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第十一章 比叡故障ス!?

 ぼんやりと海を見ていると、艦内放送がけたたましく鳴り響いた。

《神崎保信大尉、山ノ井春音中尉!至急第一艦橋まで来られたし!復唱する・・・・・・・・・・》

  





 ダッシュで艦橋に急ぐと、信さんたち艦の首脳部が難しい顔をして集まっていた。ハルもすでに到着している。

「全員到着したか。皆さん、よく聞いてください・・・・・・・・・」

 バーーーン!

 信さんの話を遮るようにして、七海さんがドアを開けて入ってきた。

「わが艦の後方を進む戦艦比叡の物と思われる影、やはり電探レーダーに移りません!」

 信さんが七海さんに問うた。

「打電は?」

「打ちましたが、返信ありません!比叡にいる友人にLINEも送りましたが、現在艦が故障中で忙しく、しばらく返信できなくなるとのことです!」

 信さんが、みんなを見回して言った。

「今、七海一等兵曹からもありました通り、現在、わが艦の後方を進んでいた比叡が故障により隊から落伍、電信の故障により連絡も取れない状態となっております。そこで・・・・・・・」

 信さんは、並んで立っている僕とハルのほうを見た。

「神崎大尉、山ノ井中尉には、それぞれの零戦で発艦し、上空から比叡を探してもらいたいと思います。できますか?」

 僕とハルは、お互いを見た。ハルの目が「できるよね?」と問いかける。階級はこっちが上だが、ハルのほうが操縦技術はすごい。

 僕は、信さんの顔を正面から見据えた。

「できます!やってみせます!だから、安心して待っててください!」

 すぐに部屋に帰り、飛行服に着替えると、飛行甲板に急いで向かった。

緊急発進スクランブル緊急発進スクランブル!直掩隊全機発艦せよ!》

 サイレンがけたたましく鳴り響いた。

 僕の零戦三二型「コオ―102」とハルの零戦二一型「サクラ」は、エレベーターによって飛行甲板にあげられ、暖機運転が始まっている。

 そのコックピットに乗り込み、シートベルトをしっかりと締めた。信さんが、僕に話しかける。

「比叡を見つけたら、まずはト連送で知らせてくれ。そのあと、詳細な位置を知らせ、比叡の甲板に通信筒を投下するんだ。そのあと、比叡を艦隊まで誘導してくれ。」

「わかりました。ハル!行くよ!」

 座席を一番上まで上げた。落下傘のひもを確認する。

「隼人さん!みやび!あなたが整備したこの零戦、必ず返します!」

「お前らもいっしょに帰らなきゃ意味ねぇだろうが。」

 隼人さんは、苦笑しながらチョークを外した。離陸前のいつもの光景だ。

 エンジン出力全開、プロペラピッチ低で発艦!ハルもあとから続くようにして発艦した。

 ほかの艦からもそれぞれ艦載機や水偵が発信するのが見える。瑞鶴の零戦、九七艦攻のコックピットに永信と実の顔が見えたような気がした。

 僕らはお互いに翼を振りあうと、それぞれの方向に散らばった。












 金剛型高速戦艦、「比叡」艦上、現在故障した電信装置とご機嫌斜めなボイラーの整備で大わらわである。

 艦橋では、艦長である秋月輝樹と機関長の三国弘樹が「艦内状況把握モニタ」を見つめていた。

 艦内状況把握モニタの下のほう、「メインボイラー」の部分は、航行に少し影響する程度の不調を示す青色の光。その横に「三基中一基が停止、航行速度低下」という黄色の文字が出ている。

 つぎの瞬間、モニタの色が青から緑に変わり、黄色の文字が消えた。

 ピッ!

 二人の軍帽と軍服の襟に仕込んでおいたインカムが鳴る。

《ボイラー修理、完了しました!これより、電信装置の修理に向かいます!》

 整備士の声が聞こえてきた。秋月が返す。

「ご苦労様でした。電信もよろしくお願いします。」

 インカムを切ったところで、艦橋に駆け上がってくる足音が聞こえた。

「翔鶴の七海さんからLINEです!各艦の艦載機が我々を探しに来ます!」

 船員の一人が、スマホを右手に持って入ってきた。

「なに!本当か!?」

 秋月が驚いて振り返る。

「本当です!今、一斉に発艦したそうです!」

 船員の声が艦橋内に響く。

 しばらくし、二機の零戦の影が蒼穹のかなたに見えた。

「来たか・・・・・・・・・・」

 秋月は、安堵し、大きく息を吐いた。

















 わたし―山ノ井春音は、自分の愛機、零戦二一型「サクラ」を駆り、荒波たつ北太平洋上に目を凝らしていた。

 前方には、相棒であり彼氏でもあるヤスが操る零戦三二型が飛んでいる。

 ヤスも今頃、隊からはぐれた戦艦比叡を見つけようと、わたしと同じように波間に目を凝らしているはずだ。

「ん?」

 遠くの波間に、一筋の煙が見えたような気がした。足元の要具袋から望遠鏡を取り出し、目に当てる。

 波間を進む一隻の艦、メインマストに掲げられた旭日旗。友軍だ!

 さらに細部を観察する。二本の煙突、二連装の主砲。比叡で間違いない!

 ヤスはまだ気づいていないらしく、普通に飛んでいる。そのヤスの前に出て、翼を振った。インカムを入れる。

「ヤス、比叡発見!十時の方角!わたしが先導する。」

 操縦席横の電鍵をたたく。「トトトトトトトトト・・・・・」と簡単なト連送を翔鶴に発信。

 比叡のほうに機首を向けた。その間に、比叡の詳細な位置を艦隊あてに打電する。

「行くよ!」

 比叡に近づくと同時に、急降下!手元のハンドルを操作し、通信筒を甲板上に投下した。

 しばらくの間、二人で艦上を旋回し待機する。

 チカッ!チカッ!

 比叡の艦橋から、発行信号が放たれた。

「『了解シタ。ヨロシクタノム。』・・・・・・ね。よしっ!成功!」

 ヤスに連絡し、それぞれに比叡の前と後ろにつき、速度を比叡に合わせた。

 遠くから、友軍機が集まってくる。みんなで比叡を取り囲み、艦隊のほうに機首を向けた。比叡もわたしたちと同じ方向に転舵する。

 一時間ほど飛び続けただろうか・・・・・・・・・・・

 遠くに、幾筋もの煙がうっすらとたなびいている。それぞれのマストに翻る旭日旗、全通式の飛行甲板を持った六隻の空母。友軍艦隊だ。

 霧島のとなりの所定の位置に比叡が収まるのを見届けて、わたしたちは高度を下げた。

 水偵は海面に着水し、母艦に拾ってもらう。零戦隊は、それぞれの空母に着艦した。

「ふぅぅぅぅぅぅぅ~」

 着艦を終え風防を開けると、わたしは大きくため息をついた。

    








         







 空母の飛行甲板がすぐ近くに迫る。僕―神崎保信は、操縦桿を手前に引き、自分の零戦の尾部を下げて、三点着陸の態勢をとった。

 ガキッ!

 着艦フックと着艦ワイヤーがかみ合い、零戦がグッと引き止められる。

 風防を開けると、隼人さんたちが駆け寄ってきて、着艦ワイヤーを外した。

「ほらね、僕も零戦も、両方帰って来たでしょ?」

 僕の言葉を聞くと、隼人さんは少しだけ笑い、みやびは顔いっぱいの笑みで笑った。

 みやびに押されてエレベーターの上まで転がされた零戦は、エンジンを切られ、格納庫に収容された。

 すでに着艦していたハルも駆け寄ってくる。

「任務成功だね!」

「そうだな!」

 ハルの声に、僕はうなずいた。

今回の次回予告は、もろもろの都合でお休みです。

では、これから作者は、保信たちに殴られてきます

それでは皆さんさような(ここで通信は途切れている。)

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