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Raw World  作者: 怠惰
3/16

3話〜盗賊団との戦い

こんにちは怠惰です。今回も戦闘シーンがぎっしり詰まってるので楽しんで見てください。

「はぁー…。マジでしんどい。休む暇もない」

あの初試合から一週間がたった。あの試合のあと亮太はシルバーランク第1位から正式にギルドに加入しソロで活動を始めたのだが、街を歩けばいろんな人に声をかけられシルバーランクの人には勝負を挑まれたりもした。当然全勝したのだがそれがかえって評判を呼び武闘家を名乗る男たちに勝負を挑まれてしまい、なぜかファイトマネーで出るしまつ。

そんな忙しない一週間を過ごした亮太はギルドで紅茶を飲みながら支部長とダラダラしていた。

「ハッハッハ、それは大変だったな。どうりで仕事が遅いわけだ」

「昨日なんか部屋に来たやつまでいるんだぞ!こんなの安心して寝れるか!」

「なら、護衛をつけようか?」

「ぜひ、そうさせてくれ」

「わかった、すぐに手配する。それはそうと気力について何かつかめたか?」

実はあれ以来亮太は気を使えていなかった。色々工夫し試してはいるだが効果は表れずにいる。亮太と1番相性のいい赤色でさえ出せていない現状である。

「癪だけど誰かに依頼して教えてもらうのが1番手っ取り早いかもな」

「それならちょうどミルハ君に用がある二人組がいるんだが呼んで来ていいか?」

「え、別にいいけど…」

「心配するなって二人はかなりの実力者だから」

支部長はそう言うなり部屋から出ていく。ついでに紅茶のおかわりを支部長にお願いする図々しい亮太。

数分経って支部長は二人組を連れ戻ってきた。一人は体は小さいが服越しでもわかる引き締まった肉体をしており腰には刀をさしている。もう一人は対照的で身長2mの巨体で鎧のような肉体をしている。

「二人はプラチナランク5位と4位の泉牛若君と泉弁慶君だ」

「は、はぁ…どうも…」

「そんなに緊張しなくてもいいですよ。最強のゲーマーさん」

この異世界に来てまで一度も自分が地球で最強のゲーマーだということばらしていないのに何故かこの男は知っている。亮太は一気に警戒を強めた。

「そんなに警戒しなくてもいいですよ。実はここから東にあるエレクには異世界ネットワークというものがあってね。そこで君の動画が毎日流れていたから知っているだけですよ」

「いまいち信用できないんだけど」

「それなら実際エレクに行ったらどうだミルハ君」

「それはそれでめんどいしなぁ〜。信じるよ…」

「ありがとうミルハさん。それでは改めて自己紹介から。プラチナランク4位泉牛若と」

「…プラチナランク5位泉弁慶」

「よ、よろしく。そ、それで二人は俺に用があるんだっけか」

「はい、実は僕がこれから作る組織に入ってくれないかと思いまして」

「は?組織?」

「そういえばミルハ君にはまだ説明してなかったな。ギルドではな組織を組んで活動できる。例えば海をメインに活動する組織とかな。」

「それにチームを組めばチーム全体に月に一回の報酬が出るし、宿代やわざわざ公のギルド場に行かなくて済んだりと色々便利ですよ」

悪くない話だと亮太は思った。組織で活動すればある一定のお金が入ってくるし自分が受注する任務も誰かに知られずに済む。また、組織内でパーティーを編成でき効率良く任務ができる利点があるからだ。利点の多い提案であるが亮太は首を横に振る。

「悪いが断る。俺は誰かのチームに入るきはない。創ることはあるかもしれんが」

「そうですか、それは残念です。実はもう一つお願いがあるのですが、次の依頼に協力してくれませんか?」

「依頼?」

「はい。この任務は支部長直々の依頼なんですけど僕らじゃ少し不安でね」

「な、泉君彼はまだシルバーランクでこの世界に来てまだ一週間だ。いくらプラチナランクを倒したといってもまだ早い。それに彼は」

「気をまだ使いこなせていない、ですよね。それなら問題ありませんよ私たちが教えますから」

「ミルハ君に気を教えるから任務に同行しろ…か。条件として釣り合ってないと思うが」

「どうですかミルハさん。あなたにとっていい話だと思うんですけど」

確かにこの話も悪くない。指導を受けてもらい尚且つ難易度の高い任務で経験値を稼げるのは強くなるためには一石二鳥だ。しかし、デメリットとしていきなり難易度の高い任務を受けて死ぬ可能性も高い。メリットとデメリットを比較した亮太の答えは、

「その依頼受けようじゃないか」

「本当ですか!ありがとうございます」

「ミルハ君わかっているのか?いきなり無理なレベルの任務を受ければ」

「死ぬ可能性が高いだろ。勿論わかってる。でもここでこの提案を受けなかったら一生気を使えない可能性だってある。この世界で気をうまく使えなければどのみち待っているのは死だ」

「それはそうだが……。君がそこまで言うなら良いがミルハ君にはまだまだ仕事があるから絶対に死ぬなよ」

亮太はああと頷くと支部長直々の任務の内容を聞いた。任務内容はある盗賊団の制圧なのだがこの盗賊団は今かなり危険な集団で宝を奪うために小国を一つ滅ぼすほどだという。

「二週間後盗賊団のアジトへ向かいます。その間ミルハさんに気を習得してもらいます」

「ああ」

「それでは訓練は明日の昼から行うので明日東の第三演習場に来てください」

そう言うと準備があるからと泉兄弟は部屋から出ていった。それから二週間、元引きこもりでスタミナ値1にはキツイ訓練が始まった。座禅一時間、泉弁慶と組手、目隠し状態で丸太よけなどをし余った時間は巨獣討伐とかなり濃厚な時間を過ごしたのだった。


亮太が最初フォーレンから現れた花畑ヒナイロからさらに南。凶暴な獣がわんさかいる森を亮太と泉兄弟は移動していた。目的地はこの森の中にある凶悪盗賊団ゼロのアジトだ。泉牛若の情報によると盗賊団は獣よけの結界を貼っているらしく、獣に見つかり騒がれると盗賊団に気づかれてしまうので慎重に移動していた。隠密行動して進むこと一時間、目的のアジトが見えた。

城壁のようにアジトを360度囲む巨大な壁、四方を見張る警備兵、中央にこれまた巨大な城がそこにあった。亮太は唖然とした。アジトというレベルでなく一つの小国ができあがっていたからだ。泉兄弟もとても驚いているがどこか冷静だ。

「ミルハさん。やることは変わりません。警備兵を無力化し城内に潜入。その後片方が雑魚兵の囮、もう片方が本丸を叩く。アクシデントが起きた場合は合流を優先させて三人で本丸を叩く」

牛若の指示で亮太は気持ちを切り換える。

「了解した。警備兵の無力化はどうするんだ?」

「私の魔法で敵から姿が見えないようにしてあとの処理は各々好きにどうぞ」

「魔法で姿を消すのは賛成だが警備兵の無力化と囮は俺がやる。うってつけの武器があるからな」

亮太はそう言うと背中からライフル銃を取り出す。フウライと戦闘で使用したものをこの世界の素材で改良した銃だ。威力は以前の十倍、反動はほぼゼロ、弾倉三十発、サイレンサー完備という性能だ。泉兄弟は亮太が銃を取り出すとすぐに理解し各々の準備を始める。牛若は魔法で自分と弁慶に風を纏わせ弁慶は魔力補給をし、亮太は銃の調整をする。

「準備はいいかい、二人とも」

「ああ」

「………おう」

「よし、それでは作戦開始!」

合図とともに泉兄弟が一斉にアジトへ走り亮太は銃を構えスコープを覗く。四方を監視する警備兵は十二体。狙いを定め引き金を引く。狙われた警備兵は何が起きたのかわからないまま頭を撃ち抜かれ絶命する。亮太はさらに二発引き金を引き、警備兵を二人絶命する。

「ミルハ…鮮やか」

「そうだね。撃たれたことにすら気づいていない感じだったね」

亮太は6発さらに撃ち込む。東と西を見張る警備兵は自分が攻撃を受けたと認識する前に絶命する。無音の暗殺劇に南の警備兵は気付いていない。そのうちに泉兄弟は場内に潜入しまっすぐ城へ向かう。風を纏い姿を消しているにで勿論敵に見つからない。亮太は南の警備兵を片付けるために狙撃ポイントを変える。そして狙い違わず警備兵三名の頭に銃弾を撃ち込み絶命させる。こうして警備兵を無力化した亮太は堂々とアジトの門を潜るのであった。


豪華なシャンデリア、沢山の金像、鮮やかな赤い絨毯、純金でできた玉座。ゲームでよく見る玉座の間で男が一人玉座に腰掛けて寝ている。どんな夢をみているかわからないがとても心地よさそうだ。そんな男を起こす一人の男がいた。

「ゼロ様睡眠中のところ申し訳ございません。報告したいことがあります」

「ん、おお、ゲルダか。話せ」

「はい、どうやら侵入者が入り込んだようです。二つの魔力反応がありました。それと警備兵の生命反応が途絶えました。殺害方法は不明ですがおそらく飛び道具の類いかと」

「侵入者の方は見つかったのか?」

「いえ。おそらく何らかの魔法で姿を消しているかと。どうされます?」

「すぐに警戒態勢を敷きお前を中心に二人を探せ。あと、アバレとキルシにも伝えとけ」

「了解致しました。外壁の警戒はどう致しますか?」

「外には戦力を送らない。もし何か入ってくれば部下どもで始末すればいい話だ。」

「了解致しました。それではこれで失礼致します」

報告が終わりゲルダがその場から消える。ゼロは一人薄ら笑いを浮かべた。凶悪盗賊団ゼロと泉兄弟&ミルハの戦いが始まる。


痛々しい打撃音と激しい怒号が響き渡るなか、亮太はぞろぞろと湧き出る盗賊団の下っ端と戦っていた。

「こいつらマジでなんなんだよ!Gか!?黒いG並にしつこいんだけど!」

愚痴を垂れ流しながら亮太は一人一人倒していく。倒していくなか亮太は一つの疑問を抱えていた。それは敵が正確に自分の位置を特定し集まってくるのが早すぎるということだ。訓練期間の間に魔力感知のアビリティを習得していたので門に魔力探知が備わっていないことを確認してから侵入したのでまずバレるはずがない。はずなのだが侵入して一分もかからずGのように湧いてきた。とはいっても囮としての役割としては充分果たせている。それに弁慶と組手した時と比べるとかなりヌルゲーだ。なので亮太は敵の殲滅に集中することにした。亮太は敵の山を一つ、二つと増やしていく。魔法をぶっ放つ敵も出現し戦いは激化していく。


一方、泉兄弟は敵一人遭遇することなく城内部に潜入していた。盗賊団が建てたとは思えないきらびやかな内装だ。二人は一部屋一部屋慎重に調べているが人一人いない。

「兄者、これは」

「うん、そうだね。誘われているね。幹部が一部屋に集中して待ち構えて、雑魚兵を城の外にいるミルハさんに集中させているとみていい」

「今頃ミルハは」

「彼なら心配いらないよ。それより私たちは私たちの仕事をするだけです」

牛若はそう言うとドアを開ける。その瞬間、カチッと音が鳴ると罠が作動し矢が雨のように二人に降りかかってきた。

「いきなり手荒い歓迎ですね」

落ち着いた様子で牛若は呟くと高速詠唱をし魔法を放つ。弁慶は朱色の気を薙刀に纏わせる。そして二人で一斉に技を放つ。

「ハリケーン」

「大薙嵐」

台風のように吹き荒れる風魔法に朱色の気が纏わり矢を弾いていく。朱色の竜巻はどんどん大きくなっていき部屋に仕込んである罠を根こそぎ薙ぎ倒していく。風魔法を解き周囲を警戒していると奥の扉から男が堂々と一人で出てきた。

「流石はプラチナランク兄弟。連携技も見事なものです」

「あなたは?」

「ゲルダ。この盗賊団の参謀をしています」

「参謀がわざわざ私たち兄弟に一人で来るとはね。幹部も当然いると思うけど彼らは来ないのかい?」

牛若はゲルダに質問を投げ掛けると不敵な笑みを浮かべた。

「ああ、彼らなら君の味方の方へ行きましたよ。彼らでは姿を消しているあんたらを見つけれないので」

「兄者、無駄話」

「わかっています。弁慶。ミルハさんが稼いでいる時間を無駄にはできません。全力で倒します!」

牛若が言うのを合図に弁慶がゲルダに突っ込んでいく。牛若はそれを援護するように風属性の魔弾を放つ。ゲルダは魔弾を無視して詠唱をすると魔法を唱えた。

「火炎柱」

至る所から火の柱が立ち並び波紋をとばす。魔弾を焼き尽くし、ゲルダを四方から守る柱はあらゆる攻撃に備えている。風属性は火属性に弱いので牛若とゲルダとは相性最悪だ。さらにゲルダは中距離型の戦闘スタイルで空間の狭い場所の戦いを得意としていて弁慶の強力な近接攻撃を寄せ付けない、まさに最悪の相手である。二人は縦横無尽に駆け隙を窺うが炎の波紋があらゆる方向、高さを変え二人に襲いかかり魔法を唱えることが出来ない。

「プラチナランク兄弟でもこれには手も足も出ないですか」

「兄者」

「わかっていますよ弁慶」

「スイッチ!」

「スイッチ!」

泉兄弟がスイッチと宣言すると二人の朱色の気がほのかに光ると二人は同時に技を放つ。

「泉流剣技微風の舞」

「水刃壁」

弁慶を中心に魔法陣が展開され足首ほどの高さまで水が吹き上がるとそこから水の刃が飛び炎の波紋を切り裂いていく。

「な、そいつ無詠唱で魔法を!?」

「二人同時にスイッチを宣言すると最初の魔法だけ無詠唱で発動出来るんですよ」

「な!?」

ゲルダの背後を完璧に捉えた牛若は軽い説明とともに斬り掛かる。慌てて攻撃するも牛若は風のようにさらに躱すと鋭く斬りこんだ。ゲルダは致命傷を避け火炎柱に飛び込む。火炎柱は柱から柱へ移動することもでき火炎柱を攻略し本体に近づいたとしてもすぐに回避可能なのだ。ゲルダは牛若から一番遠い場所にある柱から出る。首筋や右腹部、頬から血を流していることから全て躱しきれていないようだ。

「惜しかったな。魔法で姿を消し背後から一気に剣舞でけりをつける参段だったんだろうがそれでは私を倒すことなど不可能だ」

「でしょうね。弁慶!」

「くらえ、滝壺!」

弁慶が水属性魔法を放つと天井に巨大な魔法陣が展開され、そこから膨大な量の水が滝のように流れ落ちてきた。ドアは完全に閉め切っているので3人はなす術なく水に呑まれ部屋いっぱいに水が満たされた。

(なんつーでたらめなことをしやがる。これじゃあ息ができない。それに魔法も水中じゃ意味をなさない。奴らは…)

ゲルダはあたりを見回すがどこにも泉兄弟の姿が見えない。二人は牛若の姿を消す魔法を使い身を隠していてゲルダが意識を失うまで待っている。因みに二人は弁慶の魔法で水中でも息ができるので完全に勝ち確定である。

(そうか…奴ら魔法で姿を消して…それに水属性魔法が使えてこの魔力量なら息ができるくらいの魔法…同時に…でき……)

ゲルダが完全に意識を失うのを確認すると弁慶は魔法を解く。部屋いっぱいに満たされていた水はまるではじめから無かったかのようにスゥーと消えていった。

「なかなかの手練れでしたが私たちの連携には負けますね」

「兄者…当たり前。それより」

「そうですね、先に進みましょう」

二人はゲルダに手枷をつけ魔封じの結界に閉じ込め、先に進み始めた。盗賊団の親玉ゼロの元へ。

玉座で睡眠中のゼロ。先ほどと違うのは戦闘準備を整えたぐらいでゼロから全く緊張感が伝わってこない。

「おやすみのところごめんなさい。あなたのところの幹部と参謀さん、やられちゃったみたいよ」

「そうか、なら俺も寝てらんねえな。歓迎する準備をしないとな」

「そうですね。あなたが持ってるあれがあればこれから来る彼らにも勝てるでしょう」

ゼロは薄笑いを浮かべ突然ゼロの目の前に現れた少女は笑顔を向けている。

「それでは私は一足早くミルハに会いに行くのでこれで」

少女はそう言うとゼロの前から消える。ゼロはまた深く腰掛けると目を瞑り仮眠をとる。


大きな門に負けないくらいの大きな人の山ができておりその横で大の字になって亮太が寝転んでいた。山を形成しているのは全てここの盗賊団の下っ端である。あれからどんどん湧いてくる下っ端を倒して倒して倒しまくっていた。数は数えていない、というより数える暇などなく様々な武術を駆使して敵を迎え撃つので精一杯だった。スタミナ値1な亮太なのだが疲れを感じる余裕もなかったおかげか最後まで倒しきり、途中幹部のなんとかって宣言してきた敵がいたのだがいつの間にか倒してしまっていた。本来なら、先を行く泉兄弟を追うべきなのだが立ち上がる気になれない、というより立ち上がる余力がない。空を見上げ休憩していると亮太の目の前に少女が突然現れる。少女は地球で依頼してきた少女と同じ格好をしている、というより依頼してきた少女本人だ。

「お久しぶりです。ゲーマーさん」

「な!?おまっ、何でこんなところに?」

「さて、何故でしょう?それよりここで休んでいいんですか。彼らはもうボス戦を始めてますよ」

「いや、今行っても足でまといになるだけだから」

「そうですか…ここのボスは凄いお宝を持ってるのに…残念です」

「お宝?」

「はい、この世界には宝具と呼ばれる素晴らしいものがありまして、それには特殊な能力が付与されていて装備者を飛躍的に強くすることができる神々の宝です」

「ほう…なぜそれを俺に言う?」

「あなたは収集趣味がおありと聞いたんですが、違うんですか」

「いや、そうだけどあんたの話からするにその宝具とやらって親玉が使う可能性100%じゃん。戦って奪えと?」

はい、と笑顔を向ける少女にイラッとくる亮太だったが宝具に興味が湧く。神々の宝ということは剣や槍、魔法と様々な種類があるはず。RPGの醍醐味の一つレア度の高いお宝集め。当然亮太も好きなので現実でお宝集めできるのは嬉しいのだがこの誘いにのるとこの少女の言いなりに従うようでうんとは言えない。といってもどのみち親玉を倒しに行かないといけない。

「はぁー、お宝は気になるけど任務優先だ。行くかぁ」

「そうですか、頑張って下さいね」

亮太が行くことを確認すると少女はその場から消えようとする。それを亮太は止めると質問をした。

「お前、なんで俺に情報を与えた。来たタイミングといい話のネタといい、俺を親玉のところへ行かせたいように受け取れるんだが。それにお前、親玉に会っただろ」

「あら、なぜそういいきれるのでしょう?」

「お前、最初に泉兄弟と親玉が戦うって言った。そう言えるということは二人の居場所を把握しつつ親玉の部屋の居場所も把握してるってことだ。さらに言えば泉兄弟の進行状況を言うのが普通だと思うがあえて戦うって表現をした。つまり、親玉にも似たようなことを言ったんじゃないのか」

「さあ、どうでしょう。私はあなたに情報を教えただけ。詮索するのはいいけど早く向かった方がいい。そこら辺の敵と比べるとかなり強いので」

答えようとせずはぐらかすと忠告を残して消えていった。亮太は舌打ちをすると走り出した。あの少女はかなり気になるがまずは任務を果たさないといけない。次会ったら絶対ぶん殴ってやると思う亮太だった。


豪華なシャンデリアは粉々に砕け金像は一つ残らず壊れただの石ころと化し、絨毯もぼろぼろだ。唯一玉座だけが無傷で盗賊団のボスのゼロが座っている。ゼロは足を組んで余裕な表情を傷だらけの二人に向ける。

「おいおい、その程度か。ゲルダを倒してきた奴らにしては全然大した事ないな」

何も言い返せず膝をついている泉兄弟。ゼロは泉兄弟の連携をことごとく躱し攻撃を与えた。それも技やアビリティを一切使用せずに。

「兄者、あれを」

「そうだね。あれで一気にいきましょう」

「スイッチ!」

「スイッチ!」

二人の体を朱色の気がほのかに光ると二人は一斉に技を放つ。

「泉流魔法剣技 線!」

「大瀧薙」

膨大な量の気を込めた薙刀を一気に振り下ろす。その一撃は切るというより割るの表現が正しい。ゼロが玉座からすぐさま退避した瞬間、玉座が轟音とともに視界から消える。そしてその衝撃で建物が崩れ始めた。

「おいおい、めちゃくちゃじゃねえか。俺の城が今の一撃で崩れ始めたぞ」

地面に空いた大穴を中心に内側から瓦礫が落ちていきそれに巻き込まれ二人は落ちていく。

「おいおい…絶対弁慶の仕業だこれ」

城へダッシュで向かっていた亮太にも凄まじい光景が見えていた。物凄い衝撃音が聞こえたと思うと地響きをたてて崩れ去る城。その時間約十秒。亮太は速度を上げる。これくらいではボスも弁慶も死なないとわかっているが少女の話を素直に捉えるとボスは宝具を保有しているとすると泉兄弟でも勝てない可能性がある。この任務をクリアするために自分もいち早く参戦するため亮太は全速力で駆ける。


そこに城なんかあったのかと思えるほどそこには瓦礫の山が出来ていた。シャンデリアや金像や盗賊団が今まで集めたであろう財宝が全てこの瓦礫の下。そう思うと勿体ないが戦場ではそうも甘いことは言っていられない。牛若は城があった場所から一番近い建物の陰に潜伏していた。狙いはただ一点、ボスの首。瓦礫を押し退けて出てきたのは盗賊団のボスゼロ。牛若は刀を抜くと同時に一線の刃と化しゼロの首を切る…はずだった。瓦礫から巨大な腕が出てきて牛若を鷲掴みする。本来掴むことができず貫通するはずなのだが傷一つ出来ていない。必死に振り解こうと体をよじるがびくともしない。

「泉流魔法剣技 線、その極意は魔法で自らを一筋の風の刃と化し相手の一点を突く必殺の型。しかし残念だったな、その技は前から知っていたのでね対策は完璧だ」

「ぐっ、君の腕なのかい?」

勝ち誇ったように小さく笑うと瓦礫から出てきた。その体は先ほどと打って変わって大木のように太い腕や足、岩のような頑強な肉体、そして5mを優に超える身長。玉座で偉そうに座っていたゼロとは思えない。

「アトラスの指輪っていうものでな。装備者に巨人族の王アトラスが保有していた魔力を使える優れものだ。まあ大抵は大き過ぎる魔力に死んでしまうけどな」

「へ、へぇー凄いですね」

(弁慶何をしているのです。この隙に奴に一撃を)

牛若の表情で考えていることをさとり、ゼロは高笑いをする。

「弟を探してるのか。残念だったなあいつは瓦礫の下敷き。あいつの力でも出てくることは出来ない」

牛若は驚きの表情を隠せない。その顔にさらに高笑いすると右腕の力を一層強める。

「まあ流石はプラチナランク兄弟だな。せっかく集めた部下やお宝を全て潰しやがるとはね。お礼に握り潰してあげるぜ」

牛若の骨がビキビキと悲鳴をあげ口からは呻き声が漏れる。空中に魔法陣を描き必死に風魔法の魔弾を放つが全く効いていない。

「諦めな。ここがお前の死に場所だ」

「いいえ、まだです。私達にはまだ仲間がいますからね」

「はっ、強がるな。お前の負けだ」

さらにゼロは力を強める。ボキボキと骨が折れ牛若は吐血する。確かに牛若は強がっているが決してそれだけではない。信じているのだ、黒コートで顔を隠し常に勝利を勝ち取ってきたゲーマーミルハを。そしてその願いは叶う。牛若は意識が薄れていくなか自分の顔の横に風を感じた途端、体がふわっと軽くなると地面に落ちる。何が起きたのかわからずゼロを見ると頭から煙と血を出し倒れている。この光景に牛若は一瞬で理解した、ミルハがやったのだと。

「クソが!なんだ今の攻撃!」

頭を撃たれたはずのゼロはゆっくり立ち上がり周囲を警戒する。その様子をスコープごしに確認すると引き金を引く。弾丸はゼロの頭に命中し倒れるがまるでダメージがないかのように立ち上がる。しかし、驚きもせず亮太は撃ち続ける。急所を撃たれても急速に回復、人間にはありえない芸当だ。これを可能にしているのは宝具ただ一択、少女の情報が正しければゼロは十中八九宝具の効果を使用している。宝具持ちの相手に真正面から行く訳にはいかない。故に遠距離から攻撃しているのだが弾薬がきれてしまった。

「あらら、俺のライフルじゃ削りきれないか。はぁ、行くしかねえか」

深い溜息とともに走り出す。弁慶の姿が見えず牛若は全身をバキバキに潰されているためかなり危ない状況だ。家をいくつも通り過ぎ進んでいく。進む事に大きくなる重圧。それほどゼロは強いとものがたっている。しかしそれで怖気づくなんてありえない、亮太にとっては攻略しがいのあるものでしかないのだ。自然と顔がにやける。単純にワクワクするからだ。あらゆるゲームを総なめにした亮太にとって久しぶりの高揚感だった。にやけ顔のまま盗賊団のボスゼロと対面する。亮太の表情は見えないが亮太が妨害した奴だと理解すると怒りをあらわにする。

「貴様か。俺の顔面に鉛玉を当てやがったのは。それにとどめをさすのも妨害しやがって」

「鉛玉じゃないんだけど…まあいい、あんたの右腕につけてるそれ宝具か」

「お前に答えてやる義務はねえ、お前から殺してやる」

「ミルハさん気をつけてください!かなり強いので!」

亮太は頷くと両手に黄色の気をガントレットの形に変形して纏わせるとお気に入りの構えをとる。その無駄のない構えにゼロの表情が引き締まる。今ミルハとゼロの戦いが幕を開ける。




どうでしたか。神谷亮太や泉兄弟の戦いは書いていてとても楽しく書けたのですが。次話はいよいよ決着が着きます。勝つのは神谷亮太かはたまた敵大将が勝つのか。ぜひ次話も見てください。

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