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第三章 ミズーリと武蔵(&わたしの日本派遣)

 三月十日。ここは、ハワイの真珠湾、今、二隻の船が整備を終えて、出港しようとしている。

 一隻は、灰色と赤に塗られ、艦首に日本の皇帝一族の紋章である「菊の御紋」をつけた戦艦だ。この艦の名は「武蔵」。大和と並び、世界最大の戦艦だ。ちなみに、大和も今、イベントでこっちに来てて、出港に向けて整備中だ。

 もう一隻は、全体が灰色に塗られた戦艦だ。この艦の名は「ミズーリ」。太平洋戦争が終わった時、東京湾上のこの艦で、終戦の協定が結ばれた、記念すべき艦だ。

  どうも、申し遅れました。アメリカ海軍太平洋艦隊中佐、アマンダ・サトウです。歳は、二十五歳。Nice to meet you.

 サトウっていうサブネームからもわかると思うけど、日系人だ。おかげで、日本語はほぼマスターしている。

 日本語をマスターしてるおかげか、日系人で日本人に親しまれやすいからか、わたしは、今度の「真珠湾攻撃九十周年記念式典」のアメリカ側代表に選ばれてしまった。そして、今度、武蔵といっしょに日本に行くことになっちゃった。Oh my god~.

 日本は嫌いじゃない、わたしの祖先の故国だし、特に日本のAnimeは最高だ。 

 でも、軍務で行くということは、アキハバラもハラジュクも「You are name(君の名は。)」の舞台めぐりにも行けないってことじゃない。何回も言うけどOh my god!

 とにかく、日本での仕事の準備をして、わたしは武蔵に乗り込んだのだった。








 呉と舞鶴での相談を終わって、今度は、桑折だ。

「ほんとに・・・・・・ここ?」

 言われたところは、日本の桑折町にある零戦ミュージアム。上官が言うには、「最強の零戦軍団がいる」らしい。その名も、「カンザキ・ゼロ・ファイターズ」。いかにも強そうだ。

 でも、ここの中は、家族連れや老人たちでにぎわっていて、空軍基地っぽい雰囲気はない。ほんとうにこんなとこに最強のゼロ・ファイターズがいるのかな?

 そもそも、Zekeジーク(零戦の連合軍側コードネーム)って、もうすでに旧式化してるから、最新のジェット機にはかなうはずがない。

「おっと、下がってください。」

 構内の道路のようなところに出たわたしを係の人が止める。白髪の優しそうなおじいさんだ。その脇には、まだ十代のかわいらしい女の子もいる。

「そろそろ、零が着陸しますんで。」

 よく見ると、滑走路の反対側の柵の向こうには、たくさんの人だかりができている。

「今からあっちに行っても危ないですから、ここで待っててください。」

 そういうと、その人は、手に持っていた白いフラッグを振った。

 ヴァルルルルル

 エンジン音が聞こえて、滑走路と平行に二機の飛行機が飛んできた。そのまま旋回して、降下する。

 ギャッ、ガッタタタタタ

 飴色に塗装された機体が日の光を浴びて輝いている。

「Bautiful・・・・」

 ここに来た目的も思わず忘れてしまった。ハッと我に返る。

 ある人に会いに来たんだ。名前は確かヤスノブ・カンザキとハルネ・ヤマノイだったはず。

 わたしは、となりのスタッフさんを見る。よし、この人にきいてみよう。

「あのー、神崎保信さんと山ノ井春音さんに用があって来た、アマンダ・サトウという者なんですが・・・」

「あ、ヤスに用があって来たんですか。じゃあ、あの先頭の零戦です。春音は、あの八重桜がペイントしてある機体ですよ。」

 ガコン

 ちょうど、風防が開いて、パイロットが下りてくるところだった。

「あのー、すいません。神崎保信さんですよね?ちょっとお話が・・・・」

 そのパイロットは、ゴーグルを外すと、こっちを見た。キリッとした顔、目の奥には、小さく炎が燃えていた。内なる闘志を秘めた目だ。

 目の中の炎が消えた。一気に優しい顔になる。

「はい、わたしが神崎保信です。何か御用でしょうか?」

 彼は、右手を額に当てて、日本海軍式の敬礼をした。

「わたしはアメリカ海軍中佐、アマンダ・サトウです。神崎保信さんと山ノ井春音さんにお話が合ってまいりました。事前にアポイントメントはとっておいたのですが・・・・」

 わたしは、アメリカ式の敬礼をした。

「ああ、少し早かったですね。まぁ、立ち話もあれですから、中でお茶でもどうですか?」

 八重桜の機体のパイロットも下りてくる。この人が、山ノ井春音さんだろう。

 彼女は、飛行帽とゴーグルをとって小脇に挟むと、飛行グローブをとって腰のベルトにねじ込んだ。

 建物の中、展示エリアを抜ける。壁には、たくさんの人の顔写真が飾ってあり、その上に、「日本のエースパイロットたち」という文字が書いてあった。外につながる大きな扉の前には、Georgeジョージ(紫電改のこと)が置いてあったりもする。

 その奥の一角に、小さなカフェテリアがあった。保信さんと春音さんは、なれた様子で自分の分を注文する。わたしも、アイスコーヒーを注文して、席についた。

「では、これが日程です・・・・・何か不都合があったら教えてください。」

 書類を二人に渡す。二人は、紙の上の文字に目を走らせると、顔を上げた。

「まぁ、おおむねこのままでいいですよ。ただ、発艦の時刻をもう少し前にずらしてもらえませんか?」

 保信さんが言う。Why?アメリカ海軍うちの空母を使った予行練習では、それでも十分だったけど。

「旧日本軍の空母は、カタパルトを装備してないんです。だから、発艦に時間がかかるんです。」

 春音さんが補足した。

 Oh~.そういうことか。

「わかりました。調節します。」

「あと、参加するのは、全員かなりのエースパイロットです。絶対に、成功させますよ。」

 保信さんが、自信ありげな声で言った。

 これで、予定してたことは終了。そんな時、春音さんが声をかけてきた。

「アマンダさん、零戦に乗ってみませんか?」

「What?」

「零戦に乗って、空を飛びたくありませんか?」

「はい・・・でも、零戦は一人乗りですよね?」

 春音さんは、にやにや笑いながら、窓の外の零戦の胴体を指さした。

「まさか、胴体の中に乗れってことじゃ・・・・」

「そのまさかですよ・・・・」

 え、えぇ~!

「・・・というのは冗談で。」

 え?冗談だったんですか?でも、さっきの目は真剣(マジ)でしたよ。

「練習用の零式練戦がありますから、それに乗りましょう。」

「はい!」






 春音さんは、「女性更衣室」と書かれた部屋までわたしを案内すると、カーキ色の布の塊を持ってきた。

「アマンダさん、服は何サイズですか?」

「えーっと、Sかな?」

「だったら・・・・・これですね。」

 春音さんは、旧日本海軍の略式軍服と飛行服を広げた。

「軍服を着た上から、このツナギの飛行服を着てください。わたしも手伝いますので・・・」

 飛行服を身に着けた後、春音さんについて滑走路に向かう。

 止めてあった零式練習戦闘機に乗り込んだ。春音さんが前席、わたしが後席だ。

「戦闘機は乗ったことありますか?」

 前から、春音さんの声が聞こえてくる。

「いえ、わたしは駆逐艦一筋なので・・・」

「じゃあ、エンジン始動はわたしがやりますね。」

 そう言うと、春音さんは手早くスイッチを操作し、コックピットの外に声をかけた。

「前離れ、スイッチオフ!エナーシャ回せ!」

 保信さんと、もう一人の人が、クランクを回す。

 無事にエンジンが始動した。春音さんは、さらに号令をかける。

「チョーク外せ!」

 エンジンの音に交じって、春音さんの声が聞こえてきた。

「さぁ、いよいよ離陸ですよ・・・・」

保信「保信とぉ!」

春音「春音とぉ!」

みやび「みやびのぉ!」

三人『次回予告~!!』


―♪Oh,say can you see,by the dawn's early light What so proudly we hailed at the twilight'slast gleamind?・・・・・・・・


春音「あれ?今日はなんかいつもと違う感じだね。」

みやび「これって・・・・・・アメリカの国歌『星条旗』ですよ!」

保信「いったい何が起こったんだ?」

 周りを見回した保信、スタジオの片隅で敬礼をする一人の人物を見つける。

???「ハーイ!お邪魔させてもらうわよ」

三人「あっ、アマンダさん!?」

アマンダ「前々から気になってたのよ。それにしても、博物館の最上階にこんなとこがあったなんてね。」

保信「アマンダさん、ここは秘密のスタジオなんですからあんまり言わないでくださいよ。」

アマンダ「わたしのスリーサイズ、体重と同じくトップシークレットってことね。」

みやび「わたしたち女子にはあとでこっそり教えてくださいね。わたしたちのも教えますから。」

保信「どうせだから公表したら?」

三人『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 女子軍、それぞれ腰の南部式拳銃とMK27拳銃を抜いて保信に向ける。

保信「あああああ!ごめんなさい!ごめんなさい!もう言いませんから!」

春音「次は容赦なく撃つからね?」

みやび(ほんとは込めてあるのはペイント弾なんだけどね・・・・・・・・・)

アマンダ(こいつ、いじると結構面白いな・・・・・・・・)

春音「さて、アマンダさんは普段は何されてるんですか?」

アマンダ「最近まではイージス駆逐艦『ジョン・S・マケイン』に乗り組んでたけど退艦して、今は司令部要員として地上勤務です。雑用係みたいなのをやってます。」

みやび「それで今回の役目を?」

アマンダ「まあ、そうですね。よろしく!」

保信「ところで、趣味とかあるんですか?」

アマンダ「ちょっとお菓子作りとかをやってるよ!」

春音「えっ!?ちょうどわたしも挑戦してみようかなって思ってたんです!今度教えてもらえませんか?」

アマンダ「いいよ。じゃあ、翔鶴に乗った時教えるよ。」

みやび「そろそろお別れの時間となってしまいました。そして、今回の次回予告はアマンダさんにお願いしたいと思います!それでは、どうぞ!」

アマンダ「次回は、わたしが空を飛ぶ!?それでは皆さん」

四人『お楽しみに~!!』

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