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Raw World  作者: 怠惰
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Miruhaの旅立ち

今回初めて投稿する趣味で書いている怠惰です。神谷亮太の異世界物語となっていますので楽しんで見ていただけると幸いです。

「遥か遠い昔、あらゆる世界で戦争が起きていました。それはそれは酷い争いで何百、何千億という命が失われていました。そんな世界たちに終止符をうったのは一人の青年でした。彼は一人であらゆる世界を統一していきました。彼の戦いを見た人達は神器を奮う姿から御剣の覇者と呼び、長きに渡り称え続けたそうな」

「ねえ母さん、僕もそのミツルギノハシャみたいになれるかな?」

「ええ、あなたならきっとなれるわ。私は信じていますよ」

ある部屋で御伽話を聞かせる女性とその話に目を輝かせて聞く少年の姿があった。

「ねえ、もっかい聞きたい!」

「また明日聞かせてあげるからもう寝なさい」

「約束だよ!」

少年は自分が御剣の覇者になった自分を想像しながら静かに眠りにつくのだった。



「……よし、やっと終わった〜。寝るぞー!」

時刻は6時。朝日が部屋いっぱいに射し込み小鳥のかわいいさえずりが聞こえるなか、ベットにダイブしたまま眠りつく少年がいた。

彼の名は神谷亮太。高校一年生だが学校には一回も行っていない。そんな彼はプロのゲーマーで数々の大会で優勝していてゲーム界で彼の名前を知らないものはいない。といっても彼の本名は誰1人知らない。ゲーム界での名前はMiruha(ミルハ)だ。さらに彼はプログラマーでもあり既にいくつかの企業と契約しているしYoukyube(ユーキューブ)に動画をあげているいわゆるyoukyuber(ユーキューバー)である。そんな彼は毎日仕事をしているが部屋から1歩も外に出ない引きこもりである。

今日もいつものように朝までいろんなことをしたあと午後になるまで睡眠をとろうとした。しかし、今日は違った。ドタドタと階段を上る音がしてまっすぐ亮太の部屋に来ると思いっきりドアを開けた。

「亮太!あんた一回も学校に行っていないでしょ!学校に行かなきゃダメでしょ!ほらさっさと起きなさい!」

彼の部屋で怒鳴りつけてきたのは幼なじみの雨宮リン。同じ高校に通っていて男女共に人気が高い。持ち前の明るさや面倒見の良さ、整った顔だちがその理由だ。男子からは毎日5人から告られるほど人気で他校からわざわざ告りに来る人も少なくない。普通の男子なら今の光景を物凄く喜ぶものだが亮太はリンの呼びかけにも動じず爆睡している。リンが揺すったり耳元で呼びかけても起きる気配がない。何をやっても起きない亮太に意地になったリンは亮太に座ると思いっきり肩を揺らした。するとやっと亮太が起きたがしばらくボーッとしたあとまた眠りにつこうとした。

「コラッまた寝ようとしない。さっさと起きる!」

「んん〜、誰だよ俺の睡眠を邪魔するやつふぁ〜。・・・リン!?おまっなんで俺の部屋にいんだよ!」

「あなたのお母様に許可をもらって入らせてもらったわ」

「あのババア〜。不法侵入者を勝手に家にいれるなんてどんな神経してるんだよ」

「ふふふ、母さんに向かってババアって言っていいのかしら亮ちゃん」

「げっ、聞いてたのかよ」

「もうバッチシ聞こえていましたよ。いつもは許してたけど今日は学校、行くわよね?」

「………は…はい、行きます…」

笑顔の母の後ろに鬼が見え亮太の顔が引き攣る。笑顔で脅しにくる母さんには勝てないなと亮太は溜息をつき学校に行く準備を始めるのだった。


外は青空が広がり雲一つなくまさにお散歩日和のなか、雲がかかりそうなほど憂鬱そうな溜息をつく亮太とそんな亮太を見て面白そうに見つめるリン。

「こんな天気良いのに溜息ばっかついてるね」

「うっせーな、こちとら一睡もしてねえんだぞ。それにこの日光。ニートってのはな、日光を浴びると蒸発すんだよ」

「なに、その屁理屈。それに、私来た時寝てたじゃん」

「30分は寝たうちにはいんねーよ」

亮太との会話をとても楽しそうにするリン。そんな姿を見て何が楽しいのやらと溜息をつく亮太。数分して学校に着いたが亮太に地獄が訪れる。

「「「おはようございます!リンさん!」」」

「ええ、おはよう」

十数人の男が校門でリンに挨拶をする。誰がどう見ても待ち伏せしていたのだがリンはそんなこと気にせず挨拶を返す。それまでならまだ良かった。彼らの目線がパーカーの上に制服を着てフードで顔を隠している亮太に移った時彼らの目がゴミを見る目に変わった。

「おい、貴様。どういう了見でリンさんの隣を歩いている。さっさと離れろ」

「いや、好きでこいつと一緒にいないから」

「な、貴様!リンさんをこいつ呼ばわりだと!?ぶっ殺すぞ!」

「いや、何でこいつと一緒にいると殺されなきゃならないんだよ。俺さ、一睡もしてなくて今とってもダルいからさ。そこをどいてくれるとありがたいんだけど」

彼らの脅しにツッコミを入れながらさっさと校舎に入ろうとする。十数人の男が亮太の素っ気ない態度に頭に怒りをあらわにしている。

「おい、お前、逃げるのか?」

明らかに挑発している言葉を亮太にぶつける。その言葉に溜息をつき呆れたような仕草を見せると亮太は言い放った。

「お前、馬鹿だな」

「な、なんだと!」

「だってそうだろ。俺は眠いからさっさと教室に行きたいと伝えたはずだが?それを聞かないで挑発してきてさ、自分勝手だしモブキャラが言いそうな挑発で俺が引っかかると勘違いしてさ、本当に馬鹿だな」

恥ずかしくてなのか怒りでなのか、或いは両方なのかわからないが男は顔を真っ赤にしている。反論しようとするが亮太の口撃は終わらない。

「それにさお前らがリンのことどう思ってるかどうでもいいけどこんな朝っぱらから迷惑かけてさ、自分の感情をただ相手にぶつけるだけじゃ相手は疎ましく感じるだけ。お前らがしていることは全部逆効果だと気づけないなんて馬鹿ばっかだな。はぁー…、もう一度言うからな。俺は眠いからさっさとどいてくれよな」

彼らは反撃の言葉が見つからず頭を真っ白にしたまま亮太が校舎に入るのをただ見ているだけだった。

「亮太、ありがとう。私のことを気にしてくれたんだよね」

「なわけあるか。お前といる時、毎回ああいう奴らに絡まれるのが嫌だから言ったまでだ」

「ふふふ、そういうことにしてあげる」

嬉しそうに笑顔を向けるリン。亮太にその気はないのだが傍から見れば完全にカップルだ。亮太はフードを深く被り直すと恥ずかしそうに顔を背けたまま黙って教室に入っていく。その仕草に静かに微笑むとリンも自分の教室に入っていった。


亮太は教室に入ると自分の席を探した。というのも一回も学校に行っていないので自分の席がどこかわからないのだ。亮太が自分の席を探している傍であちこちでひそひそ話が始まる。いきなり知らないやつが入ってきたのだから無理もない。この時間が数分続いたあと、生徒の一人が結局探せなくて教室の隅っこで小さくなっている亮太に声をかけた。

「あの…君の席はあそこだよ」

声をかけられビクッと肩を揺らしたあとゆっくり立ち上がる。一瞬目が合った。声をかけた生徒は亮太の目つきに「ヒッ!」と後ずさる。

「あ、あの…あ、ありが…とう。その…目つきもともと鋭い方だからあんま気にしないでね、その反応…軽く傷つくから」

「あ、ああ、わかりました」

亮太は礼を言うとまっすぐ自分の席に行き座った瞬間に机に突っ伏して寝始めた。クラスがまたざわつき始めるとチャイムが鳴ると同時に担任の先生が入ってきた。担任は亮太がいることに始めかなり驚いていたがいっこうに起きない亮太を無視して朝のHRをする。


「亮太!起きなさい!午前中ずっと寝てるでしょ!もう昼なんだからさっさと起きなさい!」

時刻はお昼休み。それぞれが昼食を食べるなかリンは必死に亮太を起こす。その光景にみんな呆れたような表情をしたりリンに起こしてもらっている亮太に殺気にも似た感情で睨む人もいる。亮太はあれから一回も起きていない。生徒の何人かが頑張って起こそうとしたのだが起きる気配が全くないので結局諦めてしまっていた。リンがしばらく肩を力一杯揺すっているとようやく目を覚ました。

「ふぁ〜〜、よく寝た〜…って俺なんで学校にいんの?」

「私が連れてきたの覚えてないの?ってそれよりあんた何寝てんの!授業真面目に受けなさい!」

「あーもう、ガミガミうるせえなー。お前は俺の母親か」

「あんたがそうやって学校にいてもダラダラしているのは幼馴染みとして見過ごせません!」

「学校で何してもおれの自由だろ。それに眠い時に寝るのが俺のポリシーなんでね。それはそうと腹減ったんだけど飯ない?」

「ほんとにあんたはああ言えばこう言う。まあいいや、はいこれ」

亮太の言い訳を聞いて怒る気が失せたリンは持っていた弁当を亮太に手渡した。

「なに?俺に弁当くれんの?いやーありがたい!流石はリンさん」

「ふふ、それ褒めてんの?少しバカにしてるでしょ」

「さあな。いただきます。ん!うまい!」

リンの指摘をさらりと受け流し亮太は弁当を頬張る。小学生みたいに夢中になって弁当を食べる亮太を面白そうに見つめるリン。

「それにしてもあんたがコミュ障だなんて新たな発見だわ」

リンの発言に亮太は喉を詰まらせ咳き込んでしまった。

「別にいいだろそんなこと!」

「いやあんたが誰かと話したこと見たことなかったけど、まさかあれほどとは思ってなくてねー」

「は!?お前見てたの?」

「友達情報よ。フードを被った場違いな初見顔が教室の角で縮こまってるってね」

「はー、ああいうところを見られたくないから学校行きたくなかったのに、誰かさんが無理やり連れてくるから」

「ふふ、誰かさんて誰のことですかねー。まあ、午後は寝ないで頑張ってね」

「できたらなー」

教室にいた生徒も二人の一部始終を見て少し笑みを浮かべている。

昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴りリンが自分の教室に戻る。亮太はもう一眠りするかと寝る姿勢をとった瞬間あるものを見つけた。

「なんだこれ?文字?」

机に謎の記号のような文字が書いてある。朝には無かったので疑問に思っていたが誰かの落書きだろうと無視して寝ることにした。それを見ていた一人の女性が静かに舌打ちしたのを亮太は知るよしもない。


時刻は4時。みんなそれぞれ部活や下校を始める時間だ。亮太はというと

「亮太!あれほど言ったのに午後も寝てたって聞いたよ!午後くらいしっかり起きてられないの?」

リンに寝ていたのがバレて叱られ中である。

「はいはい、わかったからもう帰ろうぜ」

「はいは一回!それに絶対わかってない。わかるまで絶対帰さないから」

リンがガミガミ説教し始め完全にお手上げ状態。リンの言葉を聞き流していると頭の中に声が流れてきた。

「神谷亮太君、今すぐ屋上に来てください」

頭の中に流れてきた声はこれだけ。気のせいかと思ったが、声の主ははっきり自分の名前を言った。亮太の名前を知っている人は少ない。なので、亮太は非常に気になった。それに嫌な予感がしていた。亮太はスッと立ち上がる。

「リン。悪いな。用事ができたみたいだ。先帰ってくれ」

「あんたがここでする用事なんてないでしょうが!そうやって見え透いた嘘をすぐつく」

「俺は冗談は言っても幼馴染みに嘘は一回もついたことがないけどな、リン。」

やけに真剣な表情で言ってきたのでリンは思わずたじろいでしまう。普段寝ている姿か寝ぼけた時の姿しか見ていなかったのでどうしようか迷ってしまう。しかし、答えはすぐ出た。

「わかったわ。朝助けてもらったし、いいわよ。けど、一つだけ。危険なことだけはしないで」

「ああ、了解した」

リンから了承をもらい亮太は屋上に向かった。その背を見てリンは嫌な予感がした。亮太がどこか遠くに行ってしまうのではという不安がリンを取り巻く。今すぐ止めたいが今さら止めに行けない。今止めに行ってもどのみち亮太が自分のもとから離れていく気がしたからだ。

「亮太はどこにも行かないよね…」

誰もいない教室にリンの不安気な声が静かに溶けていった。


一気に階段を駆け上がり屋上に来た亮太。辺りを見回すが誰もいない。

「はぁ、呼んどいていないとか失礼にもほどがあるだろ」

「後ろにいますよ」

声が後ろから聞こえすぐに振り返る。そこにはいなかったはずなのにいつの間にか1人の女子生徒がいた。

「どんなマジックだよ。さっきまでいなかったのに。それに俺の頭に直接話しかけられるなんてお前なにもんだ?」

「私のことはどうでもいいです。それよりやっとここに来てくれましたね御剣の覇者のお孫さん」

亮太は御剣の覇者という言葉にピクッと反応する。

「は?何言ってんの?御剣の覇者?何それ?」

「とぼけなくてもいいですよ。あなたは御剣の覇者の伝説を知っていますよね。幼いころあなたの母親から教えられたでしょう?」

亮太は苦虫をかみ潰したような表情になる。自分の昔のことはリンにも言っていないのに何故かこの女は知っている。そのことになぜか無性に腹が立つ。

「まあまあそう怒らないで下さい。私はただ御剣の子孫のあなたに依頼しに来ただけですから」

「依頼、だと?」

明らかに胡散臭い。それに素性のしれないやつの依頼をすんなり受けるほど亮太は甘くない。

「依頼あなたが受けてくれますか?」

「断る。あんたみたいな怪しいやつの依頼なんてまっぴらだ」

「そうですか…。かなり危険なので御剣の子孫のあなたに頼もうかと思ったのですが、しょうがないですね、あなたの幼なじみに頼みましょうかね」

「そんなことさせねぇ!」

「では、依頼あなたが受けてくれますか?」

少女は亮太が了承することを確信していた。亮太は他人はどうでもいいという考えだが唯一リンだけは例外だということを知っているからだ。亮太が出した答えは少女の考え通りイエスだった。少女が嬉しそうに笑顔なのに対して亮太の表情は物凄く悔しげだ。

「それでは依頼内容を説明します。あなたには異世界に行ってもらい禁忌者を倒してほしいのです」

「待て。異世界ってなんだ。それに禁忌者ってなんだ」

「一言でいえばこことは違う世界ですね。向こうからすればここが異世界だと思うのと同じです。地球という世界があり他の世界も存在する。」

「ふーん、じゃあ禁忌者ってのは?」

「文字通り禁忌を犯した者達のことですね。あなたに倒してほしい人は地獄からの脱獄、異世界強制支配の禁忌を犯してます」

なるほどなっと亮太は納得する。どうやって自分のことを知ったのかとか様々な疑問が残るが異世界に入って禁忌者ってやつをブッ殺せばいいだけの話。

「物分かりが良くて助かります。それでは明日の夜明け、ここで待っていますので遅れないでくださいね」

そう言い残し少女は消えた。


時刻は朝五時。日は昇っていないが周囲に光が徐々に差し込んでいる。契約している会社とチャンネル登録者、ゲームの大会の運営への休暇の連絡等の準備を済ませ、亮太は玄関のドアを開けた。雲一つない快晴で風がとても心地よい。亮太は学校に向かって歩き出したその瞬間「待って!」と呼び止められる。振り向かなくてもわかる。こんな社会のゴミみたいな自分をいつも気にかけてきた幼なじみ。

「早いな、こんな朝からどうしたリン?」

「それはこっちのセリフ。そんな格好でそれもいつもあんたが寝てる時間帯にどこに行くのかしら?」

亮太の格好は黒一色でサバイバルベスト、リストバンド、肘・膝サポーターなどを付け、黒いロングコートを羽織っている。ちなみに着ている服は全て防弾、耐衝撃、耐火性である。

「悪いがリンには関係ない」

「そんな中二病みたいな格好で言われてもね…。昨日の用事なんだったの?」

「中二病って地味に傷つくな…。関係ないって言ったんだが?」

「ちゃんと説明して!」

「なんでリンに説明しなきゃならないんだ?」

「不安なの!亮太がどこか遠くに行ってしまうかもしれない。そういう予感がするの」

リンの予感は的を射ている。確かに亮太は異世界という未知の場所に行ってしまうのだから。しかしリンは異世界というありえない次元にまで行くとは想像できないだろう。感とはいえここまでリンが無意識にわかっているとは思わなかった。それにここまで不安がるリンは初めてでたじろいでしまう。少し逡巡して亮太はリンに大事な所を隠して大体のことを説明することにした。

「はぁ〜…。いい感してるな…。リン。これは絶対秘密だぞ。俺はこれから仕事の依頼で遠いところにしばらく行かなきゃならないんだ。」

「遠い所ってどこ?」

「それは教えられない。とても危険な場所だからな」

「だからそんな格好しているのね」

「ああ、そうだ。俺はもう行かなきゃならない。リン、すぐ終わらせて戻ってくるからそんな不安な顔すんなよ」

顔も見ていないのに自分が不安がっているのを見透かされていることに対してリンは情けない気もちになった。亮太の一番の理解者である自信がある自分が危険な場所に行く幼なじみを不安で呼び止めてしまった。危険な場所に行くからこそ自分が堂々としていなくてはならない。リンは自分の頬を思いっきり叩くと

「わかったわ。信じているから!絶対帰ってきなさいね!」

「ふん、リンらしさが出てきたな。それじゃちょっくら行ってくるわ」

「ええ、いってらしゃい」

力強いリンの声に応えるように手をぷらぷらと振って歩き出す。リンはその姿が見えなくなるまでその場を動かない。無意識に両手をぎゅっと握りながら。


リンと別れて徒歩五分。この時間帯ではまだ開いているはずのない校門が開いている。誘われてるなと思いつつも校舎の中に入る。そして屋上につづく階段を上りドアを開ける。まだ日は出ていないが空はすっかり明るくあと数分で日が昇りそうだ。

「早いですね。まだ日は出ていませんよ」

「まあな」

貯水タンクに腰掛けた少女が亮太に声をかけた。亮太は適当に返事をして朝日が昇るまで寝ると言わんばかりに寝転んだ。

「あと数分で異世界に行ってもらうっていうのになんだが緊張感がないですね」

「逆になぜ緊張すんのか問い返したい」

「ふふ、それでこそ御剣の覇者の子孫ですね」

「御剣の覇者は関係ないだろ。それとお前に聞きたいことがある」

「なんでしょう?」

「俺のことをどうやって知った?」

「それは私は神ですからね。あなたのことはなんだって知ってますよ。神谷亮太15才、身長175cm、体重60kg、血液型O型、ミルハと名乗りいくつかの会社と契約、最強のゲーマーと呼ばれゲーム界で知らない人はいないほどの実力者。性格は普段は面倒くさがりでかなりのコミュニケーション障害者ですが争いごとになると普段と真逆の性格になる特異な人間」

「……アカシックレコードか」

「あら、ご存知なんですね。それに神が目の前にいるのに驚かないんですね」

「驚いたら何かくれんのか?」

「その返答は予想外です。まさか御剣の覇者の子孫が損得勘定で物事を考えてるとは。少しがっかりです」

「あっそ」

亮太は決めつけや固定概念が嫌いなので勝手に想像されて勝手にがっかりされるという一連を見せられイラッとしてしまう。なのでその後の質問に黙ったまま答えようとしなかった。

「どうやら怒らせてしまったようですね。すみません。」

「ふん、もういいよ。禁忌者の名前、聞いてなかったから教えてくれ」

「そうでしたね。禁忌者の名はホワイト。地獄に堕ちる前まで白銀の魔導師と恐れられていました。」

「そのホワイトってやつは何で地獄に堕ちたんだ?」

「それは本人に聞いてみてください。」

亮太は疑問に思った。なぜ地獄に堕ちたことを教えてくれないのか。任務に関係ないことだからと言われればそれまでだがそれでもホワイトという人物を知るには有益な情報だ。そもそも少女に対しても不可思議なことが多い。なぜ自分の名を名乗らないのか、御剣の覇者の子孫といっても争いのない世界でしかもニートの自分を選んだのか、そもそも素性がはっきりしないこと。全て挙げようとするとキリがない。亮太は思いきって問いただそうとしたとき、暖かい光が差し込む。亮太にとっては非常にタイミングが悪い。

「時間ですね」

少女がそう呟いた瞬間朝日とは違う眩い光が発生する。亮太は咄嗟に手で顔を隠す。光が発生したところを見ると巨大な扉があった。亮太はその扉を見た瞬間、不思議な感覚に襲われなぜか目が離せなくなった。

「さあ、御剣の覇者の子孫さん。この扉から禁忌者のいる世界フォーレンに行ってください」

少女は少し興奮気味に言っているが亮太はまるで聞こえていなかった。吸い寄せられるかのように扉へゆっくり歩を進め扉の中へ消えていった。



次話は異世界にたどり着いた神谷亮太はギルドの加入するのだがその先で小さな争いをしてしまうといった感じです。面白いと思った方はぜひ2話も見てください。

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