元の搭乗員待機室からヤスが出てきた。いつものラフな第三主軍装じゃなくて、わたしと同じ第一種軍装を着ている。
「どうしたの?急に呼び出して。」
ヤスは、こっちにかけよってきた。
(やっぱり、緊張するな・・・・・・)
でも、ちゃんと伝えないと!
わたしは顔を上げて、ヤスの目をまっすぐ見つめた。息を大きく吸い込む。
「今日は、あなたに言いたいことがあります。」
ヤスがちょっと不思議そうな顔になる。
「神崎保信さん。わたしは、あなたのことが大好きです!わたしと、つきあってください!」
頭を下げて、右手を出した。
ギュっ
右手に、あったかい感触。顔を上げると、ヤスがわたしの右手を握っている。
「僕も、ハルのことが好きだよ。だから、これからは、『飛行機仲間』じゃなくて、『恋人同士』ということだね。よろしくお願いします。」
わたしの恋が、叶った瞬間だった。
ヤスとハルがお互いの手を握りしめているすぐそばに駐機してある九七艦攻。その風防の中に、三人の人影。
「まったく、やっとくっついたよ。なかなか告白しなかったし。お互いに好きなのはわかってるのに。」
中席に座り、呟いたのは、艦爆パイロットの山本千絵だ。
「ヘタレリア充!」
かな~り辛辣な口調で呟いたのは、その後席の村田成美だ。今は飛行機に乗っているので、人格が変わっている。
「まぁ、無事にくっついてよかったんじゃないの?」
一番前の席に座った栗田健春が、二人を見て言った。
「二人なら、幸せになれると、僕は思うよ。」
本日の次回予告は、春音が自分の想いを公表した作者にキレて作者の家を爆撃しに向かったため、中止とさせていただきます・・・・・・・・・・・・・っておい!何してんだよ!
ヴァララララララ・・・・・・・・・(エンジン音)
春音「チェスト!七日町糸オォォォォォォォォ!」
ドッカーン!
作者、無事死亡




