表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/40

小浜の人魚 採話

小浜こはまニテ人魚ノ打チ上ゲラルル事。

嵐去リシ浜ニ 人魚現ル。

尾鰭持チタル女ノ姿シテ 傷付キ倒レ伏シタリ。

男 此レヲ見 着物ヲ被セル。尾鰭 足トナリ 女ノ姿ニナリケリ。

男 此レニ酒ヲ与フ。

人魚喜ビテ 魚ヲ追ヒテ捕ラセ 恩トスル。


天明ノ頃、海荒レ、不漁続ク。小浜ノ人、人魚ノ祟リト祭ル。


昔、小浜に人魚がいた。

小浜の人が人魚を捕まえ、見せ物にした。

人魚は怒り、小浜では魚がとれないようにした。

だから小浜では、魚がとれない。


昔、人魚に恋をした男がいる。

人魚は男に不死の術を掛け、夫にした。

その為、小浜には男の人魚もいる。


戦後すぐのことです。

うちのお婆さんが、闇で酒を飲ませる店をやっていました。雨風の強い荒れた晩に、見掛けない二人連れが来たそうです。

身体が大きいのに妙に生っ白い男と、影の薄い女だったそうです。

そんな晩でも、雨足が強くなる前から飲みに来ていた人が何人かいたそうです。

男は黙って酒を飲んでいたそうですが、その内酔った他の客が、二人連れに絡み出しました。

男が怒って喧嘩になり、誰かに腹を刺されたそうです。

男は刺された刃物を抜いて相手を刺し返し、女と一緒に雨の中に出て行きました。

その後、その二人連れを見た人は二度といません。

二人がいなくなった後、お婆さんは店の中で真珠を一粒見つけたそうですが、お金のない時代のことで、売ってしまってありません。

後で二人連れの女は人魚だったに違いないと、見た人みんな言ったそうです。


タクシー仲間では有名な話です。

嵐の晩、真夜中に浜に向かう道をズブ濡れの男女が歩いていたら、声を掛けない方がいいと言います。

心中するのではなく、海に帰る人魚で、声を掛けると災難に遭うとも言います。

別の話では、人魚に優しくすると、恩返しをするとも言います。


いつもみんなで遊んでいる空きビルがある。

風と雨がスゴくて、いつもみたいに夜出掛けられなかった次の日ビルに行ったら、何か危なそうな人達がウロついてて近付けなかった。

後でビルに入ったら、お弁当の残りとかがそのままになっていて、海の匂いがしていた。

みんなに聞いても、昨日は行ってないと言うので、知らない奴が入ったに違いない。

この辺には、嵐の晩に人魚や呪いを掛けられた男が出ると、昔から言われてる。

人魚や男を恨んでいる連中がいて追っているから、そんな連中に近付いたらいけないと、お母さんに言われた。

ビルにはきっと、人魚が隠れていて、変な連中がそれを探していたんだと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ