第十二章 真珠湾へ
北太平洋上択捉島より二百カイリ以上離れたところ。現在翔鶴は、真珠湾に向けて航行中だ。
「う~ん!今年も、あと一か月ですねぇ!お正月までに桑折に帰れるかな?」
艦橋で、ハルが背伸びをしながら言う。
「さぁね。ハワイでも式典に参加したりエアショーで模擬空戦を披露したりするしねぇ。」
僕は、少し笑いながら答える。
「あっ!そろそろ撮影の時間だ。外に出よう。」
廊下に出ると、真珠湾攻撃九十周年記念で作られる映画のクルーが集まっていた。
「あ、そのまま歩いてていいよ。」
僕たちが、撮影のじゃまにならないように移動しようとすると、スタッフさんに呼び止められた。
「軍服姿だし、雰囲気が出るしね。」
「はい、わかりました。」
二人で廊下を歩いていると、向こうから伝令兵役の人が走ってきた。ノックをして、艦橋に入っていく。中から、声が聞こえてきた。
「長官、ニイタカヤマノボレです。」
「そうか、ご苦労だったな。」
「はい!OKでーす!」
監督さんの声が聞こえた。
撮影が終わり、スタッフさんたちが引き上げていった。
赤城のマストに、転舵を示す信号旗が上がる。
「取りかーじ!」
「はい取りかーじ!」
先頭の駆逐艦と空母赤城、加賀が右に大きく転舵し、ほかの艦もそれに続いた。
ゴウン、ゴウン・・・・・・・・・・・・
各艦の機関がうなりを上げる。
煙突から吐き出される幾筋もの煙は、空に昇り、一つとなった。
それぞれの艦首は波立つ海をを切り開き進んでいく。
どことなく、「軍艦行進曲」を思わせる光景だ。
(昔、よくおじいちゃんが歌ってくれてたっけ・・・・・・・・・・)
僕の家ー神崎家は、代々海軍一家だ。先祖は村上海賊、さらには熊野水軍に所属し、源平合戦にも参加した荒武者。江戸時代には、明治政府軍の軍艦長。
(そして・・・・・・僕のおじいちゃんは大日本帝国海軍中尉。)
僕の体には、海軍一家の血が流れている。永信にもだ。
「久しぶりに、歌ってみるかな・・・・・・・」
遠くを見つめ、大きく息を吸い込んだ。歌い始める。
「♪守るも攻むるも黒鉄の 浮かべる城ぞ頼みなる 浮かべるその城日ノ本の 皇国の四方を守るべし・・・」
歌声は、艦の周りの大海原に響いて消えていく。
「・・・・・・・真金のその艦 日ノ本に仇なす國を攻めよさじ」
すぐ近くから、もう一つの歌声が聞こえてきた。
『♪海征かば、水漬く屍 山征かば 草生す屍 大君の 辺にこそ 死なめ 長閑には死なじ』
振り返ると、ハルと翔鶴航空隊の零戦隊が声を合わせて歌っている。
タッタタタッタ、タッタタタッタ・・・・・・・・・
どこからか、トランペットの音色も聞こえてきた。
となりの瑞鶴の舷側で、永信と実が自分のトランペットをかまえて吹いている。
二人の間奏が終わり、二番に入った。いつのまにか、ほぼすべての艦の甲板と艦橋屋上の防空指揮所にたくさんの人が集合していて、声を合わせて歌っている。
『♪石炭の煙は大洋の 龍かとばかり靡くなり 弾撃つ響きは雷の聲かとばかりどよむなり 万里の波濤を乗り越えて 皇国の光輝かせ』
みんなの歌声は、吹き渡る風に乗り、遠くまで響いた。
永信と実が最後に後奏としてメロディーを一回演奏する。
仕上げに、みんなで一番をもう一回歌って、曲は終了した。
パチパチパチパチ・・・・・・・
歌い終わると、だれからともなく拍手が起こる。
十二月三日、四日と二回に分けて艦隊は大きく転舵し、真珠湾に艦首を向けた。
確実に、その時は近づいてきていた・・・・・・
保信「保信と!」
春音「春音と!」
みやび「みやびの~!」
三人『次回予告~!!』
♪海の民なら男なら 皆一度は憧れた太平洋の黒潮をともに勇んで行ける日が来たぞ歓喜の血が燃える
♪今ぞ雄々しく大陸に明るい平和築くとき 太平洋を乗り越えて 希望果てない海の子の意気を世界に示すのだ・・・・・
保信「さあ本日も始まりました次回予告!」
春音「一つお知らせです。前回の次回予告で『コンギョ』を流した犯人は作者さんでした。」
みやび「現在追跡中ですので、早いとことっ捕まえて沈めます。」
保信「相変わらずさらっと恐ろしいこと言うな。」
春音「さて、次回予告に移りましょう。」
三人『次回!真珠湾ヘト発艦セヨ!お楽しみに~!』




