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Raw World  作者: 怠惰
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チュートリアルクリア

今回はゼロとの戦い。そしてそのあとを書きました。戦闘シーンをかなり考えて躍動感あるものを目指して書いたのでぜひ楽しんで見てください

周囲にピリピリとした緊張感が走っている。亮太とゼロはお互い構えたまま動かない。無闇に突っ込んでも返り討ちにあい最悪そこで決着がつくのがわかっているからだ。二人の姿を見ている牛若にも緊張感が伝わっているのと同時にゼロから巨大な圧力を感じる。瓦礫の一つがガラッと音をたてて地面に落ちる。牛若はその音がより鮮明に聞こえた。その音と同時に亮太は一気に間合いを詰めた。ゼロは想像以上の速さに一瞬驚くも大木のような足で蹴りをいれる。亮太はスピードを落とさずゼロの蹴りをほとんど動かず躱すとすぐにふところに潜り込んだ。

「喰らえ、重厚なる篭手(ヘビーガントレット)!」

大きく跳躍するとゼロの土手っ腹に黄色の気をガントレットに形成し正拳突きをきめる。ドゴッと打撃音が響きゼロは大きく後退する。

「ぐっ、なかなかいいパンチだな。けどそれじゃ俺は倒せ」

「ならもっと撃ち込むだけだな」

ゼロの攻撃を躱しながら一発一発全力で撃ち込む。はじめ涼しい顔をしていたゼロから呻き声が聞こえ始め、攻撃が鈍くなっていく。

「ちょこまかとうぜぇ!」

「でかけりゃいいってもんじゃねえんだよ。ほらもう一発!」

ゼロの攻撃を避け右腕に乗り大きく跳躍すると、気で形成したガントレットを纏った状態で溝落ちに両手で掌底を打つ。5mの巨体がぶっ飛び吐血する。

(こいつただのガキじゃねえ。最小限の動きで回避と打撃を繰り出してきやがる)

ゼロは立ち上がると亮太と少し距離をとると召喚術で何かの角を召喚する。そして指輪を外し角にはめるとゼロを中心に魔法陣が展開される。

「な、なんだ?」

「俺が持っている至高の宝具、アトラスの指輪とアトラスの角だ。この二つは別々ではあまり意味を成さないがこうやって合わせることで本当の宝具アトラスの紋章を召喚できる。そしてこの紋章を発動した者を格段にパワーアップさせる代物だ」

魔法陣から発せられる魔力がゼロに取り込まれていく。かなりの量の魔力量に土煙が舞い物凄い風圧が亮太を襲う。しばらくして収まるとゼロは元の姿に戻っていて紫色の気を纏っている。

「戦いはこれからだぜミルハ。お前は反撃できずに俺に嬲り殺される」

「大した自信だけどそこまでやられるほど俺は弱くねえぞ」

「じゃあ今から思い知れ自分自身の弱さをな!」

ゼロが攻撃モーションをとるのを見て警戒を一気に強めた。だがしかし、亮太は何の抵抗もできず腹部に強烈な痛みがはしると同時に、近くの民家の外壁を突き破り中に放り込まれた。亮太は何が起きたか理解した。目で追えないスピードで接近され強烈な一撃を喰らったのだと。亮太は激しく咳き込むも立ち上がりゆっくりゼロへ向かっていく。その様子を鼻で笑うと目にも留まらぬ速さで亮太を攻撃する。

「す、凄い。流石ですねミルハさん」

亮太はゼロの攻撃を紙一重で避けたり受け流している。

「チッ、このスピードについてこれるか。うぜぇ!」

「攻撃が単純なんだよ。この単細胞が!」

ゼロは挑発にのって攻撃が雑になる。その隙を亮太は見逃さない。ゼロの高速パンチの勢いを利用して綺麗な背負い投げをする。ゼロの視界が亮太から一瞬で空に変わり背中に激痛がはしる。

「見事な背負い投げですね」

「まあな。それより大丈夫か」

「足ならなんとか動かせる状態ですが両腕は折れてて全く動かないですね。一応回復魔法も微量ですがかけてます」

亮太は牛若のところに行き状況を把握する。亮太の予想通り良くない状況だ。亮太は黄色の気しか出せず既にネタがわれていて二人のサポートも望めない。ゼロは立ち上がり亮太を睨むとわざと大声を出して笑うと真剣な表情に戻る。ゼロの雰囲気が変わる。どうやらここからが本番のようだ。

「認めてやる。お前は今まで倒してきたなかで指折りの強さだ」

「倒した前提で話しすんな」

「いや、お前は俺に負ける。俺の全力にお前はついてこれない」

ゼロが攻撃態勢に入る仕草を捉えすぐに防御態勢をとる。しかし、目にも留まらぬ速さで攻撃され防御できずに吹っ飛ばされる。さらにゼロは高速で移動し連撃を繰り出す。あまりのスピードに防御が間に合わず黄色の気を全身に纏うことでなんとか防御するがじわじわと削れられる。そしてゼロに防御が薄い部分を見抜かれ痛恨の一撃を喰らってしまう。

「カハッ!!」

「ミルハさん!」

「おいおい、さっきの威勢はどうしたよ!」

ゼロに蹴り飛ばされ瓦礫に突っ込む。亮太は全身に激痛と倦怠感を感じていた。気は精神力によって強さが決まるが気を常に保つにはかなり体力を使ってしまう。スタミナ値1の亮太にとってまさに自殺行為だ。しかし、こうでもしなければゼロの猛攻を耐えることが出来ない。もう亮太の体力は底をついていた。足は震え体を動かそうとするが体がいうことをきいてくれない。その様子を見て勝ちを確信したように笑う。

「はっ、所詮お前はこの程度の強さだ。自分の弱さを後悔しながら死ね!」

ゼロは亮太の首を絞める。亮太は抵抗しない。その様子にゼロは満足しさらに力を強める。しかし、亮太は呻き声をあげずブツブツと何か呟いている。

「…………ない」

「あぁ、なんだよ?」

「………され…ない」

「おい、遺言ならもっとはっきり言いな」

「ミルハに負けは許されない」

その言葉が引き金となり赤い気が噴き出す。ゼロは咄嗟に全力で首を絞めるも遅い、炎のように燃え上がる気に触れゼロは手のひらに激痛がはしり手を離してしまう。ゼロは距離をとって自分の手のひらを見ると手のひら全体にアザが出来ていた。

「気を二色持っているだと。触れただけで相手に肉体的ダメージを与えるのか、いやこの感じは違うな」

宝具の魔力でアザを治すと亮太に攻撃を仕掛ける。稀有な二色持ちの相手とはいえ既に体力が底が尽きた相手が出来ることなどたかがしれてるからだ。しかしその思惑ははずれる。ゼロのパンチにカウンターで合わせ亮太は掌底をゼロの顎に当てる。強烈な一撃にゼロの意識が一瞬飛ぶもすぐに意識を保つと亮太の攻撃を躱して距離をとる。亮太は自分から攻撃しようとせずミルハに負けは許されないと呟き続けていた。それも気絶している状態で。

「どんな執念だよ。こいつ負けることにトラウマかなんか抱えてんのか」

「ミルハさん…」

亮太のこんな状態は牛若も初めて見る光景だ。フウライとの時は意識を保っていて気もしっかり操っていたが今回は気を放出しているだけで一向に動こうとしない。しかし、フウライの時よりも多く気を放出していてこころなしか亮太が鬼のように見える。

「能力を使うか、宝具発動で魔力が上がってるから二個いけるな」

ゼロは自分の魔力を亮太に放出する。亮太は避けずにゼロの魔力を吸収する。ゼロはニヤリと笑うと人差し指を曲げる。すると家が一軒まるごと亮太に引き寄せられ激突する。もろにくらい家の下敷きになるがすぐに吹き飛ばして起き上がる。

「これじゃ足りないか。なら俺のアジトの家全部くれてやる!」

家々が亮太に激突していく。亮太は避けることなく全て受ける。轟音をたてて亮太を中心に押しつぶすように引き寄せられる家々や瓦礫。

「あなたの能力は対象物に引力を付与する能力ですよね」

「正解だ泉兄。さっき飛ばした魔力に触れたものに引力を与えこっちから操作することが出来る。少し違うが今のやつは小さなブラックホールみたいなものだ」

大量の瓦礫が襲いかかるなか亮太は未だに同じ言葉を繰り返したまま動かない。しかし赤い気が亮太を守っているのか亮太の体に傷一つつかない。

「気がやつの体を守っているのか?これだけぶつけても反撃してこないのも謎だが」

「ミルハさん!目の前の彼はあなたの敵です!」

「敵?」

「はい!あなたの倒すべき敵です!」

牛若の言葉に反応する亮太。敵という言葉が引き金となり亮太はゼロに向かって歩き出す。近づいてこられると瓦礫の弾丸に巻き込まれてしまうのでゼロは自分の後ろから瓦礫の弾丸をミルハにぶつけるがびくともせず一歩ずつ近づいてくる。ゼロは能力を解くと距離をとるため下がる。しかしそれを読んでいたかのように同じタイミングで一気に走り出す。

「な!?こいつ!」

ゼロのどんな行動にも対応する亮太。お互いの距離は徐々に縮まっていく。牛若には赤い気と紫色の気しか見えないほど高速移動している。亮太の攻撃を躱しながら移動しているゼロは瓦礫に足をとらえて転んでしまった。それを見逃さない亮太は大きく振りかぶった。避けられないと判断し自分の頭のすぐとなりに魔力を放出しありったけの魔力を使う。亮太の拳はその部分に吸い寄せられそこに強烈な一撃が入る。ドゴォッと凄まじい音がし地面にヒビが入る。すぐさま退避し能力を解くと今度は自分に魔力を纏わせた。そして大きく振りかぶって殴るモーションをとる。すると亮太がゼロに引き寄せられていき強烈な一撃を喰らってしまう。地面に落ちる前にまた引き寄せられて攻撃を喰らう。空中で身動きを取れていない亮太に全力で殴り続ける。しかし、殴られ続けるうちにだんだんとゼロの攻撃を受け止め始めた。回数を重ねる毎にその精度は増していき劣勢だった状況を徐々にひっくり返していく。

「こいつ!化物かよ!」

さっきまで優勢だったものを返され反撃されている。ゼロは焦っていた。というのもゼロは今も別のことに魔力を消費している。それは弁慶にだ。弁慶に自分の魔力を取り付け瓦礫を集め生き埋めにしている。しかし、亮太の猛反撃によって魔力が大幅に消費してしまっている。ゼロの魔力は底をつきかけていた。次の一手で決めなければ敗北が濃厚になる。ゼロは勝負にでた。亮太の体勢が後ろに傾くのと同時に魔力を止める。引き寄せる力を失い亮太は体勢を崩し地面に落ちる。その隙にゼロは右腕に全魔力を込める。そして亮太に向かって大きく跳躍するとトドメの一撃を繰り出す。立ち上がる亮太にも限界が来ていた。赤い気は出ておらず一歩も足が前に出ない状態だ。しかし、気絶しているにもかかわらず亮太は冷静に対処する。降りかかる一撃に合わせ左手に黄色の気を込めるとわざと顔で一撃を受け止める。この瞬間、ゼロは勝ちを確信した。しかし、その期待を裏切るように亮太は殴られたあと素早く右腕の裾を掴み、殴られた勢いを利用して地面に思いっきり投げつけた。衝撃音とともに脳天をから落とされたゼロ。意識はなく頭から血を流している。一方の亮太もピクリとも動かない。牛若はなんとか立ち上がり二人の容態をみる。ゼロは脈が止まっていて死んでいるようだ。亮太は気絶しているだけのようだ。

「兄者、ミルハ無事か」

瓦礫を押し退け弁慶が出てくる。生きていたことに安堵する牛若の返事はこころなしか明るい。

「兄者、すまない」

「ゼロの能力で瓦礫の中に閉じ込められていたのですから仕方ありませんよ。とにかく生きてて良かったです」

二人は支部長宛てに治療部隊を要請し亮太に倒された雑魚兵は結界に閉じ込めた。

「全て終わりました。ミルハさん。あなたの勝利です」

こうしてミルハと盗賊団ゼロとの戦いが終わった。


とある学校の体育館倉庫。一人の少年を二人組が取り押さえて少年を見下す三人の計五人の男の子がいた。取り押さえられている少年の頬は赤く腫れている。

「お前、最近調子のってんじゃねえよ!」

男の子が一人、少年を殴る。少年は無言で殴られ続ける。無抵抗な少年を見下して楽しそうに笑う男の子たち。

「てめえは一生負け犬なんだよ!」

一人の男の子が少年の顔に向かって足を突き出す。目の前に迫る痛みと恐怖と負け犬という弱者を指す言葉。だんだん視界が暗くなる。

「はっ!」

亮太は悪夢から意識を覚醒させ起き上がる。物凄い頭痛と倦怠感を感じながら身に覚えのない先の映像に首を傾げる。

「目が覚めたみたいですね。うなされていましたが大丈夫ですか?」

声をかけられた方を見ると牛若が松葉杖でこちらに歩いてきていた。

「大丈夫だ。それよりここは?」

「ギルドが管理している病院です。あなたは倒れてここに」

牛若は盗賊団との戦いを話してくれた。自分が気絶してなお戦ったこと。盗賊団のボスと参謀は死亡、自分が倒した敵は全員牢屋に収監されたそうだ。

「俺はどんだけ寝てた?」

「五日ですかね。あなたが目覚める前に報告書まとめておきました。それと支部長が呼んでいますので今から行きましょう」

お礼を言い牛若の手を借りてゆっくり立ち上がると支部長のもとへ向かった。

「ミルハ君。今回の依頼お疲れ様だ。早速だが君に三つ話すことがある。まず一つ目は今回の報酬だ。申し訳ないのだが君の分の報酬を用意出来なくてね」

「じゃあ俺の報酬はどうすんの?」

「報酬金については泉兄弟の報酬金の半分をミルハ君にと牛若が。それともう一つはこれだ」

そう言って取り出したのはアトラスの指輪と角。亮太は笑いながら首を横に振る。

「報酬ってもしかしてこれですか。いや、嬉しいけど適正があるかわからないのに持ってても」

「それは問題ない」

なんで断言出来るだけと思ってると支部長は亮太のライセンスを出すと亮太に手渡した。亮太はアビリティのところに追加されているものを見つけた。

「賢い君ならもう気付いたと思うが新たなアビリティを習得している。そのなかの一つの神の器というのがあるだろう。そのアビリティは全ての宝具に適正があり神器として使用できる」

「神器ってなに?」

「宝具に選ばれた者にのみ発動する宝具の新たな力だよ」

なるほどなと頷く。神の器というアビリティがあれば全ての宝具を使いこなせるということはアトラスの紋章も使えるということだ。亮太は快くアトラスの指輪と角をもらう。

「二つ目は君がゴールドランクに昇格した。おめでとう」

盗賊団ゼロのボスを倒した功績が評価されたのだという。亮太はあまりランクに興味がないので適当に返事をする。

「三つ目は君の力についてだ。赤い気を発動できたみたいだが記憶がないんだろ」

亮太はゆっくり頷く。亮太には力尽きて首を絞められてからの記憶がない。体が動かなくなった時に感じていたのは敗北する恐怖だけ。

「ミルハさん。あなたの赤い気の発動条件は怒りとトラウマの想起だと思います。気絶した状態で戦っている間ずっとミルハに負けは許されないと言っていましたしフウライの時は怒りが頂点に来たとき出ていましたし間違いないです」

「ミルハに負けは許されない?そんなこと言ってたのか?」

「え、ええ。ミルハさん知らなかったんですか?闘技場でのバトルでも言っていましたよ」

亮太は全く自覚していなかった。今も、そんな傲慢なことを、と信じられないような面持ちだ。その様子を見ていた支部長は冷静に質問する。

「ミルハ君。赤い気が出ている時はどんな感じだ」

「え?体の芯が燃えるように熱くなる感じ。それに煮えたぎるように怒りが湧き上がってくる感じかな」

「その時のこと、君は覚えているか」

「うっすらとしか」

「そうか…。わかった。お前さんたちお疲れ様だ。1ヶ月は絶対安静だからゆっくり体を休めるように。特にミルハ君は全身骨折してるからな」

そう言うと支部長は立ち上がり部屋を出る。亮太は言われてから身体中の筋肉痛に気付いた。病院で骨折と告げられてからくる痛みのような感覚だ。

「ミルハさん、これが今回の報酬金です。今回はありがとうございました。機会があればまた会いましょう」

亮太に多額の金を渡すと泉兄弟も部屋を出て行った。亮太は支部長の反応に気になるも部屋に戻るのだった。

それからの一ヶ月の間、街の図書館やギルドの資料室に通い、ありとあらゆる本を読み込んだ。自分よりも戦闘経験のある者と対峙した時の勝率を上げるために情報を沢山蓄えるためだ。異世界に来てから毎日している散歩も欠かさない。筋力と体力の低下を防ぐために。


ある日の夜、誰もいない噴水広場のベンチで黄色の気の修行をしていた亮太の目の前に例の少女が現れた。

「こんばんは、ゲーマーさん。こんな夜中に修行熱心ですね」

「な!?お前!」

突然現れた少女に亮太は殴り掛かるが全身の激しい痛みで倒れてしまう。

「いきなりですね」

「チッ、あんたもな。それで今回はなんのようだ」

「まあまあそう邪険にしないでください。まずはおめでとうございます。見事な戦いぶりでした」

「お世辞はいいから目的を言え」

「あら、つれないですね。今回は依頼の再確認しに来ました」

忘れていませんよねと目で訴えてくる少女にイライラするもため息まじりに返事をする。

「ホワイトとかいう禁忌者を殺すだろ。忘れずに情報収集してるがこれといっていい情報はないな」

「ふふ、そんなあなたに私が良い情報を与えましょう」

自慢気な態度にイライラが止まらない。その亮太の様子を楽しむ少女。

「ホワイトはギルドのなかでも一番強いアダマンランクでダイヤランクでないと会うことは出来ないそうです」

「ふーん。俺が欲しかった情報じゃねえな。敵の戦闘情報が欲しかったが期待外れだ」

亮太はガッカリすると立ち上がり歩き出す。一人取り残された少女はクスッと笑う。

「白銀の魔術師と呼ばれる由縁、知りたくないですか」

亮太は足を止める。そしてゆっくり振り返るとベンチまで戻ってきた。

「そっちを先に言えよ」

「あなたはどんな情報も聞く方だと思っていたので」

「居場所とか会う条件は教えてもらったら面白くないだろ。ゲームでいうところの攻略本みながらプレイしてるようなもんじゃねえか」

居場所はダメで敵の戦闘情報はいいのかと矛盾を感じつつも少女は情報を教える。

「昔ある国に大量の悪魔が襲ってきたそうです。国の兵士や住民は皆殺され、あわや滅びるという時、国を包むほどの魔法陣を展開し悪魔の軍勢を全て凍らせ国を救ったとのことです」

話を聞き亮太は大きなため息をつく。その話が本当だとすると今の亮太では到底かなわないからだ。同時に理解した。自分はたったいまスタートラインに立ったのだと。

「やっと俺の異世界でのレベルが1になったわけだ。これまではただのチュートリアルにすぎなったか」

「そう思うのはあなたのご自由です。私は目的を果たしたのでこれで失礼します」

少女はそう言い残し姿を消す。電灯が亮太を照らすなかフードの中の彼の表情は笑顔だった。単純に嬉しいからだ。自分よりもレベルが高い敵を超えれることが。亮太は修行を再開する。その内容は以前よりも激化している。


一ヶ月感の治療で完治した亮太はマハルタから遥か南にある妖の森に来ていた。目的はこの森に住む魔女に会うためだ。亮太は魔法の知識がなく今後の戦いにおいてかなり不利になると考えていた。そのことを支部長に相談したところ気を持たず魔力のみを操る、魔法に関しては最強の種族がいるという話を聞き魔女に魔法について教えてもらうと考え今に至る。因みに今の亮太の習得したアビリティはこんな感じだ。

[全属性耐性特防、全状態異常無効、武道の極地、神の器A、先読みEX、魔力感知、生命感知]

変化している点は武道の極みが進化し極地になったことと感知系を覚えたのと新しいアビリティを習得したことだ。極地になったことで武道系の技の威力が二倍になった。先読みEXは名の通りなのだが亮太は相手のてが百まで見えアビリティ使用時相手の動きが止まって見えるくらいにまで相手を見ることが出来る。簡潔に言うとステータスにいくら差があろうと武術だけに関しては亮太は最強と言えるレベルまで成長したことになる。逆に言えば魔法などを組み合わせて戦われると亮太の勝率はどんどん低くなる。

亮太はゆっくり深呼吸すると森へ足を一歩踏み出す。魔女は排他的で他の種族がこの森へ入って戻ってきたものはいないという。亮太は常に魔力感知をしながら歩く。しかしこの森が魔力を持っているためか全く機能しない。仕方ないので視覚と聴覚をフルに使って慎重に進む。

一時間ほど歩き少し休憩しようとした時、ガサガサと音がし、亮太はすぐに警戒態勢に入る。すると木から雪のように真っ白いフクロウが落ちてきた。罠の可能性があるため周囲を警戒しながら近づく。フクロウは非常に弱っていて翼には傷ができていた。罠ではないと確認できると袋から包帯と飲み水を出すと手当てしてあげる。そしてフクロウの体力が回復するまで休息をとることにした。風が木の葉を静かに揺らし心地よい音が亮太のまぶたを重くしていく。亮太は敵の攻撃かと一瞬思ったが生命感知に何も引っかからないので単に眠くなったのだと判断し、ゆっくりまぶたを閉じる。風のせせらぎを感じながら長い長い昼寝に興じるだった。


次話は魔女と対面します。コミュ障の激しいミルハは一人で魔女を説得できるか楽しみに待っていただければ幸いです。

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