無能の僕にできる魔法。
「アイツ、魔法使えないらしいぜ」
「知ってる知ってる、チョコ・ラシュターラでしょ」
「そうそう」
教室でヒソヒソと話し声が聞こえる。
「今は石ころでも魔法を持つ時代なのにな」
「可哀想に」
「そんな哀れんだ目で見んなよ可哀想だろ」
そう、僕は魔法が使えない。
魔法が全てのこの世界で、僕は優位つ魔法が使えない。
言い方によっては「特別」とも言えるが、魔法が使えないと言うのはそんな簡単で便利な言葉で片付けてはいけないことだ。
魔法が全てなのだから。
でも、魔法を持たない僕にも守りたいものがある。
「チョコちゃん」
僕の優位つの理解者、ミルク。
「この後暇かな」
「暇だけど、どうかしたの」
「ちょっとね」
言われるがままに僕はミルクと一緒に町外れにある遺跡に来た。
僕が遺跡の瓦礫に座って休んでいると、ミルクは僕が考えもしなかったことを言い放った。
「私、冒険者になる」
「えっ」
冒険者、全ての魔法の原点とされる石:ネラムガン:それは願いを無限に叶えられるという魔法の石。それを我が物にしようと世界を旅する者達のことを冒険者と言う。
「だからチョコも冒険者なろ‼︎」
「僕も?」
「そう、一緒に冒険しよ」
この時は考えもしなかった、僕が冒険者になるなんて。
ただこの時はひたすら嬉しかったんだ。
同時刻、場面は変わり隣の国モレビアでは大罪人を追い詰めていた。
「氷魔法・氷波」
氷は波を打ちながら大地を凍らせる。
「政府の犬がその程度じゃ世界を滅ぼすのも簡単だな」
「追い詰められといて何言ってんだよ」
「馬鹿にもほどがありますね」
「俺の異能力ワープなんですけど」
「まさか⁉︎」
「そのまさかだよ」
「やめr・・・」
「ワープ」
そして、場面は戻り、同時刻町外れの遺跡。
「これが:滅びの印:か、印を押されたものは1年以内に必ず死に、その死と同時に世界が滅びると言う」
「まさか本当に盗みだすとはな」
黒いマントに身を包んだ男は上空から下を見下ろしながらぶつぶつとつぶやいている。
「ま〜、俺もまだ生きたいし滅びた世界も見てみたいから」
「あの子でいいや」
「お嬢ちゃんになんの恨みもないけど、俺も死にたくないからさ」
「ごめんね」
拳銃をミルクに向かって打った。
「ミルク?」
「何今の・・・・・」
「ミルク‼︎大丈夫なの?怪我はない?」
「ん〜特にないかな」
「あっ、でもお腹のあたりが熱いかも」
「見せてみて」
「別にいいけど」
僕はミルクのお腹を見て驚きを隠せなかった。
「ミルク、滅びの印って知ってるか?」
「知ってるけどそれがどうかしたの?」
「ミルクのお腹に滅びの印がある」
「えっ」
泣き崩れるミルクに僕は言った。
「僕が助ける」
「魔法が使えない僕にできることなんて何もないかもしれない、でもミルクの隣に居ることはできる」
「一緒に冒険することはできる」
「チョコちゃんのくせに」
ミルクは笑いながら言った。
「ミルク、冒険を始めよう」
「うん」
言い忘れたがこれは、僕とみんなの物語だ。