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第十五章 真珠湾入港

 

 ヴァララララララ・・・・・・・・・ガキッ!


 ヴィーッ!ヴィーッ!ヴィーッ!・・・・・・・・・・・


 第二次攻撃隊が帰投した。飛行甲板上に、飛行機が近づいて着艦ワイヤーをつかむ音と、機体を格納庫にしまうエレベーターの警戒音が鳴り響く。

「サクラ二番ツー、発艦します!」

《コントロール、了解》

 そんな様子をチラッと眺めると、僕は自分の愛機である零戦三二型のスロットルを全開にした。

 翔鶴を発艦し、母艦の上空を守る。上空直掩だ。

 旗艦赤城を中心とした第一航空艦隊は、真珠湾に向けて舵を切り、主機関の出力を上げた。

 それぞれの艦首が太平洋の波を切り裂いていく。


 ヴァラララララララララ・・・・・・・・・


 となりにならぶのは、複座型に改造された飴色の零戦二一型だ。尾翼番号「コオ―103」。操縦しているのは、永信。後席に実が乗っている。

 無線を使って永信と連絡をとってみた。

「こちらサクラ二番ツー。永信っ!僕からのプレゼント、どう?」

 この零戦は、南洋からの回収機をもとに零戦ミュージアムで新製した機体だ。プロトタイプは、ラバウルの現地改造型の複座型零戦。永信への僕からの早めのクリスマスプレゼントだ。

《うん!めちゃくちゃいいね!僕の人生史上最高の零戦だよ!ありがとう!》

「それならよかった。」

この零戦は、永信のために作った特別仕様だ。普通の零戦は、昇降舵にのみ、操縦性がよくなる「剛性低下式操縦索」を使用しているけど、永信の零戦は、方向舵と補助翼にもこの剛性低下式操縦索を使用して、操縦性を高めている。

《ちょっと!わたしにも代わりなさいよ!》

 ボカッ!

《痛ったぁ!わかったよ・・・・・・》

 何かを殴るような音と同時に、永信の零戦がクラッと揺れた。大丈夫か?永信。

《ヤス兄っ!複座型にしてくれてありがとね!》

 永信から実に代わったようで、実の元気な声が飛行帽に仕込んだヘッドフォンから聞こえる。

(やっぱり、複座型にしたのは正解だったな・・・・・・・・)











 零戦の製作を始めた去年ごろ・・・・・・・・

 永信にあげる零戦を複座型にしようと言い出したのは、ハルだった。理由を聞くと、「永信と実の関係」だそうで・・・・・・なんかキャッキャしながら言っていた。

「永信君と実ってさ、お互いに好きなのはたから見れば分かってんのに、告白しないじゃん。というよりも、お互いが好きなことに気づいてないんだね。だから、二人でいっしょに乗れる複座型にすれば、お互いの距離も縮まると思うんだけどさ。」

(そんなもんかな~。)

 そんなふうに思っていると、ハルは僕のほうに顔を近づけてきた。

「ヤス、『吊り橋効果』って知ってる?」

 僕は、プルプルと首を横に振る。ハルは、さらに顔を近づけて言った。

「吊り橋を渡るとき、ドキドキするでしょ?その状態に男女一組を置くと、お互いが好きでドキドキしていると思うんだって~。これを『吊り橋効果』って言うらしいけど、こんな状況を作ってあげれば、永信君と実もくっつくと思うんだよね。」

(こっちのほうがドキドキだよ~!)

 僕の心の声に気づくはずもなく、完全に乙女モードになってしまったハルの計画は、クルシー式自動帰投装置に導かれるかのように進み、その後始末(つまり零戦を複座型にする改造作業)を僕がやって、今に至る。









(そう簡単に行くものかなー・・・・・・)

《ヤス兄、ヤス兄―。》

 ちょっとの間ほけーっとしてると、ヘッドフォンから実の大声が聞こえてきた。

《なんか向こうから飛んで来たよ~。》

 はっとして、前方に目を向けると、三機のウォーホークがこっちに飛んできていた。時計を確認すると、アメリカ側からの出迎えの飛行機がやってくる時刻。

 どうやらちょっとどころじゃなく、かなりの間ほけーっとしてたらしい。真珠湾はすぐそこだ。

(まったく・・・・・僕としたことが・・・・・・)

 飛行中に集中力を切らすなんて。模擬空戦大会の最中だったら確実に撃墜判定だ。

(やっぱりハルがいないとな~。)

 僕たちは二人で一つみたいなものだから、片方がいないと何となく落ち着かない。

 どんどん近づいてくるウォーホーク四機・・・・・・・あれ?さっきまでは三機だったはず・・・・・?

 さっきまでいなかったあの飛行機は、よく見ると日の丸の印が描かれている。その後ろには八重桜・・・・・・・・・

 その飛行機は、急に機首を上げると、クルリと宙返りをした。十二メートルもある長い翼と、空冷式の栄独特の機首。零戦だ!

 零戦は、ウォーホークといっしょに、僕たちの群れに加わった。機体に描いた八重桜、尾翼番号「Vー121」。

 つぎの瞬間、無線機からハルの大きな声が聞こえてきた。

《山ノ井春音、ただいま帰還しましたーーーーーーーーーーっ!》

 やった!ハルが帰ってきた。僕は無線機を入れる。

「おかえりなさい!」

《ハル姉ちゃん!おかえりー!》

《お姉ちゃん!おかえりなさい!》

 実と永信も無線を入れた。翔鶴からも無線が入る。

《おかえりなさい!まぁ、ハルのことだから、不時着しようが墜落しようが野良犬みたいにしぶとく生きてると思ってたけどね。》

《ちょっ!信さんひどっ!野良犬って・・・・・・・》

 完全にいつものやり取りだ。僕は他の二機に向けてインカムを入れた。

「やっといつもの僕らに戻った。神崎戦闘隊は三機で一つだからね。」

 永信が疑問の声を上げた。

《え?だって、お兄ちゃんとハル姉で二機でしょ?もう一機いるの?》

 僕とハルは、にこりと笑うと声を合わせた。

『神崎戦闘隊三番機「コオ―103」!担当搭乗員神崎永信、初霜実!』

『え!?えぇ~!』

 二人の驚く声が無線越しに聞こえる。

「これは隊長命令だからな~。お前らに拒否権はないぞ。」

《ついでに副隊長命令でもあるよ~》

 ハルも笑いながら言う。

「これまでずっと三機目は永信にしようと思ってたんだけど、複座型だから実もいっしょに入ってもらうことにしたよ。」

《まあ、二人の操縦技術の高さを買っているって思ってね。》

《・・・・・・・・・・・・・》

 二人はもうあきらめたみたいで、何も言ってこない。僕は、そんな二人に向かって言った。

「と、いうわけで、これからしっかり鍛えるからな!覚悟しとけよ!」

『えぇ~!そんな~!』

 二人の悲痛な声がハワイの空に響いた。

 眼下の艦隊は、甲板上にほとんどのクルーが集まり、入港の準備をしている。自衛隊の演奏隊も先頭の赤城の甲板上で楽器のセッティングを終えて、入港を待っていた。

 真珠湾とその中に浮かぶフォード島が大きくなり、停泊する艦船一つ一つの形まで見分けられるようになった。

 岸壁にあふれんばかりに群がっている人たちの姿も見える。

 艦隊が徐々に速度を落とし、縦一列の陣形をとった。コンクリート製の岸壁と原子力空母「ロナルドレーガン」、イージス駆逐艦「フィッツジェラルド」の間に入るように停止する。

 その様子を見届けると、僕たち神崎戦闘隊は、ヒッカム飛行場に機首を向けた。


保信「保信と!」

春音「春音とぉ!」

みやび「みやびの~!」

三人『次回予告~!』


♪この手に寄せる袱紗朱の色 この目開いてその顔見れば 翼束ねて波濤を超えてあげる

 指を絡めて抱きしめたなら 炎の海も怖くはないの 翼を放ち戦の空へ駆ける・・・・・・・・・・


春音「さあ、やっと真珠湾に到着!」

みやび「太平洋航空博物館は本当に参考になりました。」

保信「戦艦『ミズーリ』にも乗艦してきたよ。」

春音「『ミズーリ』の艦魂にも会ってきたの?」

アマンダ「あのフネはいいでしょ。大和にも勝るとも劣らないわ。」

???「ソ連艦もいいぞ」

四人「??」

保信「何だ、この声?」

???「ガングートとかタシュケントとか」

保信「さて、この声の主を特定しに行きますか。」

みやび「行きましょう」(軽機関銃を取り出す)

春音「陸戦隊も出撃させるよ!」

アマンダ「次回、『ハワイでの朝』!お楽しみに~!」


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