なかなか進まぬ世界
なかなか進まずすみません。(´・ω・`)
「この空気は『ヨナゴウチの戦い』と同じだ。」
「なぜ知っているんだ?セイト」
黄泉が驚いたように『ヨナゴウチの戦い』について聞いてきた。
「えーと、知らなかったのか?黄泉、僕は第一期志願兵だったんだ。」
第一期志願兵とは、今から2年ほど前に政府が行った兵士を募ったものだ。しかしその後、かなりの数の第一期志願兵の行方が不明になっているため、巷では「実験台にされた」だの「特務部隊に入れられた」だの「邪神召喚の生け贄にされた」だとかの都市伝説が囁かれていた。黄泉は僕達を入隊する時に結構調べており、それを弱みに脅して入隊させやがったのだが
肝心なところまでは調べて無かったのか。ティアもノイズも知らなかったようで驚いている様子だ。
「数少ない一期志願兵は今は中年のオッサンで軍の幹部だぞ!なぜセイトが…」
そうなのか、知らなかったわ。さすが黄泉、軍のお偉いさんに対してもオッサンという点は素晴らしい。
この素晴らしい司令官に祝福を!
「そうだな、僕には親がいなくて孤児院に入ってたんだ。まあ15歳くらいになると大人として働くんだが特に就職先もないから軍に入ろっかなーくらいで入った。」
「そして何かの理由で辞めて私達の学園に入ったということかしら?」
僕が大体の事について話すとティアが割り込んできた。
「辞めた理由は何なの~?」
ノイズも気になっていたらしく話に入ってきた。
「それは…すまない」
あの事は他人に言うことではないと思うがあの事をバネに黄泉が言ったような幹部になったオッサンが存在するわけだ。
「いまさらだけど軍に残って幹部に名を連ねた方が良かったかねー損したなー」
何か聞いてきたはずなのに変な空気になってきたな。
「何か、うん、ごめん変な空気になったわ。」
一転変わって場面転換
「ようやく作戦実行なんだがどうするんだ?話全く進んでないぞ。」
そういえばそうだ。しかしまあ、よく待ってくれたなぁ人間軍。散々魔力漂わせておいて行動して来ない。やっさしぃー!これぞ戦隊ものでよくある「変身するまで待っててくれるみたいなやつ」だな。
「とはいえ、本当にどうするの?このまま相手が何かしらするまで待つのかしら?」
「う~む、このまま突撃しても迎撃されるかもしれないし~、しかしこのままだと進展がなく、兵士達の士気が下がるだけだね~」
ティアとノイズが珍しく普通に会話している。こいつらいつもこの様子だったらいいんだけどなーホントに。ずっと悩んでいたらしい黄泉がめんどくさそうに呟いた。
「もうさ、突っ込めば何とかなるのではないか?」
「そうだな、それが一番僕達らしくていいな。」
「確かにね~」
「まあ、それがいいでしょう。」
僕が黄泉に賛同の意を表すとティアもノイズも賛同した。
よって
「全速前進だー!はっはー!」
黄泉が船首に立ち、楽しげに叫ぶ。
「黄泉、あんたここにいちゃだめでしょ!?」
ティアが黄泉の横で冷静に叫ぶ。
「うわ~こんなにスピード出るんだね~」
ノイズが感心したように口に出す。
「いやいやこんなとこにいたら死ぬからー!いやぁぁぁ!」
セイト、僕は必死に耐えながら悲鳴をあげる。何か僕がヘタレっぽく見えますけど40ノットですからね!?人間軍のとある駆逐艦と同じ速度なんですからね!?
約40ノットですから時速75.7468kmですからね。船に乗った経験が少ない僕にはきついですからね!?
「いやぁぁぁぁ!何かこの船の周囲に砲撃がぁぁぁぁ!」
速度に合わせて砲撃による水柱ぁぁぁ恐怖しかないぃぃぃ!
「うっさい貧弱!」
「そうだそうだ~」
「おいおい、軟弱すぎるぞセイト」
何でこいつらは平気なんだよ!?
「「「そりゃー昔からよく乗ってたから?(だよ~)」」」
こいつら只者じゃねぇ!
「こんなシチュエーションがよくあってたまるかぁぁぁぁぁ!」
船首で僕達が騒いでいると艦橋から『念話術』が来た。
「あのーお取り込みのとこすいませんもう目の前に海上施設がありまして…」
「「「「うん?」」」」
「問題も起きてまして、曲がれません。」
艦橋からの『念話術』の通り、もうすでに目の前に海上施設が迫っており…
「「「「なんか、でかくね!?」」」」
そのまま最大船速で衝突した。